◆JERA セ・リーグ 阪神3―2巨人(30日・甲子園

 これぞ4番の仕事だ。ゆっくりと二塁ベースに到達した岸田が、ヘルメットをたたくポカポカポーズで喜びを爆発させた。

「次につなぐ気持ちでした。いいところに飛んでくれました」。1点を追う5回2死一、二塁で初球の内角に食い込む142キロカットボールに、くるりと腰を回転させて反応。3安打目となる左翼線への適時二塁打で一時同点とした。

 まさかの出来事だった。得点圏打率3割5分8厘の勝負強さを買われ、第96代4番打者に抜てきされたが通達はこの日の午前中。ウォーミングアップ中には、ナインにからかわれて頬を赤らめた。「(4番起用に)びっくりはしましたけど、あまり意識せずに入れました」と頼もしく躍動した。0―1の2回先頭で中前打を放ち、4番デビュー打席で初安打。「4番・捕手」で先発出場して安打を放つのは球団では19年9月27日の阿部慎之助以来、2164日ぶりだ。

 その72代4番打者の教えが生きた。22日・DeNA戦(東京D)のフリー打撃前、阿部監督に呼び止められると、腰を投手と逆方向に回しながらスイングする「ツイスト打法」を直伝された。

指揮官が現役時代に取り入れていた練習法で、下半身の力が無駄なくバットに伝わる効果がある。「それまでバットが出ていなかったので。そこから練習のどこかでやるようにしています」と岸田。以降は6試合で20打数7安打、打率3割5分と好調だ。親心に結果で応えている。

 巨人で4番デビュー戦の猛打賞は12年の村田修一以来、9人目。プロ初4番先発で初打席から3打席連続安打は81年中畑清以来、2人目となった。計11四球を与えた投手陣について「ボール先行になると配球的にもしんどくなりますし、相手のリズムになる。もう一回、しっかりみんなで話して次につなげていきたい」と、扇の要としての役割を忘れずに反省した。今季は5月4日のDeNA戦(横浜)でようやく今季初先発。そこから「4番・捕手」にまで駆け上がった。大役を経験してまた一つ、頼もしさが増した。

(内田 拓希)

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