5月の中小型株ハイライトは「列島熱狂の陰に隠れる」
ある外資系証券の5月リリースのレポートに、こんな記載がありました。日本株は「AI株か非AI株かで分かれている」。そして、海外投資家の関心は「AI株のラリーの持続性に集中していた」と。
5月もAI株(半導体関連、データセンター関連)が上下に躍動し、売買エネルギーも集中。AI株の影響が強い日経平均株価が月間騰落率11.9%を記録した一方、非AI株ばかりのTOPIXスモールは3%台どまり。非AI株だらけの東証スタンダード市場は月間マイナスでした。
5月の大型連休中に、米国とイランが戦争終結に向けた覚書を用意するといった中東情勢リスク後退のニュースが飛び込みました。これを受け、GW明けの5月7日は日本株ナンバーワン人気のキオクシアホールディングス(285A)がストップ高し、日経平均も3,320円高とド派手なリスクオン地合いに。
ただ、4月から続いたAI株相場に過熱感もあり、いったんは熱冷まし的な巻き戻しの動きも起きました。前月の歴史的なNT倍率上昇の巻き戻しなのでNT倍率は低下、つまりは東証株価指数(TOPIX)優位な動きです。
AI株が売られる一方で、非AI株に見直し買いが広がり、AI株を触っていない投資家には「日経平均は下がっているけど、こっちの方が良い地合い」と感じたと思われます。
その期間は5月14日~20日、日経平均株価が毎日下げた5営業日だけでしたが…。ここでの下落理由としては、イラン戦争の長期化による原油価格上昇で、インフレ進行観測が広がり、日米とも金利が上昇していたこと。金利上昇を嫌って米半導体株(SOX指数)も大きく下落し、それに連れ安したということがいわれていました。
また、日本の人気AI株フジクラ(5803)が、今期の業績予想(ガイダンス)と新中計ともに市場期待下振れで、「フジクラ・ショック」なる表現も出ていました。
ですが、結局…リスクマネーはいったん調整したAI株の押し目買いに殺到。日経平均が6営業日ぶりに反発した21日は、米半導体大手のエヌビディアの決算通過タイミングでした。
エヌビディアの決算でAI投資の力強さを改めて確認し、資金が戻ったと(当のエヌビディアの株は下げていますが)。このタイミングで、トランプ米大統領がイランとの戦争終結について「最終段階にある」と発信したことなども重なり、AI株ラリーが再燃。
とくに、超絶好決算を示したキオクシアHDがAI株人気を盛り上げ、アーム・ホールディングス(ARM)の株価急騰でNAVが急上昇したソフトバンクグループ(9984)も暴騰。ソフトバンクグループがトヨタ自動車(7203)の時価総額を抜きにかかり、日経平均ウエートもアドバンテスト(6857)を抜いてトップに浮上。
AI株のパワーで指数を持ち上げ、指数が最高値を付けることでショートカバーも誘発するすさまじいモメンタム相場になりました。日経平均株価でいえば、6万円台を駆け上がり、5月末は6万6,329円の最高値フィニッシュ!
