米国野球殿堂は27日(日本時間28日)、ニューヨーク州クーパーズタウンで2025年度の表彰式典を行い、マリナーズなどで活躍し、アジア人初の殿堂入りを果たしたマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(51)が出席した。紺のスーツに白いシャツ、水色のネクタイ姿で壇上に上がると、詰めかけた約3万人のファンから「イチローコール」がわき起こった。
人口2000人に満たないクーパーズタウン。町内に信号機1機という小さな町が、球界関係者や報道陣、全米から訪れたファンなど約3万人の訪問者で膨れ上がった。表彰式典は無料イベント。ひいきのチームのユニホームを着たファンは開場前から列をつくった。天候回復を待ち、1時間遅れでセレモニーが始まると、3人の殿堂入りを祝うかのように雨が上がり、聖地に陽が差し込んだ。
「新人となるのはこれで3度目」と切り出したイチロー氏。ドラフト入団から、マリナーズ移籍、そして今回、殿堂入りを果たした旅路を振り返り、大きな転機となった大リーグ挑戦の背景に、先駆者、野茂英雄氏の存在があったことを明かした。
「(1軍定着)1年目で首位打者となり、日本でプレーした間、毎年タイトルを獲得した。端から見れば、順調で、不安などないように見えたかもしれません。でも、私の中で葛藤が始まりました。その答えを探し続けても、分からなかった。
元選手の殿堂入りは278人。大リーグのプレー経験者の1%の狭き門だ。存在さえ知らなかった殿堂入りを、アジア人として初めて果たし、「45歳までの現役を全うするためには、唯一、献身が必要でした。選手にはファンのためにパフォーマンスを見せる責任がある。10点差で勝っていても負けていても、その義務は開幕日から公式戦162試合目まで私のモチベーションでした」と、精力を尽くした現役生活を振り返った。
球団関係者各位、代理人や通訳らの名前を挙げた後、最後に感謝したのは、妻・弓子さん。
引き込まれるように静まり返っていた会場に、再び「イチローコール」がわき起こり、人々はスタンディングオベーションでたたえた。英語でも、イチロー節は健在だった。