コロナの影響で、飲食店などでは仕入れた食材が無駄になることも多いのですが、そのロスを何とか出来ないかと、新たに取り組みを始めたホテルがありました。4月14日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。

新しい取り組み、まずはホテルオークラ福岡レストランサービス部課長の松本陽治さんのお話です。

★ビールがジンに

ホテルオークラ福岡レストランサービス部課長 松本陽治さん
「ホテルの地下醸造所でクラフトビール博多ドラフトというものを製造しておりましたので、このコロナという状況の中で、やはり大人数の宴会ですとか、ご結婚の披露宴、こういったものがなくなって作っているビールが、消費が低迷し、在庫が余っておるような状況が発生いたしました。そんなところですね、ビールを有効活用できないかというところを考えまして、地元の酒屋の喜多屋さんにご相談をさせていただいて、賞味期限が短い「ビール」を賞味期限のない「ジン」に作り変えるということを考えました。」

こちらのホテルで製造しているビールは、繊細な味わいなどを持ち味にしているため、賞味期限が普通の缶ビールの半分以下の二カ月ほど。これを過ぎると廃棄しなければいけないため、悩んでいました。

▼こちらが「博多ドラフト」(ホテルオークラ福岡公式サイトから)

ビールと食品ロスの画像はこちら >>

そんな時、付き合いのあった酒屋「喜多屋」さんが、ビールからジンを作る技術を持っていると知って、ジンなら賞味期限がないからいいだろうとして製品化を決定。香り付けや、配合などを工夫して、10ヶ月かけて共同で製品化に漕ぎ着けました。

元のビールのアルコール度数は4~6度、一方で、ジンのアルコール度数は45度なので、1,000リットルのビールが、70リットルのジンに凝縮され、食品ロスを減らすことに成功しました。

▼「HAKATAGAWA craft GIN」1000リットルが70リットルに!(プレスリリースより)

ビールと食品ロス

商品名は「HAKATAGAWA craft GIN」、ホテルオークラ福岡のオンラインショップで、1本50ミリリットルで、税込1,320円で購入可能です。

ここまではビールを生まれ変われせて食品ロスを減らす取り組みでしたが、反対に、あるものをビールに生まれ変わらせて食品ロスを減らす動きもありました。食糧危機等を研究する横浜市立大学理学部の坂智弘教授のお話です。

★廃棄予定の麦をビールに

横浜市立大学理学部 坂智弘教授
「研究で作ってる麦があるんですが、そこで使わない部分の麦をビールにして皆さんにお届けしようという企画です。品種改良に近い仕事をしておりますと、実際にたくさんの種類や広い面積で作った麦を全部実験材料にするわけじゃないんですね。

そこで使わなくなったものを、当時は産業廃棄物としてお金を払って捨てていたんですけど、それでは、世界の食糧危機を救う研究をしているのに無駄を出してしまう。こんなことではいけないと思ってそれを生かして何か役に立てないかと。そこから麦のプロジェクトを始めています」

こちらの大学の研究所では、気候変動に強く、同時に環境に優しい麦を目指して、品種改良の研究をしています。その研究で大量の麦を廃棄していたため、環境に優しい研究との矛盾に悩んでいました。

そして2017年から、余った麦でビールを作る取り組みを開始!順調に進んでいました。

ところが去年、コロナ禍で、思ったように農作業ができず、またイベントでのビール販売も中止になり資金的にも大打撃。存続の危機になりました。

そこで少しでも助けになればと、大学でクラウドファンディングを立ち上げた所、全国80名の方が活動に理解を示してくれて、寄付を寄せてくれました。冷蔵庫に蓄えてあった麦を使って、今年も無事、クラフトビールの製造販売ができたそうです。

▼応援が集まり見事「成立」!(「みらい麦畑化計画」クラウドファンディングサイトreadyforから)

ビールと食品ロス

こちらは協力するビール製造会社「ガーレン」のネットショップ等から一本税込460円で購入できます。
ビールと食品ロス

最後にこの活動に取り組んでいる学生さんにもお話しを伺いました。横浜市立大学国際総合科学部4年生の高橋完治さんのお話です。

★減らせ食品ロス

横浜市立大学国際総合科学部4年生の高橋完治さん
「自分自身、飲食のアルバイトをしていて、大量に食料を破棄している現状を目の当たりにしたときに、世界中でそういった食料を求めている人々もいる中で、すごい日本が豊かな国だなと、いうふうに感じているので、そういった世界が一つの目標に対して、みんなが協力している世の中にしたいなというふうに感じています。今現在、横浜市役所にある「つばき食堂」さんっていうところと、私達の麦を使って何かできないかっていうふうに考えて聞いて、特に地域の方々と、僕たちの研究がどんどん繋がってって、いろんな方々に、私達の麦を食べるというか、知る機会を増やしていけばいければなというふうに感じています」

今後も様々なつながりの中でこの活動について多くの人に知ってもらうことで、食品ロスや世界が取り組む環境の問題に貢献したいと言うことでした

◆4月14日放送分より 番組名:「森本毅郎 スタンバイ!」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20210414063000

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