米国でアクティブファンド※が消滅するのではないかという、ショッキングな話題が持ち上がっています。
それがいったい日本に何の関係があるの?ということなのですが、大いにありです。
※アクティブファンドとはファンドマネジャーが市場平均値よりも高い運用成果を目指すファンド/投資信託のこと。米国で投資信託はミューチュアルファンドと称されます。
■なぜ「アクティブファンド消滅」が取り沙汰されるのか
アクティブファンドが消滅の危機にある理由のひとつにETF(上場投資信託)の台頭があります。ETFは主としてニューヨークダウやS&P500、日経平均株価などの指数に連動する運用成果を目指すファンドです。
指数の運用成果に連動させることを目的としますから、指数計算のために対象としている個別銘柄を機械的に売買していけばいいわけです。そこにはファンドマネジャー固有の能力は不要ですし、いまではコンピューター同士で売買取引を完結してくれます。
下手に人間が絡むと計算間違いや受け渡し過誤が発生することもあるので、運用パフォーマンスが劣化する可能性があるくらいです。決まったルーティンで取引をするようなものは機械に任せたほうがいいというわけです。
それに対し、アクティブファンドは人間が銘柄選択や投資戦略を考えますから、どうしても属人的になります。そのため、ファンド運用で一日の長がある米国ではスター・ファンドマネジャーが出現します。
古くは1980年代のフィデリティのピーター・リンチ氏、ヘッジファンドのジョージ・ソロス氏、来年90歳になる現役のウォーレン・バフェット氏等、個人の力量で高い運用成果を出し続けたファンドマネジャーがいることも事実です。
しかし、今現在彼らのように後光がさすほどのビッグネームが登場してきているでしょうか。正直、ほとんど聞きませんね。そうした個人名で勝負するファンドマネジャーが出て来ないのにはいろいろな理由があると思います。たとえば以下のようなものです。
理由1:ファンドマネジャーが以前ほど稼げなくなった
ファンドマネジャーの給料の原資は運用管理費用です。かつては運用資産残高の年間1~2%を受け取っていたわけですが、この料率が年々漸減してきています(下の図表1参照)。
対インデックス比で大幅な超過収益を上げ続けられればいいですが、人間でもコンピューターでも毎年継続してより高い収益を上げ続けるのは困難であることは自明です。
理由2:相場環境が変化した
有名ファンドマネジャーを輩出した1980年代から90年代まではグローバルな投資環境が整っておらず、各国国内の個別事情で相場が形成されていました。日本株も米国株とは逆相関の相場をみせていたのがバブル崩壊までの1980年代です。
一方、米国は湾岸戦争やITバブル崩壊、リーマンショックを経験しましたが、いち早く相場が回復するとともにフィンテックが台頭してきました。この影響で、運用戦略がアクティブからETF・インデックスへ進化したという相場環境の変化があります。
理由3:投資対象選択の理由が問われるようになった
説明責任とかアカウンタビリティという言葉が広まってきたのは2000年以降です。特に、大口の投資を行う機関投資家(年金、企業など)は、株主やステークホルダーに「なぜそのファンドを選んだのか」を大いに問われる時代になってきました。
“なんとなくそのファンドがよさそうだったから”とか、“ファンドマネジャーの人柄が良かったから”などという定性評価は脇に置かれ、定量的なロジックや選択理由が問われるようになったのです。
SRI投資(SRI:Socially responsible investment、社会的責任投資)とかESG投資(ESG:Environment=環境、Social=社会、Governance=ガバナンス)などが台頭してきたのもこの時期になります。勘で勝負の時代は終わり、ロジックや理屈が必要で、かつ大衆受けしないと生き残れない時代になってきたのです。
■金融商品も進化が必要
ことほどさようにアクティブファンドのファンドマネジャーには厳しい時代になりました。筆者は一般消費者を対象とする投資信託おいては、好むと好まざるとに関わらず、ますますアクティブファンドが退潮していくのではと考えています。
30年前には携帯電話やiPhoneは存在しませんでしたが、いまや常識です。ETFも30年前には存在していませんでしたが、いまや主役に躍り出ています。
投資信託を始めとする金融商品も、顧客ニーズやウォンツを捉えて進化しなければ生き残れないということなのです。一般消費者にとってはいい時代になってきました。
図表1:米国における投資信託(ミューチュアルファンド/ETF)運用コスト推移

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出典:モーニングスター・ダイレクト、2018年12月末時点
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