バフェット氏も注目する総合商社株のうち、非資源分野に強い伊藤忠商事と住友商事を比較。伊藤忠商事は高い経営効率と手厚い還元、成長投資が魅力ですが、割安感は薄めです。

一方、住友商事は決算での還元強化や負の遺産解消で株価が急騰し、割安感も残ります。投資スタイルや今後のカタリスト(還元発表など)を考慮して選ぶのが賢明です。


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「非資源分野」に強み 明暗分かれる総合商社株

 ウォーレン・バフェット氏もお気に入りの総合商社株から、最近の株価で明暗分かれる2銘柄をピックアップしました。バフェット氏が日本の総合商社株5銘柄( 伊藤忠商事(8001) 、 丸紅(8002) 、 三菱商事(8058) 、 三井物産(8031) 、 住友商事(8053) )を一斉買いしたのは2019年7月。当時超バリュー株だった総合商社株も、株価で4~5倍に爆騰しました。


 それでもなお、バフェット氏は「今後50年間、売却することなど考えないだろう」と発言。短期で見るべき株では無いのでしょうが…今年の株価で見ると個別のパフォーマンス差は歴然です。中でも、大きく明暗分かれる同じ「非資源分野」に強みを持つ伊藤忠商事と住友商事、ここから買うならどっち? この2社で比べてみます。


伊藤忠商事(8001) 住友商事(8053)
伊藤忠商事 vs 住友商事 バフェット氏もお気に入り!総合商社株 ここから買うならどっち?
伊藤忠商事 ロゴ

伊藤忠商事 vs 住友商事 バフェット氏もお気に入り!総合商社株 ここから買うならどっち?
住友商事 ロゴ

 上記両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?


A: 伊藤忠商事(8001)

伊藤忠商事 vs 住友商事 バフェット氏もお気に入り!総合商社株 ここから買うならどっち?
出所:筆者作成 日足チャート年初来

ここがGOOD

投資を「ギア・チェンジ」しつつ還元しっかり

 26年3月期の最終利益は9,003億円で、2年連続の過去最高益、そして初の9,000億円台に到達しました。この状況に難癖付けるのは、さすがにナンセンス。5月1日に発表された2027年3月期の期初計画(ガイダンス)でも、最終利益予想は前期比5.5%増益の9,500億円としていました。


 これはコンセンサスとほぼ同等だったためニュートラルですが、「損失バッファー」という資産価格の急落時など予期せぬ損失に備えたバッファーもしっかり入れているとみられます。つまり、ガイダンスは「保守的」ということです。


 足元の業績が好調な時でも、将来の成長を見据える伊藤忠商事。

2027年3月期は次のステージへの「ギア・チェンジ」として、成長投資を加速させる1年と位置付けています。


 並の会社であれば、成長投資加速の期間は株主還元後回し…というのが一般的ですが、株主還元にも抜かり無しなのが伊藤忠商事のすごみ。累進配当を明確化していますが、維持ではなく、前期まで11期連続の増配中です。


 今期も「1株44円以上」(前期42円)と増配計画ですし、自社株買いも「3,000億円以上」と示しています(まだ発表していないので、これから出てきます!)。自社株買いは前期1,700億円でしたのでほぼ倍増、総還元性向も前期の52%から今期は64%程度になりそうで、成長投資を加速しながら還元も大幅アップはさすがです!


バランス抜群の事業ポートフォリオ

 総合商社株の中で、資源に強いとされるのが三井物産と三菱商事。もちろん、伊藤忠商事も鉄鉱石、原子力、ウラン関連など資源系でも強みはありますが、利益の中で占める資源比率は低水準です。「非資源分野」の占める利益比率が高いという風に表現されますが、26年3月期も今2027年3月期計画でも利益の約85%が非資源分野という構成です。


 生活消費関連という大きな枠組みがあり、その中の稼ぎ頭でいえばファミリーマート。また、繊維はデサント、機械は日立建機などが挙げられますがいずれも堅調で、食料も好調です。オーガニックな成長が続く中でも、収益ステージを引き上げるため成長投資加速を行う姿勢は、長期投資の観点では非常にポジティブと言えそうです。


ここが心配

「インフレ局面に弱い」という見方も

 非資源分野に強い!これがセールスポイントなのですが、それだけに資源高の局面では相対的に出遅れる銘柄になります。最終利益に占める資源分野の比率が同社は15%程度なのに対し、三井物産は約60%、三菱商事は約50%ですので、同じ総合商社でも稼ぎ方に大きく違いがあります。 


 足元のような中東情勢悪化で資源価格が上昇している局面では、総合商社内での優先順位も下がりがち。

また、日本もついに物価が大勢的に上昇するインフレ局面となっている中、資源権益が少ない=インフレ局面にも弱い、として、こちらも優先順位が下がる理由になっています。


 年初来騰落率を見てみると、5月8日時点で伊藤忠商事が+2%であるのに対し、資源分野に強い三井物産+20%、三菱商事は46%との大幅なパフォーマンス差が生じています。


ROEが高い分、PBRも1番高い

 経営効率の高さを示す自己資本利益率(ROE)は14.6%で、総合商社でナンバーワンです。純利益、時価総額、ROEで商社内の3冠を目指すと公言していましたが、ROEに関しては盤石。純利益と時価総額で三菱商事に首位の座を譲っていますが、3冠奪還のため成長投資を加速させています。


 ROEが高いため、ROE×株価収益率(PER)で計算する株価純資産倍率(PBR)も高くなります。PBRは総合商社5社で最も高い2.13倍で、5社平均の1.97倍を上回ります。それだけ株価が評価されている、期待を織り込まれているのが伊藤忠商事。


