横浜DeNAベイスターズ・山本祐大インタビュー(後編)
今やリーグを代表する捕手へと成長した横浜DeNAベイスターズの山本祐大。今季の目標は27年ぶりのリーグ制覇、そして2年連続日本一だ。
【グラウンドは傷つけあう場所ではない】
── よくキャッチャーは"忍耐"が大事だと言われます。山本選手は捕手として生きることについてまず何を思いますか。
山本 やっぱり"忍耐"って言葉が一番しっくりきますよね。苦しい状況でいかに我慢をできるか。あとはキャッチャーだからこそ楽しめることがいっぱいあるので、そこを今年は大事にしようと思っているんです。
── たとえばどういうことでしょうか。
山本 ピッチャーと会話をして相手を抑えるのはキャッチャーにしかできない仕事ですし、また監督から密接に指示を受けてプレーできるのも魅力ですよね。勝敗を左右するポジションですが、チームを操れるというのはキャッチャーの醍醐味だと思います。もちろん耐えなければいけない試合も多いですけど、あのヒリヒリとした緊張感を味わえるポジションですし、そこを楽しめたらなって思うんです。
── そのうえでチーム全体として高みを目指すわけですね。
山本 はい。
── チームの舵取り役として、昨年は調子の波を小さくすることに腐心したと以前おっしゃっていましたが、その点において今季はどのように考えていますか。
山本 やはり勝てない時期が続くとしんどいなと思うこともあるんですけど、それは別に僕だけじゃなくて、ほかの選手たちも真摯に考えているのはわかっているので、そういった意味では自分に入ってくるストレスは、昨年に比べるとすいぶん柔らかくなったように感じます。僕としてはしっかりとチームにフォーカスして、勝ちに導けるようにしていきたいですね。
── 山本選手は昨年9月、死球を受けて右腕を骨折しました。戦線離脱し、規定打席にも届かず、ポストシーズンも出場できませんでした。悔しい想いを抱きながらも、山本選手は「自分の精神力の甘さから出たケガ。自分をもっと俯瞰できればやりようがあった」とおっしゃっていましたが、その潔いマインドはどこから来ているのですか。
山本 うーん、そうですねえ......。まあ僕も何人かに当ててしまった経験がありますし、なので誰かのせいと思うのは違うなって。甘いと言われるかもしれないけど、あくまでもこれは野球というスポーツです。
もちろんグラウンドは戦場ではあるとは思っていますが、傷つけあう場所ではありません。純粋にプレー以外の部分で感情的になってしまうと、なんか野球が嫌いになってしまうようでイヤなんですよ。
── なるほど。
山本 とにかく僕は野球がうまくなりたい。野球をやっていくうえで、余計な感情は野球がうまくなる要素ではないと思っているので、僕はそれを意図的に排除している感じなんです。もちろん悔しいという思いはありましたよ。でも打たれても悔しいし、抑えられなくても悔しい。「くっそー」ってなることもありますが、そこでおしまいにして次に生かす。だから今は楽しくやっていますし、本当にプレーできていることに幸せを感じています。これからも自分をしっかりと俯瞰して、最後までやり抜きたいですね。
【来年開催のWBCを目指したい】
── シーズン前、昨年に引き続き侍ジャパンの強化試合に招集されました。山本選手にとって日本代表はどのような場所ですか。
山本 日本のトップチームでプレーできるのはすごく刺激になりますし、これ以上ない環境ですよね。いろいろなピッチャーのボールを受けながら、どうやって良さを引き出そうかと考えるだけでも、変な話「キャッチャーやってるな~」って感じで楽しかったですよ。
── 印象に残ったピッチャーはいましたか。
山本 どのピッチャーも特長があって面白かったんですけど、とくにオリックスの宮城(大弥)投手と西武の今井(達也)投手は強烈でしたね。彼らがどうして勝てるのか、わかっていても打てないボールってこういうことなんだって、いろんな発見がありました。得た情報をうちのチームにもフィードバックしたいと思いましたし、ふたりとは交流戦で戦うかもしれないので楽しみにしています。
── 気の早い話ですが、来年開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は意識していますか。
山本 はい。目指したいと思っています。だけど、まずシーズンを戦い抜くことが最優先。優勝を目指していて、それを達成するにはかなりの苦労があると思うのですが、そのしんどいところを経験していれば、世界で戦った時にも生かせるはずだと思っています。そういう意味でWBCは、このシーズンの先にしかないんだなって感じているので、まずはしっかりとシーズンを戦い抜きたいと思います。
── 名実ともにリーグを代表する捕手に成長した山本選手ですが、今季ソフトバンクから巨人に加入した経験豊富な甲斐拓也選手をどのように見ていますか。
山本 対戦機会も多くなりますし、めちゃくちゃいいキャッチャーなので勉強させてもらっています。対戦していても、こういう攻め方をするんだって思ったり、ブロッキングの精度も非常に高いので、負けたくないという気持ちよりもいろいろ盗みたいなと思っています。
── 27年ぶりのリーグ優勝をするためにも甲斐選手のいる巨人にも勝っていかなければいけません。山本選手としては、個人としてチームとして、どのようなシーズンにできたらと考えていますか。
山本 何度も言いますが、個人としては最後まで戦い抜きたい。チームとしては絶対に波があると思いますが、その波に抗い過ぎてしまうとしんどくなってしまうので、いい意味で波に乗っていきたいなって思っているんです。
── 調和しながら、いい波をとらえると。
山本 ええ。いや本当、抗えば抗うほど苦しさを感じていたので、決して気楽にという意味じゃないけど、切り替えをしっかりとして、なるようになると思いやっていきたいですね。
山本祐大(やまもと・ゆうだい)/1998年9月11日生まれ、大阪府出身。京都翔英高の3年夏に石原彪(楽天)とともに甲子園に出場。