◆第107回全国高校野球選手権静岡大会▽決勝 聖隷クリストファー3―1静岡(28日、草薙球場)
静岡大会決勝が行われ、2年連続で決勝に進んだ聖隷クリストファーが静岡を3―1で破り、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。先発したエース左腕・高部陸(2年)が4安打1失点完投。
最後の打者を二ゴロに仕留めると、高部は両手を突き上げて、左拳を握った。9回を投げ抜き、散発4安打1失点。「なんか、勝ったという実感が湧かなくて。やっと終わったなって」。全身の力が抜け、よろめいたところを武智遥士捕手(3年)に支えられた。最速147キロ左腕が自慢の直球を武器に、8奪三振。聖隷を悲願の初優勝に導いた。
7回以降から「全部直球で真っ向勝負しよう」と覚悟を決めた。
チームは21年秋、東海大会で準優勝したが、翌年センバツでは東海地区2枠の選外になる悲劇を経験した。その年、中学2年になった高部は地元埼玉の武蔵嵐山ボーイズで全国優勝。実力を備えた逸材として、全国強豪25校から声がかかっていたが、進学先に選んだのは甲子園に出たことがない聖隷だった。父の佳さん(49)によると「初めて甲子園に出たら、(勝った要因として)自分が注目を集める」と本人は、前向きにとらえていたという。
1年生だった昨夏は決勝で救援登板しながら掛川西に敗れた。3年生エースの袴田行紀投手から「お前が引っ張れよ」と託された。1年後に先発完投で見事にリベンジ。「入学してからずっと夢見てきた甲子園。その夢がようやくかなって、本当に、言葉にできないくらいうれしいです」。
静岡・池田新之介監督(48)が試合後に高部の直球を「異質」と表現するほど、キレのある直球が高部の持ち味。そのストレートだけでなく、入学後は投球術も磨いた。「直球で押すだけでしたが、上村先生の頭を使う野球で、けん制による間の取り方などを考えるようになりました」。浜松商、掛川西、聖隷と全て異なる学校で、3元号(昭和・平成・令和)で甲子園出場を決めた指揮官の指導を力に変えた。「自分の気持ちを全開に、思い切ったプレーをしたい」。2年生エースが夢の聖地へ乗り込む。(伊藤 明日香)
〇…左腕骨折で直前に登録メンバーを外れ、応援席にいた逢沢開生主将(3年)は、勝利の瞬間に涙を浮かべた。「ずっと見られなかった光景を見ることができて良かった」。メガホンを携え声援を送り、仲間と肩を組み、ゆずの「栄光の架橋」を熱唱した。「選手として出たい気持ちがありますが、リハビリを頑張りたい」。どんな役割でもチームのために徹することを誓った。
☆聖隷クリストファー・谷口理一三塁手(初回2死一、二塁から左中間を破る先制2点適時三塁打を放ち)「内角の真っすぐ。甘い球を一発で仕留められた」
◆聖隷クリストファー(浜松市)1966年創立の私立校。生徒数は933人(女子511人)。野球部は1985年創部。部員は73人。主なOBは元中日、阪神の鈴木翔太、元バレーボール選手の大道大輔がいる。