◆第107回全国高校野球選手権神奈川大会 ▽決勝 横浜11-3東海大相模(27日・横浜)

 神奈川では、センバツ覇者の横浜が東海大相模に逆転勝ち。2年続けて決勝で敗れた無念を晴らした。

 マウンド上に、歓喜の輪が広がった。横浜・奥村頼は守備位置のレフトから仲間の元へ走り、思い切り体をぶつけた。3年ぶり21度目の夏切符。2戦3発のヒーローは超満員のハマスタで、喜びをかみ締めた。

 「チームの流れが悪い時に打たなきゃならない打順。責任を果たせてうれしい。流れを変えるしかないと思った」。エースで4番の重責を背負い、勝ちきった。

 名門対決は逆境から始まった。3回には先発した最速152キロを誇る織田翔希(2年)が中村龍之介(3年)に3ランを被弾。準々決勝から3戦連続で先制を許した。だが、村田浩明監督(39)はナインを鼓舞した。

「試合は『長い旅』だ。チャンスは絶対に来る」。その直後、奥村頼の打席だ。4回1死二塁。フルカウントからファウルで粘り、7球目。直球を弾丸ライナーで右翼席へ突き刺した。準決勝・立花学園戦での連発に続く、2試合連続アーチとなる2ラン。「粘っていって、苦しくなったら直球とデータが出ていた。データ班に感謝です」と奥村頼。奮闘してくれた裏方への敬意を欠かさなかった。

 この一撃が打線に火をつけ、11安打11点での大勝劇。準々決勝からの3試合を全て逆転で制し、指揮官は言った。

「きょうもウイング席までお客さんが入っていた。神奈川決勝はお祭りみたいなもの。競馬でいうムチじゃないですけど、『行く時は行け!』と選手に伝えたら、一気に突き放した」。決勝では23年夏に慶応、昨夏は東海大相模に逆転負け。奥村頼は「メンバーに外れてしまった3年生も気持ちを切らさず、応援してくれている。『全員野球』のチーム力で勝てた」と“三度目の正直”に胸を張った。

 練習熱心な兄貴分。そんな奥村頼を織田は心酔している。センバツ優勝後には奥村頼の発案で、春の頂点をつかんだ互いのユニホームを交換した。「心に火がつきました」と織田。そんな後輩の危機も救った。

 いざ夏の聖地。

同校では松坂大輔を擁した98年以来の春夏連覇に挑む。「激戦区・神奈川に育ててもらい、今の自分たちがある。代表の自覚を持って挑みたい」と奥村頼。深紅の大旗は必ず、晩夏の横浜へ持ち帰る。(加藤 弘士)

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