凱旋門賞・G1(10月5日、フランス・パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)

 夢の扉に手をかけている。日本競馬の悲願、凱旋門賞に挑むビザンチンドリーム。

前哨戦のフォワ賞を完勝。4歳になった今年は海外G2・2勝、天皇賞・春で2着と着実に力をつけた。坂口調教師は「メンバーがそろっているなかで勝てたのは大きい」と胸を張る。

 成長を示した一戦だ。出遅れても、中団につけ冷静に追走。直線で進路が開いてからは、自慢の豪脚を繰り出すだけだった。ソジーなど欧州のG1馬相手に快勝。「位置を取れるようになって、馬が競馬を覚えてきている」。手応えは深まった。

 本番と同舞台で勝てた意味は大きい。体幹が強く、下りが得意。その点が生き、独特の高低差も苦にしなかった。

馬体重が軽い(直近の国内戦で454キロ)のも好材料。坂口師は「体重が重いと、そのぶん一歩一歩、脚を取られる。スタミナを消耗するのでは。走るバランスも、悪い馬場に合っているかな」と分析する。

 シャンティイは思い出の地でもある。父の坂口正則厩舎の助手時代、16年春にエイシンヒカリが10馬身差で圧勝したイスパーン賞の遠征に帯同。今回と同じ小林厩舎に滞在した。「全部初めてで、新鮮でしたね。馬の能力で勝ったようなもんです」と謙遜するが、その経験は財産。シャンティイ調教場は広大な敷地に、様々な施設が点在。今回、状況に応じて使いこなせるのは、縁ある小林調教師のサポートと、自身の経験のおかげだ。

 ビザンチンドリームはもともとが叩き良化型。

前回も「今までで一番良かったぐらい」というサウジアラビア遠征時(レッドシーターフH1着)と遜色なかったが、今回はさらに上向いている。「前回より自然と調子は上がっている。あとは順調にいけば。それだけですね」。前哨戦を勝って堂々と臨める立場。「ビザンチン帝国の夢」と名付けられた4歳馬が、パリロンシャンで夢をかなえる。(水納 愛美)

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