女優の綾瀬はるか(41)が、充実の40代を迎えている。昨年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」では語りを務め、女優デビュー25周年の今年も17日公開の映画「人はなぜラブレターを書くのか」(石井裕也監督)など注目作が控える。

国民的女優となった今でも変わらず透明感は健在だ。(堀北 禎仁)

 自然体を超えた、自然そのもの。綾瀬はるかはそんな人だ。透き通るような声でのあいさつから「よっこらしょっと」とかわいらしく腰掛ける姿は、取材現場の緊張感とはいい意味で対極。万人に愛される理由の一端を垣間見た。

 昨年40歳を迎え、今年は女優デビュー25周年の節目となる。「自分でもビックリしますよね。30代から40代まで『こうなりたい』みたいなことがあまりなく、本当に『今を一生懸命』というだけでやってきた。大好きな作品や役に出会って結構、突っ走ってきたな、という感じはあります」。かつては「30歳で演技をやめているかもしれない」と答えていたが、女優業へ没頭するままに月日を重ねた。

 27歳で主役を張った大河「八重の桜」(2013年)に全てをささげ、悔いは残っていないはずだった。「これ以上ないのかなと思うような経験をして『もう私、やりきったな』って思ったんです」。

だが、15年に主演映画「海街diary」(是枝裕和監督)で評価をさらに高めると、「どの作品も転機」という怒とうの30代が待っていた。

 「30代になるとアクションでも『精霊の守り人』(NHK)とか『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)とか、常に挑戦しがいがある役のお話をいただいた。終わりがない、ただの通過点でしかないとすごく思った」

 特にTBS系「義母と娘のブルース」には思い入れがある。「母親としての役が初めてだった。こんなに楽しいんだな、っていうのを初めて感じた」。18年放送の連続ドラマが大ヒットし、完結編となった24年のスペシャル版まで何度も演じることに。「経験したことのないことをたくさん経験して、ちょっとずつですけど成長させてもらってる」と振り返った。

 今年初の主演作は、スポーツ報知の記事がきっかけで映画化が決まった「人はなぜラブレターを書くのか」。00年の日比谷線脱線事故で亡くなった富久信介さん(享年17)をめぐる恋物語だ。これまでも脚本を読んで泣くことがあったという綾瀬だが、この作品は特に涙が止まらなかった。

 「実話ということもあって、より重みがドンって伝わってきました。信介くんの思いを背負って生きている人々とか、登場人物全員に愛の形があって、それぞれを思っているところがすごく泣けました」

 同作では、事故の20年後に富久さんへラブレターを送る女性を演じた。

綾瀬自身は高校時代に上京して芸能界入り。青春時代にラブレターを書いたことは「ないです、ないです」と照れたが、電車内で芽生えた甘酸っぱい恋には憧れるという。

 「電車通学じゃなかったから、話したことがないのにお互い恋心を持つような経験がなくて。ドキドキするんだろうなと思ってキュンとしました。いいな、素敵だな…」

 40代の理想像を「大人としてさらに深く、周りを元気にしたり幸せにしたりできる人」と捉えている。演じる役柄も変わってきた。「人はなぜ―」でも、中学生の娘を持つ母の役。娘役を務める女優・西川愛莉は16歳だ。

 「こんな大きい娘がいてもおかしくないんだなっていう驚き、分かります? 早く結婚してたらそうだよな、って思った。母親役なんですけど、母親という実感はあまりない」

 昨年、「べらぼう」で1年間語りを務めたことは「新しいステージ」だった。物語の舞台となった江戸の遊郭・吉原の守り神「九郎助稲荷」として出演。コミカルに“語る”立場を「宙にフワッといる感じ」と表現した。

 「時代を懸命に生きている人たちを上から優しく見守って、時に起きてしまうこともしょうがないよね、と悟っている感じ。時代を俯瞰(ふかん)している神様を演じるのはすごく面白かった。毎日現場で長い時間、職人のように役と闘ってシーンを作っているのとはまた違った」

 昨年末は、6年ぶり4回目となるNHK紅白歌合戦の司会でも世間を盛り上げた。「余裕はできたかな、と思いつつも焦る瞬間はありましたね。絶対リハーサル通りにいかないのが“生もの”の良さでもあり、緊張するところでもある」。時間調整で慌てるスタッフを前に「つられてテンパってしまう瞬間もあった」そうで、「アナウンサーとして毎日それを訓練してたら対応できる能力がつくのかな、とかいろいろ考えてました」と照れながら振り返った。

 年明けは故郷の広島で家族とだんらんの時間を過ごした。「広島は家族が変わらずにいつもいてくれる、安心できる場所。ふだん東京で忙しくしていて、仕事とか役のことに寄りがちな自分を原点に戻してくれる場所でもあります」。東京でもリラックスする時間を大切にしている。「休みの日は好きなものを食べて、好きなドラマとか映画とか時間を気にせずに見るのが幸せな時間です」

 41歳になった今年も、第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された是枝監督作品「箱の中の羊」(千鳥・大悟とダブル主演、5月29日公開)など注目作が目白押し。長い期間をかける映画づくりには充実感を得ている。

 「いいものを作ろうと一丸となって、作品を通して思いが伝わって、見ている人の心を少しでも揺さぶる。本当にやりがいのあるお仕事。見ている人が何かを得て前向きになれるように、幸せにつながるお手伝いをできるお仕事をしたいな」

 めまぐるしく表情を変化させながら、女優の道をひたむきに進む。

 ◆綾瀬 はるか(あやせ・はるか)1985年3月24日、広島県出身。41歳。2000年の第25回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞。芸名は公募で決定。01年に日本テレビ系「金田一少年の事件簿」で女優デビュー。04年のTBS系「世界の中心で、愛をさけぶ」でブレイク。23年「レジェンド&バタフライ」「リボルバー・リリー」で報知映画賞主演女優賞受賞。13、15、19、25年のNHK紅白歌合戦で紅組司会を務めた。身長166センチ。

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