世界的なデータセンター建設ラッシュで、データセンターが爆食する電力の供給確保が重要事項となりました。米国に続き、日本でも電力株がAI関連株として見直される可能性はあります。

ところが、日本の電力企業には、重大な三つの電力行政リスクがあります。電力株の投資価値は、電力行政しだいで変わるリスクがあります。


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原発再稼働で先行する関西電力に注目

 現在、私は電力セクターでは、関西電力(9503)と九州電力(9508)を「買い」と判断しています。


<電力株、投資の参考銘柄:2026年5月27日時点>
電力株は出遅れAI関連株?電力行政に不透明感、三つのリスクに注意
出所:各社決算資料およびQUICKより楽天証券経済研究所作成。配当利回りは、2027年3月期1株当たり配当金(会社予想)を5月27日株価で割って算出

 これには、二つ理由があります。


【1】原発再稼働で先行している。原発再稼働で収益改善が期待される。
【2】生成AIの利用拡大で、電力需要が伸びることが想定される。


 この二つの買い理由は、今も変わりません。AI利用が世界中で拡大すると、AIデータセンターで膨大なデータ学習、処理が必要になり、膨大な電力が消費されます。また、サーバーが過熱しないよう、冷却するためにも電力を消費します。そうした視点から、米国では電力株が成長株として買われています。


 欧米や中国、日本でデータセンターの建設ラッシュが進んでいます。必要な電力の確保や、通信網の手当てがされないまま、データセンターばかりどんどん造っていることに対して、不安感が出ています。

電力不足が原因で、完成しても稼働できないデータセンターが出る可能性が危惧されています。


 中国では、それが現実となりつつあります。中国メディアの報道によると、中国のデータセンター稼働率は3割以下だといいます。


 データセンターの建設ラッシュが進むものの、稼働に必要な電力が足りていません。発電量を増やせば良いだけでなく、送配電網のさらなる構築が必要です。同様に、米国も電力インフラの老朽化が進み、電力需要急増に対応できなくなる可能性が危惧されています。


 このように、世界的に注目される電力株ですが、日本では、これまで、AI関連として注目されて買われることはありませんでした。不稼働原発を抱える財務的な負担が重く、株価低迷が続いてきたからです。


<電気・ガス業株価指数と日経平均の動き比較:2012年末~2026年5月(27日)>
電力株は出遅れAI関連株?電力行政に不透明感、三つのリスクに注意
出所:2012年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所作成

 ただし、今後、原発再稼働が進めば、電力会社の収益、財務の改善が見込まれるので、改めて電力株を、出遅れのAI関連株として買っていける可能性があります。


電力株投資の最大のリスクは電力行政

 電力株は、かつて(東日本大震災前)は優良な高配当利回り株の代表でした。業績は安定的で財務は良好、発送電で世界トップクラスの技術を持ち、東京電力ホールディングスなどは将来的に技術の輸出も視野に入れていました。


 しかし、東日本大震災で起こった、福島第一原発の事故で全てが暗転しました。日本の電力株は不稼働原発を抱える負担から、財務、収益が悪化し、高配当利回り株ではなくなりました。


 今、ようやく関西電力から投資を再開して良いと思っています。ただし、今なお、電力株投資には、三つの重大リスクがあります。いずれも日本の電力行政に関わることです。それ故、大量に保有するのではなく、少しだけ持つ程度が良いと思います。


【1】電力自由化の誤算:非効率な送配電ネットワーク

 日本の電力自由化は、10電力企業による地域独占を解消して、新規参入を促すことが目的でした。自由化の成果で、発電、電力小売りには新規参入が増えて、当初の目的をある程度達成したと思います。


 ところが、送配電については、非効率なままです。送配電は、分割して競争を促すのではなく、逆に全国を2社程度に統合して、効率的なネットワークを築く必要がありました。送配電会社が、10電力企業によって、全国で細切れに分断されていることが、日本の送配電を著しく非効率にしています。


 電力は保存が難しいため、発電量と電力使用量を一定地域内で常に均衡させる必要があります。需給調整は、広域でやると効率は良いが、狭い地域でやるのは大変です。全国10電力に細切れになった送配電ネットワークで、別々に需給調整するのは極めて非効率です。


 NTTの通信ネットワークで考えてください。短距離通信網は、NTT東日本とNTT西日本の2社で全国をカバーしています。だから効率よく、通信ネットワークを運営できるのです。もし、短距離通信会社が全国で10社に分割されていれば、極めて非効率です。電力では、そのような非効率が残ったままです。


 風力や太陽光発電など出力が安定しない電源が増えると、ガス火力発電のように機動的に出力を調整する調整電源が必要となります。その調整を、全国レベルでやるのは楽ですが、10電力で細切れにやるのはとても困難です。


 今からでも、送配電は全国2社に統合する議論を急ぐべきと思っていますが、電力業界が動く可能性は低いと思います。


【2】原油ガス価格上昇時の価格転嫁が遅れる、転嫁できない部分もある

 電力企業は、世界中のどの国にとっても、経済上極めて重要な存在です。従って、世界中の国々は、電力企業の収益や財務が痛むことがないよう、原油、ガスなどのコストが上昇した時には、電力料金に速やかに転嫁できるようにしています。


 日本も、基本的には、コストアップは全て料金に転嫁させる方針です。ところが、現実にはそうなっていません。

政治的配慮で料金引き上げが遅れたり、転嫁できない部分が発生したりして、電力企業が巨額の赤字を計上することがあります。


【3】核燃料サイクル事業が実現不可能であることを正式に認めていない

 原発再稼働が進む一方、使用済み核燃料をどう処分するか、議論は進んでいません。


 かつては、使用済み核燃料は、核燃料サイクル事業で使われる資源と見なされていました。通常の原発で使用済みとなった核燃料を再生して、プルサーマル発電に使い、さらに、高速増殖炉で何度も発電ができると見なされていました。


 ところが、日本でも世界でも、技術上の問題から、プルサーマル発電も高速増殖炉も、実現不可能であるということが明らかになってきました。


 資源リサイクルを断念するならば、使用済み核燃料は、さらなる発電に使う資源ではなく、処分が必要な放射性廃棄物となります。早い時期に、核燃料サイクルは実現不可能であることを認め、それを前提に、最終処分場を確保しつつ、原発再稼働を進めていったら良いと思います。


 以上、簡単ながら、日本の電力産業の構造問題について、私の考えを解説しました。なお上記は、あくまでも筆者の個人的見解です。


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