 総還元性向も最も高いのですが、株価評価が高い結果、今期予想配当利回り2.18%は5社平均2.38%より低くなってしまっています。株価指標面でいえば、(優等生だけに)割安感は小さいといえそうです。


伊藤忠商事 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
伊藤忠商事 vs 住友商事 バフェット氏もお気に入り!総合商社株 ここから買うならどっち?
出所:筆者作成

B: 住友商事(8053)

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出所:筆者作成 日足チャート年初来

ここがGOOD

本決算発表、サプライズ度ではピカイチ

 5月1日の決算発表直後、株価は圧巻のストップ高(前日比+17.1%)、そして翌7日も+8.2%と2日間で急激な値上がりを実現しました。それまで、伊藤忠商事と同じ非資源分野に強い総合商社ということで出遅れていたわけですが、それが一転、年初来パフォーマンスでも+33%に躍進しました。


 商社ですので、株主還元策は特に注目されますが、今回の発表で打ち出した還元策としては最も「ポジティブ・サプライズ」と判定されたのが住友商事でした。

他社より還元強化に遅れをとった分、ここにきて強化姿勢が鮮明となっています。他社に追随し、今では累進配当方針を明言しており、総還元性向でも40%以上を掲げている住友商事。


 同社の前期の配当は10円増配の150円でしたが、2027年3月期も10円増配の160円(4分割前ベース)としています。増配以上に株価インパクトにつながったのは、同時に発表した自社株買い枠800億円と、7月に1株を4株にする株式分割までセットで出したことでした。


株価指標面で相対的に割安

 前期の着地がコンセンサスを約5%上振れたほか、2027年3月期の期初計画(ガイダンス)の最終利益予想6,300億円もコンセンサスを1%程度上振れ。2期連続の最高益見込みではありますが、他社と比べてサプライズが大きいとも言えません。では何が好感されたか? それは、「事業ポートフォリオの変革」を打ち出したことでした。


 アナリストがこぞってポジティブとしたのが、「負の遺産」であるマダガスカルのアンバトビー・ニッケルプロジェクトから撤退したことでした。


 2005年から参画していたものの、長年の懸案事項とされた大型プロジェクトからの撤退の決断。保有する持ち分の全てを譲渡し、2027年3月期に約700億円の損失を計上しますが、関連して税効果を認識するために業績に与える影響は軽微ということです。


 これにより、将来の不確実性(損失リスク)が取り除かれ、結果として予想PER面で評価が低かった部分の修正が進んでいるといえます。5月8日時点の予想PERは13.5倍と、総合商社5社で最も低く、5社平均の15.6倍を大きく下回ります。

また、PBRも1.85倍と5社平均の1.97倍を下回っており、決算後に急騰しましたがいまだ割安感は残っているといえそうです。


ここが心配

分割で買いやすくなることで…

 株価ということでいえば、三井物産、三菱商事、丸紅が5,000円台で、26年1月に5分割した伊藤忠商事が2,000円台なのに対して住友商事は7,000円台。気付けば5大商社株の中で一番の値がさ株に…。東証が買いやすい株価への分割を要請していることもあり、今回の決算発表時に7月1日付で1株を4株に分割すると発表しました。


 5月8日の株価は7,180円ですので、単純に4分割すると1株1,795円になり、総合商社で最低投資額が一番小さい株に変化します。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座を使った株式投資をする個人投資家にも買いやすくなることで、個人投資家層の拡大と流動性の向上に期待できる…という風に、一般的には表現できます。


 ただ、これは流動性の低い中小型株の場合には期待されますが、そもそもの流動性の高い大型株の場合、流動性は値がさ株の方が高い傾向があります。例えば、先行して26年1月に5分割して買いやすくなった伊藤忠商事の売買代金は、他の総合商社より低い増加率です。つまり、分割で買いやすくなったのに、総合商社の中での流動性は相対的に低下したといえます。


 過去6カ月平均(26週移動平均)の売買代金と、過去3カ月平均(13週移動平均)の売買代金で比べてみます。伊藤忠商事は12%増加したのですが、同じ期間で三菱商事の32%増加、三井物産の26%増加に比べ見劣りしました。


 また、13週移動平均売買代金自体も丸紅と同等まで低下していて、明らかに流動性面では存在感を失っています。住友商事に関しても、NISAを使う個人投資家などの関与は増えるかもしれませんが、流動性が低下するリスクには留意したいところです。


住友商事 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
伊藤忠商事 vs 住友商事 バフェット氏もお気に入り!総合商社株 ここから買うならどっち?
出所:筆者作成

あなたなら、どっちを買う?

 バフェットさんの言う通り、ずっと持っとけばいい! 総合商社株はそういうものかもしれませんが、今年に入ってからのパフォーマンスで大幅な差が生じている2社。出遅れ株好きな投資家には伊藤忠商事でしょうし、株価は上がっていてもまだPERやPBRで割安な株がいいという投資家には住友商事でしょう。


銘柄比較表 伊藤忠商事 vs 住友商事
伊藤忠商事 vs 住友商事 バフェット氏もお気に入り!総合商社株 ここから買うならどっち?
出所:筆者作成 ※2026年5月8日現在

 総合商社株は株主還元が重視される業種ですが、今回は住友商事がフルパッケージで材料を提供。ただ、伊藤忠商事は自社株買いの発表自体はしていないだけで、今期だけで3,000億円以上という強力な計画を示しています。還元材料が今後出てくるという意味でのカタリストでは、伊藤忠商事に注目ですね。ここから買うなら、伊藤忠商事と住友商事、あなたならどっちですか?


銘柄投票にぜひ参加してみてください

【銘柄を投票】伊藤忠商事 vs 住友商事 バフェット氏もお気に入り!総合商社株 ここから買うならどっち?


各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。
同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレス無く参加できると考えられます。

(岡村 友哉)

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