今週の株式市場は上値の重い展開が続いています。米主要IT大手の決算は市場予想を上回ったものの、市場の反応は巨額のAI投資への選別が進んでいる印象です。

さらにオープンAI社の成長懸念や米中対立の再燃など気掛かりな材料もあり、AI・半導体相場がひとまずのヤマ場を越える中、次なる焦点や相場全体の地合いの変化を探ります。


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売りに押されながらも意外と堅調な国内外の株式市場

「月またぎ」で5月相場を迎える今週の株式市場ですが、国内株市場が4月末の取引を終えた30日(木)時点で見ると、国内外を問わず売りに押される場面が増えています。


<図1>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年4月30日時点)※欧米市場は2026年4月29日時点
米主要IT決算で見えたAI・半導体相場の変化(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 昨年(2025年)末時点を100とした、国内外の主要株価指数のパフォーマンスで具体的な値動きをチェックしても、全体的に上値が重たくなっている印象を受けます。


 その理由として、遅々として進まない米国とイランとの和平交渉や、金融政策イベント(日本銀行金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC))の見極め、そして、今週予定されている米主要IT大手5社(GAFAM)の決算待ちなどが挙げられます。


 ここまでの材料がそろっていれば、利益確定売りも含めて、株価がもう一段階の下落を見せてもおかしくはない気もしますが、これまでの株価上昇と比べて下落幅は比較的小さく、結果的に相場の地合いはまだ強気を保っているといえます。


 ただ、相場を取り巻く環境を整理すると、足元の強気は危ういバランスの上に立っている面ものぞかせているため、そのポイントについて考えておく必要がありそうです。


「ハイパースケーラー」決算を受けた株式市場の初期反応

 まず、最近までの株式市場は、旺盛なAI需要を背景にした、実需による成長が見込まれる関連銘柄(半導体やメモリー、ストレージ、データセンター周辺など)がけん引してきました。


 これらのうち、先週に テキサス・インスツルメンツ(TXN) や インテル(INTC) 、今週も シーゲイト・テクノロジー(STX) などの銘柄が決算を発表していますが、実際に売り上げや利益を大きく伸ばし、株価もそれに伴って上昇しているものも多く、「一部の銘柄に資金が集中して相場を引っ張っていく」流れはまだ続いているといえます。


 とはいえ、これらの銘柄は、いわゆる「ハイパースケーラー」が積極的にAI投資を行っている間は「実需」が見込まれるため、株価の上昇基調も続きやすいと思われますが、一転して、ハイパースケーラーが投資を縮小する動きを見せ始めると、今度は業績のピークアウト感が出てきてしまい、下落基調に転じてしまうことが想定されます。


 それだけに、今週決算を発表する米主要IT大手5社(GAFAM)は、ハイパースケーラーの代表的な銘柄でもあり、その決算内容が注目されます。


 そんな中、米国時間29日(水)の取引終了後(日本時間では30日(木)の朝)に、 マイクロソフト(MSFT) 、 アルファベット(GOOG) 、 メタ・プラットフォームズ(META) 、 アマゾン・ドット・コム(AMZN) の4社が決算を発表しました。


<図2>米主要IT4社の決算の概況
米主要IT決算で見えたAI・半導体相場の変化(土信田雅之)
出所:Bloombergおよび各種報道などを基に作成

 いずれも業績が市場予想(コンセンサス)を上回る内容だったのですが、決算の結果を受けた米国株市場のアフターマーケット(時間外取引)での株価の反応を見ると、上昇する銘柄(アルファベット)や、下落した銘柄(メタ・プラットフォームズ)、弱含みのもみ合いとなった銘柄(アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)といった具合に、まちまちとなっています。


 こうした株式市場の初期反応の違いについては、「業績が市場の期待値をどれだけ上回ったか(サプライズ度)」をはじめ、「クラウド事業などAI関連事業で稼げているか(収益性)」や、「巨額のAI投資に耐えうる財務余力はあるか(財務リスク)」、そして「他社に負けない強みがあるか(競争力)」などを比較し、AI投資の結果や効率性の違いによって、株価の値動きの差につながったと考えられます。


