東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆最終回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。同連載では、その育成の秘密に迫っていく――。

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第51回◆育成マニュアルがない東京Vのアカデミー コーチと選手「みんなでみんなを育てる」>>

 東京ヴェルディのユースチームは2025年、11年ぶりの高円宮杯U-18プレミアリーグEAST(以下、プレミアリーグ)に挑み、8位という結果に終わった。

 同チームの監督を務めた小笠原資暁(現トップチームコーチ)いわく、「(シーズンの)前半戦はもう少しカウンター(による攻撃)が多いゲーム展開だったが、(後半戦に入って)自分たちがしっかりボールを握るようになると、相手にしっかり(守備の)ブロックを作る時間を与えることになる。そこを崩しきりたかったけど、崩しきれなかった」。

 また、ボランチの下吉洸平によると、「なかなか勝てない試合が続くなかでも、自分たちがやりたいサッカーができている時間帯もあって、そういうところでは手応えはあったけど、結果がついてこなかった」。

 確かに、最後のもうひと押しは足りなかった。だが、裏を返せば、試合を重ねるごとに、より理想に近いサッカーができるようになってはいた。下吉が「自分たちは(プレミアリーグのなかでも)足元の技術は高いほうだと思う」と語るように、ヴェルディらしさは表現していた、とも言えるだろう。

(当時は)まだ高校2年生の下吉は、「(ヴェルディのサッカーらしい)楽しさにプラスして、強さっていうものも出していけたら、もっとヴェルディのカラーも出していけるかなって思います」と語り、「自分は今年(2025年)、結構試合に出させてもらったので、来年(2026年)は自分がチームを引っ張っていかなきゃなって思っています。チームを勝ちに導けるようにやっていきたい」と、早くも新シーズンへ視線を向けた。

 2014年以来の参戦となった高校生年代の最高峰リーグ。そこでの結果は、必ずしも納得できるものではなかったかもしれないが、それでもヴェルディユースにとっては、貴重な一歩を踏み出したシーズンとなったのではないだろうか。

 さかのぼること12年前――。

 ヴェルディユースがプレミアリーグで全10チーム中9位に終わり、プリンスリーグ関東に降格となった2014年、ユースチームを率いていた冨樫剛一(現横浜F・マリノスユース監督)はシーズン途中、トップチームの監督に就任している。

 トップチームがJ2で下位に低迷していたとはいえ、ユースチームもまた崖っぷちに立たされていたなかで、苦渋の内部昇格だった。

 冨樫は、「もちろん、(降格の)責任を感じていた」と言いつつも、「落としてしまったことよりも、(トップチーム監督就任から)その後の半年、自分が指導できなかったことに関して、ずっと悔いていました」と語る。

「ここから(ユースチームを)どう立て直してやろうかと思っていたところで、そのまま(自分は)トップへ行っちゃったし、(ユースチームの中心だった)三竿健斗(現鹿島アントラーズ)とかもトップのゲームに使ったりしたことで、(ユースチームは)すごく難しい状況になって、プレミアリーグから落ちてしまった」

 しかも、冨樫がプレミアリーグで指揮したシーズン後半は、「三菱養和に7点ぶち込まれて(1-7で)負けたりしていたのに、僕はそのままトップに行っちゃった」。その後悔は、大きかった。

 とはいえ、冨樫はクラブを離れて以降も、「早く(プレミアリーグに)上がれるといいなって思いつつ、それでもヴェルディの力が下がっているとは思われていないことに、少しホッとしていました」という。

「(監督として年代別日本)代表にいて、いろんな選手を見ている時も、(スタッフ会議に)必ずヴェルディの選手の名前が挙がってくる。だから、プリンスリーグを戦っていたとしても、ヴェルディのブランドが落ちているなって感じたことはなかった。

 もちろん、(プレミアリーグに)戻れたらなおいいなとは思っていたけれど、それでもヴェルディがいいクラブであることに変わりはないなって思っていました」

 2024年からは横浜F・マリノスのユースチーム監督に就任し、敵としてヴェルディと対戦したからこそ気づいたこともある。

「(2024年の)プリンスリーグでヴェルディと戦って、あらためて嫌なチームだなって思いました。ちょっとしたことをズラしてきたりとか、盤上で教えていないことが試合で起きるんですよね。

 その感覚は、(U-20日本)代表でアルゼンチンと対戦した時とよく似ていて、(当時のU-20アルゼンチン代表監督のハビエル・)マスチェラーノに、日本とアルゼンチンの違いは何かと尋ねた時、『個人戦術にちょっと差があるね』と。

それはヴェルディとやった時にもすごく印象に残ったことで、そこはあのクラブにおいて、ものすごく大事にしている部分なんじゃないかなって思います」

 一方、現在は客観的な視点に立つ菊原志郎(現FC今治U-12監督)も、「外から見ている人も、中にいる人も、『ヴェルディってこうだよね』っていう出来上がったイメージがあるんじゃないか」と言い、それが長年かかって作り上げられてきたものであることを実感する。

「僕らの時はコーチから、『白いTシャツを着てサッカーやっていても、ヴェルディってわかるようじゃなきゃダメだ』って言われていましたからね。だから、やっぱりコーチですよね。選手の一番身近にいるコーチたちが、そういうものを大事に受け継いできたことが、いい選手を継続して輩出してきた要因じゃないかなと思います」

 コンスタントにプロで活躍できる選手を育ててきたヴェルディユースが、プレミアリーグに復帰した2025年シーズンを振り返り、「あとはトップチームの躍進ですね。楽しみにしています」と菊原は言う。

 ヴェルディユースがクラブユースの顔だった時代を知る菊原は、「またアカデミーにいい選手がたくさん入ってくるようになるまでには、すごく時間がかかると思うんですけど」とつけ加えたうえで、こんな言葉に古巣への期待を込める。

「(トップチームは)本当に大変ななかで、魂のサッカーというか、すごく頑張っているなと思います。今後、さらに子どもたちがワクワクするような、魅力的ですばらしいプレーが増えてくるといいですね。それにともなって、アカデミーの子たちも、もっとトップで活躍するようになってくるのかなと思っています」

(文中敬称略/おわり)

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