ほぼ無音で航行可能な次世代水上ドローン

 イタリアの造船大手フィンカンティエリは2026年4月20日、米国子会社であるFMG(フィンカンティエリ・マリン・グループ)を通じて、米セイルドローン(カリフォルニア州)が開発した新型の高速・多目的USV(無人水上艇)「スペクター(Spectre)」を建造すると発表しました。

【画像】巡航ミサイル「トマホーク」を撃つ姿をいろんなアングルから

「スペクター」は帆走機能を備え、対潜水艦戦をはじめとした任務に最適な「サイレント・エンデュランス」型と、コンテナ型のVLS(垂直発射装置)を搭載可能な「ステルス・ストライク」型、2つのバリエーションが用意されています。

 現在、アメリカ海軍は世界各地の紛争地帯に分散展開し、さまざまな作戦を遂行しています。一方で艦隊行動を支える建造・修繕能力は大きく低下しており、従来の有人艦や大型艦艇を用いた継続的な哨戒ができず、海上優位性が維持できない可能性が指摘されていました。

 こうしたギャップを費用対効果の高い方法で埋めるため、アメリカ海軍は長距離の自律航行が可能なUSVに着目しています。ミッションに合わせて、さまざまなペイロードを選択できるUSVを平時の海上プレゼンスの維持に投入することで、数が限られる有人艦を複雑な任務に専念させられるようにしています。

 こうしたアメリカ海軍の要求に沿って開発されたのがセイルドローンの「スペクター」です。船体サイズは全長約52m、排水量約250トン、最高速度は30ノット(約55.56km/h)を発揮できます。

 電気とディーゼルの複合推進システムを備え、最大12ノット(約22.2km/h)までほぼ無音の電気推進で航行が可能です。また、25tの装備を積載して25ノット(約46.3km/h)で巡航する場合、航続距離は最大で3280海里(約6075km)となっています。

 スクリュープロペラには可変ピッチ式を採用したことで、速度範囲の全域において効率のよい運用が可能になっており、曳航アレイや可変深度ソナーシステムなどをほぼ無音の状態で展開できます。

 ペイロードデッキには、40フィートコンテナ2個もしくは20フィートコンテナ5個を積むことができ、最大で70tの貨物や装備を積載可能です。また、同艦は任務に応じてさまざまな装備を搭載できます。

計画では2027年初頭に姿現すかも

 前述した2モデルのうち、「サイレント・エンデュランス」は、全長43mの複合材製硬翼翼(セイルドローンウイング)を搭載した、静粛型のUSVです。

ほぼ無音の電気推進を実現し、長時間の対潜水艦戦に必要な極めて長い航続距離と静粛な推進力を提供します。

無音で近付きズドン! 長射程ミサイルも撃てる「無人ステルス艦...の画像はこちら >>

硬翼帆を搭載した「サイレント・エンデュランス」(画像:セイルドローン)

 一方で硬翼帆を持たない「ステルス・ストライク」は、船体形状を低くすることで最高速度が向上しているほか、機密性の高い環境や紛争地域における探知される可能性を低減し、攻撃任務や電子戦といった攻撃的な任務にも対応可能なよう、最適化されているのが特徴です。

 また、「ステルス・ストライク」には巡航ミサイル「トマホーク」の発射が可能なコンテナ型の垂直発射装置(Mk70 VLS)も搭載できます。ちなみに、これに対応するため、セイルドローンとロッキード・マーティンは、2025年10月に戦略的パートナーシップを締結しました。

 フィンカンティエリは「スペクター」の建造において、米国子会社であるFMGが実証してきた「最先端アルミニウム船の量産ノウハウ」を活用するとしています。これにより、多目的な海上作戦に対応する次世代の自律型プラットフォームに対しても、効率的な量産手法(工業用造船プロセス)が導入されることになります。

 同艦の建造は、既存のインフラと高度な専門技術を持つ労働力を最大限に活かすため、ウィスコンシン州にあるフィンカンティエリの造船ヤードで行われ、2027年初頭には海上公試を実施する予定です。

編集部おすすめ