◆第107回全国高校野球選手権東東京大会 ▽決勝 関東第一7―1岩倉(28日・神宮)

 新たに8校が代表に決まった。東東京では、昨夏の甲子園準V校・関東第一が2年連続10度目の頂点。

背番号8の左腕・坂本慎太郎(3年)が1失点完投&本塁打と躍動した。29日は決勝3試合が行われ、49代表校が出そろう。

 二刀流のヒーロー・坂本が男泣きした。優勝を決め、ベンチ前で米沢貴光監督(49)に抱きしめられると感情を抑えることができなくなった。「監督さんに頼られていたと思う。期待に応えることができて、うれしかった」。達成感と安どの涙が、頬を伝った。

 「今日は自分の日」―。マウンドでも左打席でも、確信を持って強気にプレーした。5回で球数が80球に達すると、坂本は米沢監督に直訴した。「100球を超えても、代えないでください」。ピンチは多々あったが「絶対に投げ切る」とマウンドに立ち続けた。

90キロから120キロまで多彩なカーブを駆使して7安打1失点で完投。打っても1点リードの4回に右翼席へ貴重なソロを放った。身長170センチの「背番号8」が投打で主役になった。

 天国の両親に力をもらった。小学4年で母を亡くし、父も昨年12月に他界した。ショックを受けたが「お父さんは野球をやっている姿をずっとみたいと言っていたので、へこたれずに野球をやるだけと思ってやってきた。ピンチの場面では、両親のことを思い出して『絶対に抑える』という気持ちになった」。スタンドには坂本を支える姉・良子さん(43)、兄・龍馬さん(34)が声援を送っていた。「お父さんはお母さんと一緒に天国で見てくれていると思っている。お兄ちゃん、お姉ちゃんにも支えられている」。投げて打って、これ以上ない1勝を家族に届けた。

 昨夏の甲子園決勝の延長10回裏2死。

坂本は三振に倒れ、最後の打者になった。相手投手だった京都国際・西村一毅とは、今春のU18日本代表合宿で意気投合。この大会は交換したグラブを使用していた。「甲子園の決勝で、もう一度戦いたい」。全ての思いを力に変え、坂本は再び日本一を目指す。(浜木 俊介)

 ◆坂本 慎太郎(さかもと・しんたろう)2007年5月1日、千葉県生まれ。18歳。松戸柏リトルリーグでプレーした小学生時代からカーブを得意とする。中学では取手リトルシニアに所属し、22年のU15W杯日本代表に選出された。最速139キロ、高校通算4本塁打。170センチ、65キロ。左投左打。

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