先週末4月22日(金)の日経平均株価は2万7,105円で取引を終えました。前週末終値(2万7,093円)比では12円高とほぼ横ばいでしたが、週足ベースでは一応2週連続で上昇しています。


図1 日経平均(日足)とMACD (2022年4月22日取引終了時点)


連休前の日本株どうなる?膠着or波乱警戒?
出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の様子を上の図1で振り返ると、株価は上向きの25日移動平均線に沿いながら推移していたほか、ローソク足も下ヒゲの長いものが目立っており、売られた後に買い戻される値動きが多かったことが分かります。


 また、下値は直近安値である3月9日と4月12日を結んだラインがサポートとして機能したほか、下段のMACDも何とか「0円」ラインを維持しており、全体的に底堅い印象です。


 ただ、気になるのは週末22日(金)の取引です。この日の終値は前日比で447円安と、比較的下げ幅が大きかったほか、75日移動平均線も下回っています。


 さらに、週末の日経225先物取引の終値が大取で2万6,710円、シカゴCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万6,720円と一段安となっているため、今週は2万7,000円の節目もしくは75日移動平均線を再び回復できるか、それとも下値を探る動きとなるのかが焦点になります。


 基本的なシナリオは、図1で示した範囲のように、やや膠着(こうちゃく)した展開が想定されるのですが、思ったよりも値動きが大きくなってしまう展開についても考えておく必要がありそうです。


 まずは、値動き(ボラティリティ)が大きくなる展開について確認します。


図2 日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド (2022年4月22日時点)


連休前の日本株どうなる?膠着or波乱警戒?
出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 上の図2は75日移動平均線で見た乖離(かいり)率推移のボリンジャーバンドです。


 前回のレポートでも紹介しましたが、ボリンジャーバンドには、「トレンドが発生しているのとは反対側のバンドの線の向きが変わったときにトレンドが一服する」という見方があります。


 つまり、乖離率(ピンク色の線)が3月9日に底を打ったところから上昇トレンドが発生し、それに伴ってバンドの幅が上下に広がっていったわけですが、下向きとなっているマイナス2σ(シグマ)の線が上向きになったときに、トレンドが一服したと判断する目安になります。


 そこで、先週末22日(金)時点のマイナス2σの値を見るとマイナス10.85%なのですが、前週末(15日)がマイナス10.81%だったので、まだバンドの幅が微妙に拡大中です。バンドの幅が広いということは、ボラティリティが高いことを意味するため、相場はまだ上下に振れやすい地合いといえます。


株価は上がるか、下がるか、企業業績と相場トレンドをチェック

 次に、相場のトレンドについても見ていきます。


図3 日経平均(日足)とRSI (2022年4月22日取引終了時点)


連休前の日本株どうなる?膠着or波乱警戒?
出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は、図1よりも少し期間が長めの日経平均(日足)の値動きとRSI(相対力指数)の推移です。こちらも前回のレポート「 株式市場は意外と堅調?[FRBに逆らうな]なら、株価は重いかも 」でも紹介し、「何だかんだで戻りを試しにいく展開になりそう」と指摘する根拠となった、株価とRSIの逆行現象について触れました。


 結果的に先週の値動きは想定通りの展開となっていて、状況は今もあまり変わっていません。今後も株価の戻り基調が続いた場合、昨年9月14日を起点とする、戻り高値どうしを結んだ上値の線が、抵抗として意識される可能性があります。


 ちなみに、現在の上値ラインは2万8,000円を少し下回ったところに位置しているほか、上値ラインのすぐ上には200日移動平均線も控えているため、新たな買い材料が出てこなければ、当面の上値の目安は2万8,000円水準となりそうです。


 そして、「株価が上がるのか、下がるのか」のカギを握るのは、これから本格化していく国内企業決算の動向次第になります。


図4 国内企業の決算発表スケジュール (2022年4月22日取引終了時点)


