◆JERA セ・リーグ 中日0―2巨人(30日・バンテリンドーム)

 打球に執念が乗り移った。0―0の6回2死一、二塁。

岸田は初球の外角低めに沈む125キロスライダーを強振した。鋭いゴロは遊撃・村松のグラブをはじいて左前へ転がった。「何とか戸郷を援護したかった」。値千金の決勝打で、エースに3勝目をプレゼントした。

 女房役として快投をアシストした。戸郷とバッテリーを組むのは6月8日の楽天戦(東京D)以来、52日ぶり。初回に2死一、三塁のピンチを迎えると「久しぶりの登板で色々な思いを背負って投げていると思う。何もせずに打たれたら悔いが残る」とタイムをとってマウンドで声をかけた。ボスラーを高め直球で二飛に打ち取ると、3~6回は先頭の出塁を許さなかった。「ベンチでも思い切って行こうと話して。そこからは有利なカウントで進めることができてよかった」と共同作業で修正した。

 キャリアハイの88試合に出場した昨季は打率2割4分2厘。

昨オフのG球場での自主トレ期間には「同じことをやってもだめなので。今年の成績を全て上回りたいですし、チャンスにも強いバッターにもなりたい」と、インパクト時の手首の使い方を変えた新打法にも挑戦した。変化を恐れない貪欲な姿勢が、成長を支えている。

 これで得点圏では37打数12安打で打率3割2分4厘。チームとしてチャンスでの打撃が課題だったなかで、勝負強さが際立っている。3戦連続の5番起用に応え「なんとか前に飛ばして事を起こそうとやってるのでたまたま。引き続きやっていきたい」という背番号27の背中が、日に日にたくましさを増している。

 【高橋由伸Point】 捕手としての“頭脳”が生きたタイムリーだった。6回2死一、二塁。岸田は初球、スライダーを張っていたかのように打ち返した。まず、前打者のキャベッジに対して、相手の柳が曲がり球を多投していたこと。そして、自身の前の打席も含めた結論だったと思う。

 4回2死では追い込まれてから内角への同じスライダーで見逃し三振。やや腰を引いたような見送り方だった。「次はカウントを取りに来る」と逆手に取った岸田の読み勝ちだ。持ち前の思い切りの良さも相まって、5番打者としての役割も果たした。(スポーツ報知評論家・高橋 由伸)

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