近代化産業遺産の駅舎がまさかの真っ黄色に!

「ことでん」こと高松琴平電気鉄道の滝宮駅舎(香川県綾川町)のリニューアルが完了し、2026年5月1日関係者によりお披露目とテープカットが執り行われました。築100年の木造駅舎は“真っ黄色”に塗られ、来訪者や近所の人々の度肝を抜き、関心を集めています。

【ライバルはピンク駅!?】パステルカラーの木造駅が「真っ黄色」になるまでの一部始終(写真25枚)

 滝宮駅は、高松築港と琴電琴平を結ぶ琴平線の主要駅で、学問の神である菅原道真公をまつる滝宮天満宮の最寄り駅です。建築年は1926年と古く、高松琴平電気鉄道の前身会社である琴平電鉄が同年に栗林公園から当駅まで開通させ、暫定的な終着駅として開業しました。

 琴平電鉄の初代社長が関西の私鉄駅舎を参考に、急勾配の屋根から突き出た三角の玄関庇を特徴とする当時としては奇抜なデザインを採用し、いまでは近代化産業遺産にも登録されている木造駅舎です。

 そんな駅舎に異変が起きたのは4月上旬のことでした。

「なんてことを」というタイトルで友人達から相次いで送られてきたメールでした。添付の写真には、足場が組まれた駅舎が徐々に黄色に塗られている様子が写っていました。この様子はSNSでも話題となっており、理由は分からないがとにかく黄色に塗られていることだけが拡散されていました。

 鉄道ファンからは、「由緒ある木造駅舎になんてことを……」「よりによって屋根まで黄色にしてしまうとは」と否定的な感想が多く、高校時代、3年間通学で使っていた筆者も複雑な心境でした。近所の方も「なんで黄色にしてしまうの」と首をかしげていたといいます。

 そして5月1日。関係者からの招きで訪れた滝宮駅舎は、青空に映える真っ黄色に塗られ、正面の玄関庇には当日朝に取り付けられたという「しあわせの黄色い駅舎」という看板が。筆者を含む2社の報道関係者とことでん関係者、近所の方々が集まり、ささやかな式典が執り行われました。

「駅舎真っ黄色事件」の内幕

 今回の駅舎リニューアルは、地元「綾歌郡ライオンズクラブ」と有志が駅舎塗装とトイレの改修等をことでんに申し入れて実現したものでした。

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「しあわせの黄色い駅舎」も村山さんの手作り看板(坪内政美撮影)。

 綾歌郡ライオンズクラブ会長の村山好治さんは、自身が子供のころから親しんできた町の玄関である滝宮駅が無人化し、塗装がはがれるなど老朽化した様子を見て「100年もなお、まちの顔として建ち続けている駅舎に失礼だし、もったいない」と思い立ちました。リフォーム会社を経営していたこともあり、1年ほど前から賛同してくれた有志と資金を集め、ことでんにリフォームの申し入れを行ったといいます。

 昨今、老朽化した木造駅舎は無人化や耐震性の問題、また固定資産税の対象となることなどの理由で取り壊す傾向にあるなか、なんとか地域の名駅舎は残したいという願いもあったといいます。では、なぜ真っ黄色になったのでしょうか。

 もともと琴平線の路線色が黄色であったことと、昔見た山田洋次監督、高倉 健主演の1977年松竹映画『幸福の黄色いハンカチ』から着想を得て奇抜な色にと、駅舎はレモンイエローを採用したと村山さんは胸を張ります。青空に映える色、そして駅が観光の起爆剤になればとの思いもあったそうです。

 駅舎以外にも、1番線裏の留置線の車止めや、雨漏りしていたトイレの屋根修復と塗装、さらに手すりの設置なども併せて施工されました。とくにトイレの手すりは、ある日トイレから「立てれん!」と叫び声が聞こえ、近くにいた村山さんが駆け付け、手助けした経緯があったため、リニューアルとともに施工したといいます。

 また「夜、酔って駅名が見えなくても、滝宮だと認識できて乗り過ごしのないようにせんといかん」と、1番線ホームの柱5本も5月中には黄色に塗りなおすつもりだそうです。

実は23年前にもあった滝宮駅「塗装炎上騒ぎ」

 前述したとおり、その奇抜ゆえに鉄道ファンや近隣の住民、SNS上でも賛否ある滝宮駅ですが、実は今回のような塗装による“炎上騒ぎ”は初めてではありません。

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「この一輪挿しも寄贈しました。駅には花があると雰囲気変わります」と村山さん(坪内政美撮影)。

 白地に水色とピンクのパステルカラーだった駅舎リニューアル前の塗装は、2003年に施されたもの。それまでは、1926年開業時からほぼ変わらない木造駅舎らしい木目を生かしたシックな色使いでしたが、イメージチェンジを図る狙いがありました。

 このころ、瓦町駅の駅ビルで展開していたコトデンそごうが、一連のそごうグループ破綻の余波を受けて閉店し、親会社であった高松琴平電鉄も民事再生法の適用を受け、経営再建の緒についたばかりでした。新経営陣が最初に取り組んだのが、自動券売機の設置を含む駅舎のイメージ改善だったのです。

 なお、滝宮駅と同様のイメージチェンジは志度線の琴電屋島駅、琴電志度駅、長尾線の長尾駅をはじめ元山駅、高田駅でも行われ、うち滝宮駅を含む琴電屋島駅、元山駅は2009年に近代化産業遺産に登録されています。

 滝宮駅が塗り直された当初は今回と同様、伝統を重んじる鉄道ファンや近隣から「派手すぎる」などの意見が飛び交い、元に戻すよう投書もあったそうですが、時とともに地域に親しまれる風景となっていました。

 今回の滝宮駅お披露目テープカットに駆け付けた高松琴平電気鉄道の鉄道本部長 藤本重信さんは「ライオンズクラブをはじめ地域の方々に感謝です。ことでんとしても他の単色系名駅舎をもつ鉄道会社とのコラボなどいろいろ考えていきたい」と今後の活用に前向きな姿勢をみせていました。

 近くでうどん喫茶を営んでいる方に聞いても「最初見たときは派手なことを……と思ったが、見ていくうちに、これはこれでかわいい駅になった」と目を細めていました。2回目になる「なんてことでしょう駅」は地域のランドマークとなるのでしょうか。

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