60歳以上になって、パート主婦として働くとき、健康保険や厚生年金に加入するかしないかで悩む人は多いのではないでしょうか。10月からの適用拡大を受け、ますます悩む方は増えています。
健康保険や厚生年金に加入すれば、保障が増えること、将来の年金額が増えることから、「得する」と考える人もいます。
しかし、その分手取りが減るため「損をする」と思えば、配偶者の扶養に入っていた方が「得」かもしれません。
なかなか判断がつかず「周囲の状況に合わせておけばよいのでは…」と思いがちなのではないでしょうか。
そこで今回は、60歳以上のパート主婦が社会保険に入る際、加入した方がよいケース・しない方がよいケースを紹介しながら考えます。
■60歳以上のパート主婦、社会保険(健康保険・厚生年金)加入の対象に
2022年(令和4年)10月から、従業員の数が常時101人以上の中小企業などで働くパート・アルバイトは、年収106万円以上になった時点で、健康保険・厚生年金に加入することになります。
そもそも、60歳は国民年金保険料の支払い義務がなくなる年齢ですが、今回の改正の要件には、年齢的な例外はありません。そのため、要件に該当すれば健康保険・厚生年金などの社会保険に入ることになるでしょう。
念のため、5つの要件を確認しておきましょう。
さらに、2024年(令和6年)10月には、企業規模50人超の短時間労働者も社会保険加入対象となります。
厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト パート・アルバイトのみなさま」
これより、パート主婦などの短時間労働者の健康保険・厚生年金への加入はさらに拡大されることになります。
■健康保険・厚生年金加入で得になる働き方・損になる働き方をケース別に紹介
パート主婦が、健康保険や厚生年金に加入した方が得になるのか、損になるのかは個人差があります。一般的なケースを紹介しながらみていきましょう。
■「年金額を増やしたい60歳以上のパート主婦」は加入した方が得かも
60歳以上のパート主婦が、今まで厚生年金に加入せず、配偶者の扶養として過ごしてきた場合、65歳から受け取る年金は、1階(基礎年金部分)だけです。
しかし、厚生年金保険に加入すると、年金は1階(基礎年金部分)に加え、2階(報酬比例部分)も支給されます。
それ以外に、万が一大きな病気、ケガで障害状態になれば障害厚生年金も受け取ることができるでしょう。実際に、年収120万円で1年・5年・10年働くと、年金額がどのくらい増えるのか計算してみましょう。
《条件》
120万円(年額)÷12か月=10万円(月額)
標準報酬月額は9万8000円
報酬比例の計算式:平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の加入月数
- 【1年間加入の場合】9万8000円×5.769/1000×12か月=6784円(年額)
- 【5年間加入の場合】9万8000円×5.769/1000×60か月=3万3921円(年額)
- 【10年間加入の場合】9万8000円×5.769/1000×120か月=6万7843円(年額)
厚生年金は最長70歳になるまで加入できます。もし「今からでも遅くない、年金を増やしたい!」という人であれば、厚生年金に加入することで、着実に年金の受給額を増やすことができます。
■「配偶者が個人事業主などの60歳以上のパート主婦」は加入した方が得かも
60歳以上のパート主婦の配偶者が個人事業主、または配偶者が定年退職しているのであれば、配偶者の扶養に入ることはできません。
どちらの場合も、国民健康保険に加入し、保険料を全額自己負担することになります。
しかし、パート主婦が健康保険に加入すれば、その保険料は企業と折半になります。この場合は国民健康保険に比べ、負担自体が軽くなる可能性があります。
そのうえ、国民健康保険にない「傷病手当金」の保障も得られます。傷病手当金は、業務外の病気で働くことができない場合、その働くことができなくなった日から起算し、3日経過した日から最長1年6ヵ月間、給与の3分の2相当が支給されるというものです。
また、先述のように、厚生年金に加入することで、65歳になったら、老齢厚生年金も受給できるようになります。
■「配偶者や子の扶養内で働きたいパート主婦」は、加入すると損かも
パート主婦の配偶者や、子どもが会社員や公務員で社会保険に加入しているのであれば、その扶養に入ることができます。
その際、パート主婦は、年収を106万円以下ではなく、年収103万円以下を意識しましょう。健康保険・厚生年金の保険料はもとより、所得税や住民税も支払う必要がなく、給料の手取りを増やすことができます。
また、配偶者や子どもは、パート主婦を扶養に含めることで、配偶者控除や扶養控除などの所得控除を受けることができ、所得税や住民税を少なくすることができます。
■まとめ
社会保険に加入するべきかどうかは人によって違います。60歳以上の主婦がパートで働く場合は、配偶者や子どもの年収と、ご自分の希望などを含め、判断するようにしましょう。
■参考資料
- 厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト パート・アルバイトのみなさま」( https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/dai1hihokensha/ )
- 全国健康保険協会 協会けんぽ「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」( https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r4/ippan/r40213tokyo.pdf )
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」( https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html )
- 国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

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