◆第107回全国高校野球選手権栃木大会 ▽決勝 青藍泰斗4―3作新学院=延長10回=(27日・エイジェックスタジアム)

 最後のアウトを捕ると、泥だらけの群青色のユニホームが勢いよくマウンドに集まった。2点リードで迎えた延長10回裏。

青藍泰斗は1点を返され、なおも2死二、三塁と一打逆転サヨナラの危機。そんなピンチでエースの永井竣也(3年)は笑みを浮かべた。「気持ちで投げました。最後は楽しく投げられました」。気迫のこもった直球で最後の打者を一ゴロに打ち取り、前身の葛生高校時代以来35年ぶり2度目の優勝を決めた。

 まさに死闘だった。青藍泰斗が2回に1点を先制し試合の流れをつかんだかと思えば、4回に作新学院に逆転された。8回に同点に追いつくと、栃木大会決勝では史上初の延長タイブレークまでもつれ込んだ。球場に訪れた5000人を超える観衆が固唾(かたず)をのんで見守る中、青藍泰斗が栃木県54チームの頂点に輝いた。

 校名変更後、初の夏切符を手に入れた佐川秀真主将(3年)は「『作新に負けない』という絶対的な自信があったので、試合に勝ててうれしいです」と喜びの表情。佐川は1年秋からキャプテンに就任し、2年春には監督が変わるなど、激動の高校野球生活を過ごした。「つらいことばかりだった。

同級生は僕にずっとついてきてくれたので、結果でみんなに恩返しできて良かった」と、仲間に感謝した。「ここがゴールではない。甲子園でどう勝っていくかを練習してきたつもりなので、やってやりたい」と兜の緒を締めた。

 チームとしては35年の思いがついに結実した。1990年、葛生高校時代に甲子園初出場。以来6度も県大会の決勝に進出したが、届かなかった。「あと1勝」が遠かった。甲子園初出場当時から部長を務める山本秀幸さんは試合後に選手一人ひとりと固い握手を交わした。「まさか私が勤務している間にもう一度(甲子園に)行けるとは思わなかった」と喜びをかみしめた。

 前回の甲子園。3点リードで初勝利目前も、9回2死から逆転サヨナラ負け。「当時、スコアを付けていて、最後のアウトを記録できなかった。

それが一番やりたいことです」。勝利直前で取りこぼした聖地での1勝を取りに行く。(高澤 孝介)

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