日経半導体株指数と比較すると、東証プライム市場自体はさっぱりパフォーマンスが上がっていなかったことも分かります。その中で、やや奮闘したのは東証グロース市場でした。
防衛関連の枠組み、そしてスペースXの上場ニュースなどで宇宙関連のアストロスケールホールディングス(186A)やQPSホールディングス(464A)が盛り上がったほか、同じく防衛の切り口でドローン関連のTerra Drone(278A)やACSL(6232)も人気化。そのほか、QDレーザ(6613)やパワーエックス(485A)など柱となる銘柄が循環した1カ月でした。
新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「割安な高配当株へ資金『還流』」
AI株の狂乱で幕を下ろした5月相場でしたが、月が替わるとトレンドや物色が変わることは非常に多いといえます。
キオクシアHDが爆上げで三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の時価総額を大きく上回り3位となり、ソフトバンクグループが爆上げでトヨタ自動車の時価総額を上回り首位に浮上(トヨタ自動車の首位陥落は22年半ぶりだそうです)。
日経平均も一時6万7,000円台に到達するなど、そこだけ見ると地合いは良さそうですが、プライム市場全体の71%の銘柄が値下がり。東証グロース市場250指数にいたっては前日比4.25%安…全体的には、地合いボロボロのスタートになりました。
このモメンタム株優勝な地合い、いつまで続くのでしょうか。モメンタム株は「上がるから買う」というのがリスクテイカーたちの動機になるため、「上がらなくなったら買わない」に変化します。
今上がっているキオクシアHD、ソフトバンクグループ、村田製作所(6981)や太陽誘電(6976)のような電子部品株の一角が崩れる時、きっと他の株に資金が向かっているだろう、という大ざっぱな読み筋が立ちます。
これだけ山が高かっただけに、谷も深そう…そんな不安はありますが、それでいえば、米株市場で警戒されている6月のアノマリーがあるそうです。1950年以降の中間選挙イヤーの6月は米株にとって最悪の月のようで、これはダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数(NASDAQ)、S&P500種指数のいずれにも該当するそうで、1990年以降分だけ調べてみました。
中間選挙イヤーのS&P500の月間騰落率がマイナス5%超になっている箇所がいくつかあり、前回2022年6月はマイナス8.4%と大幅調整となっていました。前回は米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅利上げに踏み切ったことで、リセッション懸念でハイテク株急落となったので特殊要因かもしれませんが、手前の5月に強烈なハイテク株高が発生した反動には注意したいところです。
AI株か、非AI株か…これで二分した世界にあって、非AI株だらけの中小型株に見直し買いの芽はあるのでしょうか? 非AI株に資金が向かうには、AI株の鎮静化が必須ですが、こればかりは米国のAI株次第でもあります。
なお、日本株市場の6月というのは、需給面でポジティブな季節性があります。それは、3月決算企業の期末配当金の支払いが本格化することです。株主総会が集中するのは6月第4週ですが、総会の翌日に配当が振り込まれるのが一般的です。
振り込まれた配当金の一部が再投資の形で市場に還流することに期待されます。そして、高配当株で得た配当金は、高配当株に流れやすいと考えられます。高配当株は非AI株だらけですので、株価低調により配当利回りの妙味は高まっているタイミング。再投資が押し目買いのような働きとなることに期待します。
株価堅調キープ&今期増益見通しの高配当利回り株
【条件】
(1)スタンダードorグロース銘柄
(2)5月の月間騰落率がプラス
(3)今期最終増益、増配見通し
(4)予想配当利回り3%以上
(5)時価総額が300億円以上
※5月29日終値時点、予想配当利回り高い順
コード 銘柄名 予想配当利回り 今期予想最終増益率 287A 黒田グループ 5.9% 16% 2986 LAHD 5.7% 89% 4619 日本特殊塗料 5.5% 1% 1822 大豊建設 5.1% 3% 5184 ニチリン 4.6% 2% 8871 ゴールドクレスト 4.5% 62% 8596 九州リースサービス 4.4% 7% 5363 東京窯業 4.3% 21% 166A タスキHD 4.2% 18% 1736 オーテック 4.2% 5% 7460 ヤギ 4.0% 1% 1793 大本組 4.0% 49% 8704 トレイダーズHD 3.8% 13% 9028 ゼロ 3.8% 0% 4832 JFEシステムズ 3.7% 3% 6357 三精テクノロジーズ 3.5% 4% 7287 日精機 3.4% 22% 2393 日本ケアサプライ 3.1% 2%
東証スタンダード市場、東証グロース市場に上場する時価総額300億円以上の銘柄のうち、業績面で不安の無い(今期最終増益、増配見通し)銘柄に絞りました。
そのうち、配当利回りを基準に割安感のある(配当利回り3%超)銘柄をピックアップ。不動産ビジネスを展開するLAホールディングス(2986)とタスキホールディングス(166A)の2銘柄は東証グロース銘柄ですが、やはり大半はスタンダード銘柄でした。
7月にはコーポレートガバナンス・コードの改訂も控えています。
(岡村 友哉)

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