観光と交通に関わる大発表

 4月30日にJR西日本が発表した「JAL」「ANA」との連携協定。乗客獲得をめぐって長年“バチバチのライバル関係”にあった航空と鉄道ですが、なぜタッグを組むことになったのか?そして利用者にはどんな影響があるのか、解説します。

【取材】
◎航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗氏
◎金沢大学 井出明教授

“バチバチのライバル”が目指すのは「シームレスな予約」

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 今回の連携における最大の目玉は、「航空と鉄道のシームレスな予約」。その狙いはインバウンドを中心とした利用者拡大です。

 2030年代をめどに、各社の予約システムから航空と鉄道、両方の予約・決済を一括でできるようにすることを目指すといいます。

 その背景にあるのは、外国人観光客が抱える「交通手段の予約の不便さ」です。

「大阪の次は広島へ行きたいが…」外国人観光客が直面する“予約の壁”

“バチバチのライバル”JR西とJAL・ANAがタッグ 背景に「インバウンド客を悩ませる交通予約の不便さ」別々のサイト・複雑なルート選び→シームレスな予約で利用者拡大を目指す 一方で「予約可能時期のずれ」など課題も
MBS

 日本を訪れる外国人観光客にとって、国内の移動ルートを確保することは決して容易なことではありません。

 例えば、飛行機で関西国際空港に降り立った旅行者が「次は広島へ行きたい」と考えたとしましょう。日本人であれば「大阪→広島なら新幹線」などと直感的に分かりますが、土地勘のない外国人が最短・お得なルートを判断するのは至難の業です。

 さらに予約の際、新幹線ならJRの専用サイトへ、飛行機ならJALやANAのサイトを別に立ち上げる必要があります。

 こうした複数なシステムが、外国人にとって大きなストレスとなっていたのです。

「QRコード改札の普及」が連携の後押しに?

 JR西日本とJAL・ANAの連携は、航空・鉄道の双方にとってメリットがあると航空・旅行アナリストの鳥海氏はいいます。

航空:海外エアラインと比べ「鉄道予約をセットでできる」という付加価値がつく
鉄道:航空機からの乗り換え客を取り込めるため、乗客を増やせる

 また、この連携を後押しした背景として、「QRコード改札」の普及が挙げられます。これまでは訪日後にICカードを購入したり、窓口で紙の切符を受け取ったりする必要がありましたが、予約時に発行されたQRコードをスマホでかざすだけで改札を通過できるようになれば、移動のハードルは劇的に下がることになります。

 一方で、実現には課題もいくつかあるようです。

課題その1「JRの予約サイトがバラバラ」

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 1つ目の課題は、同じ「JR」でも予約サイトがバラバラな点です。

JR西日本:JRおでかけネット
JR東日本:えきねっと
JR東海:スマートEX

 今回の提携はあくまでJR西日本とのもの。JR東日本は一部でJAL・ANAとの提携を進めているものの、東海道新幹線を抱えるJR東海は、今も航空会社とは激しいシェア争いを繰り広げる「バチバチ」の関係にあり、日本全国で統一された予約システムを作るのは容易ではなさそうです。

課題その2「予約時期がバラバラ」

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 航空券が約1年前(355日前)から予約できるのに対し、新幹線などの鉄道はおおむね1か月前からです。

 数か月前から訪日計画を立てる外国人にとって、航空券は取れても新幹線の席が確定できないという現状は、旅行スケジュールの確定を妨げる要因となります。

 鳥海氏は、「鉄道側が予約期間を数か月単位に延ばすのではないか」といった可能性に言及しています。

【1年前予約のメリット】
客側:早く予約できる/早期割引の恩恵
企業側:客数が把握でき増減の調整ができる

【1か月前予約のメリット】
客側:直前まで予定を決めずにすむ
企業側:ダイヤ改正の影響を少なくできる
(鳥海高太朗氏)

「外貨獲得」としては自動車に次ぐ第2位の額

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 連携の背景とされるのが、インバウンド戦略です。

 2025年の訪日外国人の数は4268万人と、2020年(当初の東京オリンピック開催予定)の目標値だった4000万人を突破。

 訪日外国人の旅行消費額は2025年に約9.5兆円(観光庁調べ)に達し、自動車産業(=輸出額約18兆円 2025年度・財務省調べ)に次ぐ日本第2位の“外貨獲得”の産業へと成長しています。

 2030年には年間訪日客数6000万人という、イタリアと同レベルの観光大国の座を目指す政府目標が掲げられています。

輝堂・航空の連携は「地方分散」のカギ オーバーツーリズム解消なるか

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 航空と鉄道の連携は、「オーバーツーリズム(観光公害)」対策の鍵でもあります。

 現在、訪日客の宿泊の約7割が首都圏・関西・名古屋の三大都市圏に集中していて、地方への恩恵が十分に行き届いていないのが実情です。

 この偏りを解消し、地方へ観光客を誘導するためにも、今回の連携は重要な役割を担っているのです。

とはいえ「インバウンドへの依存」はリスク 利益を他産業へ生かす姿勢を

“バチバチのライバル”JR西とJAL・ANAがタッグ 背景に「インバウンド客を悩ませる交通予約の不便さ」別々のサイト・複雑なルート選び→シームレスな予約で利用者拡大を目指す 一方で「予約可能時期のずれ」など課題も
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 インバウンドへの期待がかかる一方で「過度な依存はリスクもある」と指摘するのは、金沢大学の井出教授。その理由は、感染症・為替変動・国際情勢などで崩壊してしまうおそれがあるためです。

対策として鳥海氏、井出教授はそれぞれ以下の案を挙げます。

日本人観光客を大事にする
→二重価格/外国人と予約枠を分ける(鳥海氏)

観光で得たお金を製造業など他産業へ回せるか
→観光は一部の人のみが利益を得ているように見えている側面もあり、増益を生かす姿勢が必要(井出教授)

 連携が目指す“観光の未来”は実現するのか…今後の動きが注目されます。

(2026年4月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

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