◆第107回全国高校野球選手権大会第13日 ▽準々決勝 沖縄尚学2―1東洋大姫路(19日・甲子園)

 指笛と拍手に送られて、沖縄尚学の左腕・末吉良丞が一塁側ブルペンからマウンドへ向かった。1点リードの7回だ。

17日の3回戦・仙台育英戦で11回、169球で完投勝利。疲労を考慮しての救援待機だった。速球は140キロ台前半と抑えめながら、9回2死満塁のピンチも切り抜けた。「任された場面でやるべきことをしっかりやるというのを心掛けています」と日焼けした顔を引き締めた。

 4人きょうだいの長男。母・伊織さんが「とても優しい子なんです」というほどで、ケーキが3つあれば弟や妹に譲る優しい兄も、野球になれば表情が一変する。9回2死一、三塁の場面。3回に左越えソロを放っている桑原大礼を自らの判断で一塁に歩かせて満塁とし、次打者を遊ゴロに仕留めた。休養日の18日は約2時間、疲れた体をケアしながら相手校の試合のビデオを見て対策を練った。「最善の選択をしないと。勝負するところは勝負する。避けたいときはしっかり避ける」。

最速150キロ左腕は冷静さも持ち合わせる。

 春は2度の優勝を誇る同校だが夏は初の4強。準決勝の相手は同学年の投打の二刀流・菰田陽生を擁する山梨学院だ。「(菰田は)一番の重要人物としてバッテリー間で確認しながら、どうやって抑えていくか確認したいです」と警戒。「目標として日本一にまた一歩近づきましたけど、目の前の一戦一戦を大事にしていきたい」。その目はしっかりと頂点を見据えている。(秋本 正己)

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