◆JERA セ・リーグ 中日8―5巨人(29日・バンテリンドーム)

 巨人のT・キャベッジ外野手(28)が来日初の1試合2本塁打、同最多の5打点と爆発した。初回に先制の9号3ランを放つと、3点を追う6回にも10号2ラン。

先発の西舘勇陽投手(23)が中日打線につかまり、5回6失点でKOされるなど投打がかみ合わず逆転負けを喫したが、打線は4番に座る助っ人を軸に4試合連続5得点以上と、課題の得点力に改善の兆しが見えてきた。首位・阪神が勝って、ゲーム差は今季最大タイの11となったが、まだまだあきらめない。

 目の覚めるような弾丸ライナーが右翼席へ伸びていった。キャベッジは分厚い胸板を右手で叩き、ゆっくりとホームベースを踏んだ。「自分のスイングができた。打てたことを神に感謝します」。0―0の初回1死一、二塁で3球目の外角変化球を捉えた打球は角度23度、速度170キロで右翼席最前列へ。出場8試合ぶりの一発は、岡本を抜いてチーム単独トップに立つ先制9号3ラン。3戦連続で4番に座った助っ人が先制パンチを見舞った。

 勢いは止まらない。3点を追う6回1死一塁では内角高め140キロを右翼ポール際へ運ぶ球団通算1万1111号。外野フェンスが4・8メートルと高く、本塁打が出にくいバンテリンDで来日初の1試合2発を放ち、23年のブリンソン以来、来日1年目で2ケタ10号に到達した。

27打数12安打で打率4割4分4厘と相性抜群の名古屋で、節目を刻んだ。

 プロデビューしたツインズ傘下時代からスポーツ科学に基づいたトレーニングに目覚め「数字には『オタク』といえるくらいこだわりがある」という生真面目な助っ人。米国時代は、23年ナ・リーグ本塁打&打点2冠の強打者マット・オルソン(ブレーブス)やNBAレイカーズのドンチッチらをサポートする最先端ジム「P3」に通うのが日課だった。トレーニング、打球速度など数キロ単位までつきつめてきた。

 12日に登録抹消となる直前の5戦は16打数1安打。几帳面さが故に悩みは深く、スタッフらとの話し合いが1時間以上に及ぶこともあった。「考えすぎてパニックに近い状態になってしまっていた」。ペナント中盤にさしかかって配球の変化に苦しんでいたが、約10日間のファーム調整で「若い選手にパワーをもらった」と吹っ切れた。原点回帰のフルスイングで、完全復活ののろしを上げた。

 一方、左翼守備では5回先頭の石伊が放った左中間への打球をグラブに当てながらも捕球できず。後方のフェンスを気にして十分な捕球体勢がとれなかったことを明かし「思ったよりも後ろにスペースがあったので捕らないといけなかった」と反省を忘れなかった。

 チームは逆転負けを許したものの4試合連続5得点以上は23年7月以来の2年ぶりで、阿部監督の就任後は初。

前半戦終了間際は湿っていた打線を再昇格後、全3戦連続安打と好調なキャベッジが活性化していることは間違いない。「打線の調子はいい。これからも続けたい」。大砲の復調は虎を追う阿部巨人の光明となった。(内田 拓希)

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