4月26日、2年目の大同生命SVリーグに新たな女王が誕生した。チャンピオンシップファイナルで、SAGA久光スプリングスが昨季女王の大阪マーヴェラスを下し、その座に就いたのだ(セットカウント3-2、3-0で連勝)。
久光の荒木彩花(24歳)は、ミドルブロッカーとして攻守にわたり活躍し、勝利の殊勲者になっている。
「どんな私にも対応してくれる(セッター・栄)絵里香さんを、心の底から信頼しています」
優勝セレモニーを終え、記者会見に登壇した荒木は、そう言って左に座る栄の顔をのぞき込んだ。少しおどけた様子で、真意を伝える姿が彼女らしい。明朗なキャラクターだが、とても照れ屋だ。
「私を最大限に生かせるのは絵里香さんで、試合中、急に『これ、やりたいんですけど......』と、練習でやっていないことをお願いしても、絵里香さんは上げてくれる。そのトライが今シーズンは多くて、絵里香さんがピンポイントに持ってきてくれるから、"ブロックのここを通そう""指先のタッチアウトを狙おう"とできるようになった。おかげで引き出しが豊富になりました」
荒木は終始、セッターを称賛した。ミドルブロッカーという攻守の軸にある選手の資質だろうか。実直で共感や敬意の気持ちが強く、虚栄心などは削り取られていた。
今シーズンは、胸を張ってもいいほど、その活躍は目覚ましかった。たとえばレギュラーシーズンのアタック決定率は52.8%で、並みいる外国人選手たちを押しのけて1位。上がったトスをことごとく決めていた印象だ。チャンピオンシップファイナルでも連日、頼もしい存在だった。とくに1日目は"ミドルのバトル"という様相を呈するなか、身長198cmのサマンサ・フランシスを向こうに回しても一歩も引かず、クイックを打ち込まれたらブロックでやり返し、ブロックで阻まれたら、スパイクを打ち込んだ。
「やられたらやり返せ」
久光の中田久美監督の精神を最も体現した選手だった。
荒木本人が「得意ではない」と謙遜するブロード攻撃も有効だった。機動力を加えることで、高さを制した。ワンレッグでのブロード攻撃は相手の不意を突いたようで、ミドルとして戦いに適応し、最大限のダメージを与える攻撃は、荒木の真骨頂と言えるだろう。
【ケガのたびに立ち上がってきた】
「荒木とのコンビは、年々よくなってきました」
セッターの栄は荒木との連係についてこう語っている。
「シーズンを通して、荒木が『苦しい場面でも持ってきてください。絶対決めます』と自信を持って言ってくれるようになり、自分も託せるようになりました。どこからでも、どんなトスでも、彼女は(助走地点に)入ってくれるんです。上がらないかな、と思うようなところでも。それがレギュラーシーズン含め、攻撃バリエーションが増えた理由ですね。
久光は攻撃でマーヴェラスを凌駕したが、その土台には連係力があり、守備でも同じことが当てはまった。たとえば荒木がブロックでコースを切ることで、リベロの西村弥菜美はリーグトップのレシーブ力を見せ、チャンピオンシップではMVPに選ばれた。西村がボールを拾い、精度の高いパスを返すことで、荒木も勇躍。ブロックディフェンスが機能し、相互作用が生きた。
チームと融合していた荒木は、誰よりも覇気に満ちていた。1日目、フルセットになった状況では、最も激しく燃え立った。
「自分のなかでは、1、2、3、4セットはあまりいいプレーできていなかったので、"5セット目で取り返す"と思っていました。最後のチャンスと思うと、気合が入って。チームとしてもフルセットに強いところ(を出し)、みんなの間でもギアが上がり、全員がやるべきところをできたセットでした」
最後のセットでは、荒木はクイック、ブロード、ブロックで得点し、追いすがるマーヴェラスに絶望を与えている。
<チームを勝たせられる選手になりたい>
彼女はそう志してシーズンに挑み、見事に結実させている。本人は謙遜するだろうが、日本最高のミドルブロッカーにふさわしいシーズンを過ごしたと言っていい。プロ6年目で初のリーグ優勝だ。
2020年に久光に入団した荒木は、誰よりも"練習の虫"で、チームメイトが目を丸くするほどだった。限界以上に自分を追い込んできたからこそ、ケガも多くなったと言われる。2021年に右膝外側半月板を損傷した後、2023年には右足首靭帯を損傷。2024年には左手を骨折した。それぞれ復帰まで数カ月から1年かかる大ケガだった。
そのたびに立ち上がってきた彼女は不屈だ。
昨年のインタビューで、荒木はこう明かしていた。
「足首のケガはパリオリンピック予選前で精神的にしんどかったです。膝もそうですが、足首はジャンプに影響するので時間がかかって......。左膝も手術し、十分に両足が使えない状態でした。復帰しても高さが出ず、感覚が戻るのに1年以上かかり......ケガでつらくて、バレーから離れようと思った時期もあります。でも、『今だけの感情』と踏みとどまれました。
そんな生き方が結実したのが、SVリーグ女王の称号だったのかもしれない。
優勝後、壇上でチームメイトたちと並ぶ荒木は無邪気で、喜びに満ちていた。少し照れたようにカメラに向かってポーズを決めた。慈愛深く、まばゆい姿だった。



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