◆第107回全国高校野球選手権奈良大会 ▽決勝 天理3―2智弁学園(28日・さとやくスタジアム)
奈良は天理が智弁学園に競り勝ち、3年ぶり30度目の甲子園出場を決めた。右アンダースロー・松村晃大(3年)―左サイドスロー・橋本桜佑―右オーバースロー・長尾亮大(ともに2年)の“千手観音継投”で逃げ切った。
奈良の覇権を奪回した。3―2とリードは1点。9回2死満塁だった。一打を許せば、甲子園を逃す危機で、天理の長尾は最後の打者を左飛に仕留めた。「3年生をもう一度、甲子園に連れていける」。2年生右腕を中心に歓喜の輪ができた後、ナインは敗者のように泣きじゃくった。
智弁学園との黄金カードが2016年以来、9年ぶりに決勝で実現した。前日27日は、昨夏の準々決勝で宿敵に敗れた映像を見た。3連覇を阻むべく、気持ちを高ぶらせた。先発は背番号1の松村。0―1の2回1死二、三塁、9番打者ながら逆転3ランを放つと、4回0/3を1失点にまとめた。
5回無死一塁では、左打者が3人続くため、4月末にオーバースローからサイドに変えた橋本がマウンドへ。今春の県大会決勝で奈良大付を無安打無得点に封じた背番号18の左腕は、2回1/3を1失点でしのいだ。7回は1点を返され、なおも1死満塁。右打者が3人並ぶタイミングで、右オーバースローの長尾が登板した。指揮官から「制球がいい」と託された背番号11は、2回2/3を無失点で最後を締めた。
センバツでは、野手が本職の下坊大陸(しもぼう・りく)と伊藤達也(ともに3年)が登板したが、山梨学院に1回戦で敗れた。藤原監督は「野手から投手に代えれば(控え)捕手は、何がいい球なのか分からない。投手はブルペンから」と学んだ。「夏は打力が上がるので目先を変える」と甲子園で未登板だったバラエティーに富む3投手を育てた。
あと1勝で、史上6校目の甲子園通算80勝と同4校目の夏50勝だ。「センバツは野手で野球をしていた。投手陣は何もできなかった。投手が投げてこそ野球」と橋本。頼もしい“新戦力”で春の忘れ物を取りにいく。(伊井 亮一)