連休前の日本株どうなる?膠着or波乱警戒?
楽天証券HP 国内株式決算カレンダーより

 上の図4を見ても分かるように、今週の国内企業の決算発表は週末28日(木)に最初のヤマ場を迎え、大型連休明けの5月9日の週にラッシュとなります。


 とりわけ、5月13日(金)の発表件数は1,200件を超えています。連休明けの件数の多さからすると、今週は個別の動向に反応するものの、相場全体に波及しにくいことも考えられそうです。


 また、国内企業は業績見通しを慎重に見積もるところが多いほか、円安進行や原材料価格の高騰による業績への影響を、企業がどう捉えているのかを見極める必要があります。


 今週はキーエンスや信越化学、デンソー、日立、村田製作所、ファナックなど、輸出関連企業の決算が中心となりますが、連休明けからは内需関連企業の決算も増えてきます。


 今週は、足元の円安が追い風となる輸出型企業への期待が高まる一方、連休明けには円安が逆風になる内需関連企業への警戒も考慮すると、週末にかけて手じまいの売りが出てくるかもしれません。


米国株も不安定、連休中&連休明けの動きを想定

 続いて、株価材料についても考えてみます。先週末に見せた株価下落の背景には、米国の金融政策の正常化ペースの加速が改めて意識されたことが挙げられます。とりわけ、利上げ幅が0.5%ではなく、0.75%に拡大される可能性が浮上してきたことに反応したもようです。


図5 米NYダウ(日足)とMACD (2022年4月22日取引終了時点)


連休前の日本株どうなる?膠着or波乱警戒?
出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 実際に、NYダウ(ダウ工業株30種平均)の動きを見ると、株価は200日移動平均線を回復するなど、これまで順調に戻りをうかがっていたのが、週末にかけて一気に下落した印象を強めています。


 その中でも、週末22日(金)のローソク足が25日・5日・50日の3本の移動平均線をまたぐ、「3本下抜け」の大陰線となっているほか、リスクのオンとオフの境界線とされる3万4,000ドルを下回っており、後味の良くない格好で週の取引を終えています。


 ただし、2月24日の直近安値を起点とする下値ラインがサポートになっているほか、MACDも「0ドル」ラインを下回らずに維持しているため、相場が崩れたという印象でもありません。


 さらに、米金融政策の正常化ペースの加速化を織り込む動きにならなければ、株価が反発していくシナリオもあり得ます。


図6 米NASDAQ(日足)とMACD (2022年4月22日取引終了時点)


連休前の日本株どうなる?膠着or波乱警戒?
出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 しかし、金融政策の正常化にネガティブに反応しやすいとされるグロース株が集まる米NASDAQのチャートの形は、上の図6を見ても分かるように、かなり悪くなっています。


 週末22日(金)の終値(12,839p)は、米金融政策を織り込みにいく過程でつけた安値(1月24日・2月24日・3月14日)のうち、1月24日の安値を下回ったほか、他の安値との距離もあまりない状況となっています。


 また、先週の上値も50日移動平均線で抑えられているほか、下段のMACDも「0p」ラインを下抜けていて、下値を探るような動きにも見えます。


 米国株も日本株と同様に、企業の決算が株価浮沈のカギを握ることになります。特に今週はアルファベットやマイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、アップル、アマゾンといった主力IT大手企業の決算が予定されています。


 このほか、企業決算については、「ゼロコロナ政策」を実施している中国の影響も焦点になりそうです。先週は、上海の都市封鎖(ロックダウン)が一部緩和されるなどの動きも出てきましたが、さらなる緩和が進めば、株式市場の初期反応として上昇の追い風となることが想定されます。


 とはいえ、都市封鎖が行われている中国の港湾都市の沖合では、多くのコンテナ船が積み降ろしできずに待機せざるを得ないという事態が発生しており、中国にモノが運べない、中国からモノが届かないという物流の滞りが懸念されています。


 仮に、早期に都市封鎖が解除されても、たまっている通関手続きを処理するのに時間がかかることを踏まえると、ゼロコロナ政策の影響は業績の下押し圧力として大きな影響を及ぼす可能性があります。


 したがって、今週の株式市場は「膠着感」と「波乱警戒」のはざまで揺れ動く不安定な推移となりそうです。


(土信田 雅之)