◆JERAセ・リーグ 阪神7―1DeNA(27日・甲子園)

 阪神・高橋はお立ち台で照れ笑いした。「今年初めて勝てて、良かったです」。

6回途中6安打1失点。昨年11月に受けた「左尺骨短縮術後に対する骨内異物(プレート)除去術」から復帰後初勝利だ。昨年9月13日・広島戦(甲子園)以来、317日ぶりの白星を余韻たっぷりに振り返った。

 当初は5月上旬に1軍復帰見込みだったが、思わぬ試練が待っていた。2月にブルペン投球を再開。だが、強度を上げればメスをいれた左前腕がパンパンに腫れた。幾多のリハビリを乗り越え「もう最後」と位置づけた5度目の手術。後は好転するだけだと思っていた。「なんで…」。考え込んだが、下だけは向かなかった。

 かつてはリハビリ中に球場から逃げ出したこともある。今回は違った。

「苦しいのは僕だけじゃない。1軍でも悩んでる人がいる」。経験を重ね、“逃げ方”を学んだ。「しんどいことを忘れるため。人生で一番やった」と筋トレに熱中。時につらい日々から目を背け、試練を乗り越えた。藤川監督は不屈の左腕に「力がある投手」とたたえた。

 チームは連勝で今季最多の貯金20。最短29日にマジック41が点灯する。「みんなに置いていかれないように」と高橋。“ガラスのエース”を返上し、V奪還に力を尽くす。(直川 響)

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