 例えば、メタ・プラットフォームズは、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムのようなクラウド事業(稼ぎ頭)がない中でAI設備投資の大幅増額を発表したことで、他社と比べて財務リスクへの懸念が嫌気されたため、アフターマーケットで株価が下落で反応した可能性があります。


 ちなみに、この4社における2026年のAI関連への投資額をざっくり合計すると116兆円もの規模になる予定ですので、旺盛なAI需要を背景にした、実需による成長が見込まれる関連銘柄(半導体やメモリー、ストレージ、データセンター周辺など)は、まだにぎわう場面がありそうです。


AI投資については気になる動きも

 その一方、AI投資については、今週に入って気掛かりな動きも出てきています。


<図3>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2026年4月29日時点)
米主要IT決算で見えたAI・半導体相場の変化(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 図3は米主要株価指数のパフォーマンスを比較したものです。


 相変わらずSOX指数の強さが際立っていますが、28日(火)の取引でやや大きめの下落を見せている場面がありました。


 この日のSOX指数は前日比で約3.6%下落したのですが、そのきっかけとなったのは、二つの材料が報じられたことです。


 一つ目は、AI開発企業のオープンAI社の成長懸念です。27日(月)付の米ウォール・ストリート・ジャーナルが、利用者数や売上高において同社が設定した目標を達成できていないと報じました。報道を受けた28日(火)の取引では、 エヌビディア(NVDA) や オラクル(ORCL) 、 ブロードコム(AVGO) など、オープンAI社と契約を結んでいる銘柄の一部が売られる展開となりました。


 オープンAI社は多方面から多くの出資を受けており、将来的に売り上げが伸びない状況が続いてしまうと、資金を返済できなくなってしまうほか、追加の出資を受けるのが困難になってしまったり、株式の新規公開(IPO)にも影響が出てくる可能性もあります。


 先ほどのハイパースケーラー決算でも見てきたように、巨額のAI投資に対しては、収益性や財務リスク、競争力といった視点による選別が進み始めています。


 確かに、AIの将来性や可能性は高く、巨額の投資は「さらなる成長のため」に行われている大義名分はあるものの、その一方で、「(同業他社や中国などの)ライバルに負けないため」に、スピードと規模を優先するあまり、競争が過熱している面も否めません。


 そのため、今回のオープンAI社の報道は後々にまで影響が出てくるかもしれません。


 そして、28日(火)付のロイターが、「米商務省が先週、アプライド・マテリアルズやラム・リサーチ、KLAなどに対して、中国の半導体製造委託企業の華虹半導体に一部製品の販売禁止を求めた」と報じたことも、この日の半導体製造装置株の下落につながりました。


 再び米中対立を意識させる報道ではありますが、こちらについては、5月半ばに予定されている、トランプ米大統領の訪中を前にした、パフォーマンスもしくは政治的な駆け引きの面も考慮する必要があるため、現時点ではまだ様子を探る段階かと思われます。


 いずれにしても、来週の米国株市場も、 パランティア・テクノロジーズ(PLTR) や、 アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) 、英 アーム・ホールディングス(ARM) 、 ルメンタム・ホールディングス(LITE) などの注目企業の決算発表が予定されていますが、AI・半導体相場は今週のGAFAM決算でいったん「ヤマ場」を通過することになります。


 次のヤマ場は5月21日に予定されているエヌビディアの決算となりますが、それまでの相場の視点は、「中東情勢の行方」をはじめ、「中東情勢の影響(インフレやコスト増、供給網リスク)」「トランプ米大統領の訪中を控えた米中関係」「新米連邦準備制度理事会(FRB)議長体制で迎える6月のFOMCに向けた思惑」などに向かうことになり、直近まで相場のけん引役のウラで鳴りを潜めていた銘柄群の株価が浮上し、相場全体の底上げができるかが焦点になってきそうです。


(土信田 雅之)

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