救急車が近づくと、不思議と赤信号が青に変わる……。実はこれ、単なる偶然ではなく「魔法の装置」が見えないところで動いています。
そもそも、一刻を争う救急現場において、最大の障害となるのが「渋滞」と「赤信号」です。これらをテクノロジーで緩和するために導入が進んでいるのが、「公共車両優先システム(PTPS)」と呼ばれる交通信号制御システムです。
このシステムの核となるのは、緊急車両や路線バスに搭載された「発光装置(車載機)」と、道路側に設置された「光学式車両感知器(光ビーコン)」です。
車両から発せられる特定の赤外線情報を道路上の感知器が受信すると、信号制御機(または交通管制センター)が進行方向の信号を「青に延長」したり、交差する方向の赤信号時間を調整したりする制御をリアルタイムで行います。
もともとは路線バスの定時運行を支援する目的で普及した技術ですが、そのノウハウを生かし、「現場急行支援システム(FAST)」として、救急車の現場到着時間や病院搬送時間の短縮を図る取り組みにも活用されるようになりました。
まさに、インフラが「命の道」を切り拓いているわけです。
とはいえ、信号を優先的に制御できるのなら、すべての交差点で実施すればいいようにも思えるかもしれません。そこには、都市全体の交通バランスを崩さないための「緻密な計算」と通信技術の限界に挑む、もう一つの課題がありました。
一秒を削り出す! 通信技術とAIが導き出す「最適な解」「ただ青に変えるだけ」では解決できない、交通管制の裏側に隠された高度な駆け引きとは一体どのようなものなのでしょうか。
前述したような信号制御が単なる「強硬手段」で終わらないのは、都市全体の交通流を考慮しているからです。
ひとつの交差点を無理やり青にすれば、当然ながら交差する道路では渋滞が発生します。
近年では、赤外線を用いる光学式だけでなく、700MHz帯の電波を利用した「路車間通信(V2I)」による、さらに高度な道路交通システム(ITS Connectなど)の実証・導入も進んでいます。
これにより、対応エリア内では見通しの悪い交差点の手前からでも信号情報や緊急車両接近情報をやり取りし、よりスムーズな「先行的な信号制御・注意喚起」が可能になりつつあります。
「救急車が赤信号で止まらない」という光景は、実は車両と道路が対話し続ける高度なIT技術の結晶です。私たちの知らないところで、一秒でも早く患者を届けるための「見えないバックアップ」が24時間稼働しています。
せわしなく街中を走っている救急車ですが、じつは「インフラという名の魔法」にも守られているのです。

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