米大リーグでは毎年、トレード期限(今季は7月31日東部時間午後6時・日本時間8月1日午前7時)を直前に、ポストシーズン進出を狙うチームがペナントレースから脱落したチームから補強するトレード、俗に言う”フラッグディール”が展開される。
昨年の菊池雄星投手が記憶に新しい。
過去、移籍後に2ケタ勝利を挙げた投手の一人が、1998年のランディ・ジョンソン。マリナーズでは9勝10敗、防御率4・33だったが、アストロズに移籍すると11試合に登板し4完封含む10勝1敗、防御率1・28と大車輪の内容で、2年連続の地区優勝に導いた。
2008年のCC・サバシアは7月7日にインディアンス(現ガーディアンズ)からブルワーズに移籍。古巣では6勝8敗、防御率3・83、新天地では17試合登板し3完封含む7完投で11勝2敗、1・65でチーム26年ぶりのポストシーズン進出の原動力となった。
ただし、両投手ともポストシーズンで敗れて姿を消した。その点、2017年のジャスティン・バーランダーは8月31日にタイガースからアストロズに移籍(この時期はウエーバーにかけてのトレード)。わずか5試合の登板ながら5戦全勝。ポストシーズンでは計6試合に投げ4勝1敗。チーム初のワールドチャンピオンの一員となった。
シーズン中移籍組でワールドシリーズでMVPに輝いたのは、1969年にエクスポズ(現ナショナルズ)からメッツ入りしたドン・クレデノン、2018年にブルージェイズからレッドソックスに移籍したスティーブ・ピアース。そして、2021年のロイヤルズからブレーブス入りしたホルヘ・ソレアの3人。
現エンゼルスのソレアは当時、ロイヤルズで打率1割9分2厘の13本塁打と低迷していたが、新天地のブレーブスでは2割6分9厘、14本塁打と調子が上向きとなった。ポストシーズンの優勝決定シリーズまでは今ひとつだったが、アストロズとのワールドシリーズでは第1戦先制ソロ、第4戦勝ち越しソロ、第6戦先制3ランを放って4勝2敗でブレーブスの制覇に貢献したことが評価されMVPを受賞した。
残り1週間を切ったトレード戦線。移籍組でどんなヒーローが生まれるのか楽しみだ。
※参考資料 ベースボールリファレンス
蛭間 豊章 (ベースボール・アナリスト)