オリオールズの菅野智之投手(35)に大きな“援軍”が届いた。7月28日のブルージェイズ戦で、左脇腹痛で負傷者リスト入りしていたアドリー・ラッチマン捕手(27)が約1か月ぶりに復帰。
入団直後からオンラインで連絡を取り合い、キャンプでは一緒にゴルフをラウンドするなど、意思の疎通を図ってきた2人は、実は似た“家庭環境”で育っている。
菅野の祖父は、前巨人監督の原辰徳氏の父である貢氏(享年78)。1965年に福岡・三池工を率いて夏の甲子園で初出場初優勝を果たし、息子・辰徳氏とともに神奈川・東海大相模や東海大で父子鷹としても名をはせたアマチュア球界の名将だ。一方、ラッチマンの祖父、アル氏は野球とフットボールの著名な指導者で、全米大学フットボールの殿堂入りを果たしている。スポーツ・エリートの家系に育った菅野は、初対面から共通のニオイを感じたのかもしれない。春季キャンプでは、ラッチマンについて「日本にはあまりいないタイプのリーダー。ミーティングでもどんどん発言するし、すごく勉強になります」と刺激を受けていた。
ラッチマンに「祖父から学んだリーダーシップとは何か」と尋ねると、「祖父は、人の成功を助けることがリーダーの役目と言っていた。個人、組織の最大の能力を引き出すことが、リーダーシップだと思う」と答えた。
祖父の原貢氏、伯父の辰徳氏という名将たちの背中を見て育った菅野は、リーダーシップをどう定義するのだろう。間髪を入れず、返ってきた答えは「自己犠牲」だった。
「どんな時も組織のために、自分を犠牲にできること。それはいつも(祖父、伯父の2人から)感じていたことです」
人の成功を助けることと、自己犠牲は、献身という同義とも解釈できる。リーダーの家系に脈々と受け継がれた精神は、浮上を目指すオリオールズの後半戦の大きな戦力でもある。(一村順子通信員)
◆アドリー・ラッチマン(Adley Rutschman)1998年2月6日、米オレゴン州生まれ。27歳。オレゴン州立大学から2019年ドラフト1巡目(全体1位)でオリオールズから指名を受け入団。契約金810万ドル(当時のレートで約8億7000万円)は史上最高額。22年5月21日のレイズ戦でメジャーデビューし、昨季まで3年連続110試合以上出場を続ける。23年にはシルバー・スラッガー賞、オールMLBのファーストチームにも選出されたメジャー屈指の捕手。188センチ、104キロ。右投両打。