◆JERA セ・リーグ 広島5―6巨人(27日・マツダスタジアム)

 熱き覚悟を胸に宿し、岸田が白球を打ち砕いた。4点リードの5回先頭。

カウント1―1から遠藤が投じた外角高め直球に反応した。短くバットを握り、上からかぶせるようにスイングして左中間席へ。「久しぶりにホームランが打てて良かったです」。6月8日の楽天戦(東京D)以来となる今季3号ソロで貴重な追加点をもたらした。

 指揮官からのゲキに応えるアーチだった。4回2死の守備で飛球を落とす失策。失点にはつながらなかったが流れを相手に与えかねないミスだった。ベンチに戻ると阿部監督から言葉をかけられた。「打って返してこい」。気持ちを奮い立たせて打席に向かい、指揮官のゲキの通りにバットですぐに取り返してみせた。「みんなも、監督も笑っていた」と岸田は安どの表情だ。3回1死一、二塁では右中間を破る2点適時二塁打を放っており、2安打3打点と躍動。

指揮官が「(打)率もいいし、現状だったら適任だと思って」と説明した5番起用に応える活躍ぶりになった。

 “ドクターイエロー効果”があったのかもしれない。3回の適時打の直前。外野スタンドの後方にある線路を黄色の車両が走っていた。点検車両であるドクターイエローだった。「電車のお医者さん」として親しまれ、目撃機会の少なさから「見ると幸せになる」という都市伝説が生まれている。そんな縁起物からパワーをもらったかのように暴れ、敵地・マツダは“岸田劇場”と化した。

 後輩たちの奮闘からも力をもらっている。母校である報徳学園の様子を常に気にかけており、「決勝にいってますね」と今夏の大会もしっかりチェック済み。「高校の時からあきらめない気持ちを大事にしています」と、高校時代にひたむきに白球を追いかけたからこそ今の自分がある。後輩に刺激を受けている男が28日に行われる兵庫大会決勝戦の前日にプレーで最高のエールを送った。

 屈指の選手層を誇る捕手陣で存在感を発揮。

9回の守備で打球が左足を直撃したが「全然大丈夫です」と不屈の闘志を示した。「勝つために自分にできることをやっていきたい」と決意をにじませる男がチームを上昇気流に乗せていく。(宮内 孝太)

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