◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 2月のミラノ・コルティナ五輪。稲川くるみ(27)=光文堂インターナショナル=はスピードスケート日本代表14人でただ一人、出場機会がなかった。

無念さはどれほどのものだったのか。帰国後に話を聞くと、即答だった。「100%、行って良かったです」。前向きな反応に驚かされた。

 昨年末に女子500メートルで初代表に選ばれたが、選考基準上位の高木美帆が出場するかの判断を待つ立場だった。現地入り後も出場を前提に調整していた。本番2日前に代表スタッフから不出場を伝えられたが、ショックはなかったという。指導者不在で個人で活動したシーズンは、調整に苦慮して不振続き。「美帆さんが出た方が絶対にいい。私が出場しても最下位だったかもしれない」。結果を残せていなかった自身の現状を冷静に受け止めていた。

 レースは観客席で声援を送った。

滑ることはできなかったが、五輪代表の立場で過ごしたからこそ気づけたことがあった。「今まではどんな形でも五輪に行きたいと思っていた。選ばれて本当にうれしかったけど、行くだけで何もかも満たされる場所ではなかった。結果を出せる選手が向かっていくから意味があるんだろうなって」と明かした。

 4年前、五輪女王・小平奈緒の引退レースで同走したのが稲川だった。“ポスト小平”と期待され「自分が代わりにならなきゃって思った時期もあったけど、到底なれない」と悩んでいた姿が記憶に残っていた。だが、今は違う。「日本のスケート界を背負うという気持ちではなく、個人としてメダルを目指して頑張りたい」。4年後、胸を張ってスタートラインに立つ姿を楽しみにしたい。(スポーツ担当・林 直史)

 ◆林 直史(はやし・なおふみ) 07年入社。五輪は夏冬4大会取材。25年から大相撲担当。

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