宝塚歌劇OG(元星、月組)の美弥るりかが、主演舞台「MISSDIRECTION」(ミスディレクション)で、元タカラジェンヌばかり9人が集結したクライム・シチュエーションコメディーをけん引する。卒業から7年。

宝塚時代は「美弥るりか」として夢中で走り続けたが、大階段を降りてから“本名の人生”を見つめ直したことが、俳優生活にプラスに作用している。(田中 昌宏)

 今回の舞台は、美弥と宝塚歌劇89期の同期生で同郷・茨城出身の七海ひろき(元星、宙組)がプロデュースする「QQカンパニー」の第2弾。同じ宝塚受験スクールに通っていた時代からの付き合いだが、一緒に芝居するのは初めてだ。

 「カイちゃん(七海)とは、宝塚音楽学校の校内発表会も文化祭も違うチーム。タカスペ(タカラヅカスペシャル=各組のスターが勢ぞろいする特別公演)で一緒に歌ったり踊ったりはあるんですが、セリフを言い合うのは初めてでした。ニヤニヤしちゃいましたね。私も(24年の舞台『ビューティフル・サンデイ』などで)プロデュースした上で舞台にも立ったことがあるので、カイちゃんの苦労は十二分に分かります。プロデューサーは、まず自分がオファーした役者さんに楽しい現場だって思っていただける環境をつくることに気持ちが向くので」

 その共演者は、ひと癖もふた癖もある者ばかり。七海のほか、86期・緒月遠麻(元雪、宙組)、92期・千海華蘭(元月組)、94期・羽立光来(元花組)、95期・妃海風(元星組)、97期・海乃美月(元月組)、99期・帆純まひろ(元花組)、同・野々花ひまり(元雪組)と全5組出身者が勢ぞろいした。

 「初めての本読み(台本を読み合わせる稽古)でも、みんな声がすごく通るので、愉快でうるさくて明るくて(笑)。華蘭ちゃんに会うのは7年ぶり。びっくちゃん(羽立)、ほってぃちゃん(帆純)、野々花ひまりちゃんは“はじめまして”でしたけど、空気を読む力だったり、人を立てて輝かせる力だったり、言わなくても一瞬でできる。

すごい集団だと思いますね」

 2019年に宝塚を卒業。直後のコロナ禍で出演舞台がなくなり、自分を見つめ直す時間ができた。

 「宝塚時代、本当は自分がどんな味が好きなのかも知らなかったんですよ。食事は『とにかく痩せないように』とか『疲れを取るために』ということだけを考えて摂(と)る。不器用なので舞台のことしか考えられなかったんです。美弥るりか像を極めすぎて、本名の自分を置いてきぼりにしていたと言いますか。だから“おうち時間”が増えた時、ノートに自分のプロフィールを書いてみたんです。すると『あ。私、求肥(ぎゅうひ)とマジパンが好きなんだ』というようなことが分かって、うれしくなりました。美弥るりかという鎧(よろい)を脱いだ時の人生も充実させないと、役者として輝けないなと。あの時期、忙しいままだったら、多分そのまま走り続けちゃってたと思います」

 練り菓子が好きなんですね(笑)。舞台タイトルに「ディレクション(方向)」という言葉も入る。

今後、美弥が進むべき方向は。

 「『こういうジャンルの役をやりたい』というのを持たずに、役者としての味をどんどん深めたいです。上質な物、本物をたくさん吸収して、自分も本物に近づいていけるよう、半歩でも一歩でも前に進む。芸歴何年になっても忘れないでいきたいと思います。例えば最近、ジム・キャリーさんの映画を見て勉強しています。芝居心とコメディー要素の融合がすごい。彼の顔芸をマネして鏡に映してみたり…。ちょっと見せられないですけど(笑)」

 大阪公演は28~31日に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、東京公演は6月17~21日にシアターH(品川区)で上演される。

 ◆美弥 るりか(みや・るりか)9月12日、茨城・古河市出身。2003年に89期生として宝塚歌劇団入団。星組に配属。10年「ハプスブルクの宝剣」で新人公演初主演。

12年、月組に組替えし、14年「THE KINGDOM」で同期の凪七瑠海と東上公演ダブル主演。17年の東上公演「瑠璃色の刻」、19年のバウホール公演「Anna Karenina」で単独初主演。19年の退団後は、男役、女役、人間ではない役などと舞台を中心に幅広く活躍。プロデューサー業も務める。168センチ。

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