◆第107回全国高校野球選手権群馬大会 ▽決勝 健大高崎4x-3前橋育英=延長11回タイブレーク=(27日・上毛新聞敷島)

 群馬では、健大高崎がタイブレークの延長11回に前橋育英にサヨナラ勝ち。今春センバツで甲子園最速タイの155キロをマークし、ドラフト1位候補に挙がるエース右腕・石垣元気投手(3年)は、同点の8回に3番手で登板。

4回で6三振を奪うパーフェクト投球で勝利を呼び寄せた。

 サヨナラ勝ちを決める痛烈なライナーが左中間で弾んだ瞬間、一塁走者の石垣元気は拳を突き上げながら大きくジャンプした。延長タイブレークの11回裏。無死一、二塁からの1番・石田雄星中堅手(2年)の一打が、死闘にピリオドを打った。「絶対にサヨナラ勝ちしてくれると思っていた」。本塁ベース付近にできた歓喜の輪に加わり、仲間と喜びを爆発させた。

 満を持して登場した絶対的エースのパーフェクトリリーフが、劇的勝利を呼び寄せた。準決勝までの登板は1イニングのみ。同点の8回にマウンドに上がると、たまっていたエネルギーを爆発させ、いきなり3者連続で空振り三振を奪った。

 試合がタイブレークに突入すると、投球はさらにすごみを増した。10回無死一、二塁から前橋育英は送りバントを試みたが、球威に負けて2者連続で三塁フライになった。「高めの真っすぐで、フライアウトやバント失敗を狙いました」。

11回は犠打で1死二、三塁の形を作られたが、次打者を空振り三振に斬り、最後は中飛でピンチを脱出した。4回を完全に抑え、「自分で言うのもなんですが、最高のピッチングができたと思います」。攻撃側が点を取りやすくするためのタイブレーク制も、石垣元の前では意味を失っていた。

 進化も示した。最速158キロの直球にカットボールが投球の軸だが、「カットだけでは抑えられない」と“第3の武器”に、これまでも投げていたフォークをさらに磨いてきた。この日奪った6三振の決め球は、いずれもフォーク。「夏の前にずっと練習してきた成果が出たと思う」と胸を張った。視察したオリックス・岡崎スカウトは「自信を持って腕を振っている。春からの一番の成長はフォーク。プロでも振ってしまいそうなボールもあった」と成長を認めた。

 今春センバツでは、準々決勝の花巻東戦で甲子園のスピードガンでの最速記録に並ぶ155キロをたたき出した。この日の最速も155キロ。

石垣元にとって、もはや当たり前の数字になっている。「甲子園は投げていて楽しい球場。夏は160キロを出したい。頑張ります!」。大きな夢を抱いて、夏の主役が聖地に帰ってきた。(浜木 俊介)

 〇…健大高崎の選手の帽子のつばの裏には「信守勝」の3文字が記されている。「仲間を信じて守り勝つ」―。準々決勝後のミーティングで、気持ちを一つにする言葉として皆で考えたものだ。厳しい守り合いとなった決勝。マウンドで石垣元気が帽子を取り、つばの裏側に目をやるシーンが何度かあった。「流れが悪かったので、この言葉を見て自分で流れを変えようと思いました」とエースは思いを明かした。

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