◆米大リーグ ドジャース6―9フィリーズ(16日、米カリフォルニア州ロサンゼルス=ドジャースタジアム)
ドジャース・大谷翔平投手(31)が16日(日本時間17日)、史上6人目となる2年連続50本塁打を達成した。本拠地・フィリーズ戦に「1番・投手兼DH」で先発出場。
夜空に伸びる白球を見上げ、左手でバットを放り投げた。確信歩きを6歩。この時ばかりは自分だけに許された時間を堪能した。2点を追う8回先頭。大谷は右腕ロバートソンの内角カットボールを捉えた。打球速度113・4マイル(約182・5キロ)で角度37度。天高く舞い上がり、飛距離430フィート(約131・1メートル)で右翼の敵軍ブルペンに飛び込んだ。3試合ぶりの50号ソロ。2年連続で「50」の大台に乗せた史上6人目の選手が誕生した。
「(50本塁打に)到達できるということは、それだけチームの勝つ確率が高くなるっていうことだと思うので(良かった)」
3年連続本塁打王に向けては、トップのシュワバーに3本差とした。初回には投手としてそのシュワバーと初対戦。メジャー自己最速タイの101・7マイル(約163・7キロ)直球を初球に投げ込み、スライダーで見逃し三振に仕留めた。この三振で今季50Kに到達。昨季の「50―50」(50本塁打、50盗塁)に続き、またも別の形で史上初の「50―50」(50本塁打、50奪三振)を成し遂げた。
右投左打であることが二刀流を支えている。マクギネス投手コーチ補佐は大谷の強みとして「体の回旋能力」を挙げる。「ブレーキのない車を運転するとしたら、スピードを出さないよね? でも、世界最高のブレーキがついていると分かっていれば、どこまでも速く走らせられる。アスリートにとって回旋はブレーキ、つまり止める能力なんだ」
スイング始動後、多少タイミングを外されても、グッとこらえ、再始動して自分のポイントに持ち込める。その理由を「彼は左打ちの時に腹斜筋や回旋のトレーニングをしている。打撃のために鍛えた筋肉が右投げの時にも役立つ」と同コーチ補佐は語った。逆もまたしかり。
フィリーズに痛い連敗を喫したが初回には二塁内野安打で今季最長の連続出塁を21試合に伸ばした。「1打席でも多く、いいアットバット(打席)を作りたいだけ」。個人記録に興味はない。勝利に対する飢えが背番号17を突き動かす。(中村 晃大)
〇…大谷が達成した2年連続50本塁打は、歴代最多762本塁打を放ったバリー・ボンズも到達できなかった偉業。02年のA・ロドリゲスを最後に出ていなかった。それを投打「二刀流」に復帰したシーズンで実現させた。マグワイア、ソーサ、ロドリゲスは後に筋肉増強剤の使用が取り沙汰されており「クリーン」な大谷が、投手も兼ねながら到達した価値は計り知れない。
◆新たな「50―50」 大谷が昨季の50本塁打&50盗塁に続き、50本塁打&50奪三振の「50―50」を達成した。50発以上を打ったシーズンで奪三振を記録したのは1921年のB・ルース(ヤンキース)以来だが、その年のルースはわずか3K。大谷は54奪三振まで数字を伸ばし、最強の二刀流であることを証明した。
◆NPBの2年連続50本塁打 日本人では落合博満(ロ)が85年(52本)、86年(50本)で唯一記録。外国人ではカブレラ(西)が02年(55本)、03年(50本)を記録。全体でもこの2人だけ。ちなみに王貞治(巨)はプロ野球最多の3度シーズン50本塁打以上をマークしているが、64年(55本)、73年(51本)、77年(50本)と2年連続は一度もない。この3人のほかにシーズン50本塁打を2度以上マークしているのはローズ(近鉄)で01年(55本)、03年(51本)。