上半期の女王決定戦となるGⅠヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)が5月17日に行なわれる。

 同レースに向けて重要な前哨戦となっているのが、GⅡ阪神牝馬S(阪神・芝1600m)だ。

実際、過去10年の結果を振り返ってみると、阪神牝馬S組が4勝を挙げ、2着に3回、3着に5回も入っている。

 そして今年、その注目の阪神牝馬S(4月11日)を制したのが、1番人気のエンブロイダリー(牝4歳)。昨年のGⅠ桜花賞(阪神・芝1600m)、GⅠ秋華賞(京都・芝2000m)で戴冠を遂げた二冠牝馬だ。

 阪神牝馬Sでは、2走前の海外GⅠ香港マイル(11着。12月14日/シャティン・芝1600m)からプラス14kgとやや余裕残しの仕上げだったが、スタートして無理なく先手を奪うと、リズムよくレースを進めた。直線半ばで後続を突き放し、最後はオークス馬カムニャック(牝4歳)の追撃も封じて鮮やかな勝利を飾った。

 昨年の3歳女王が古馬になって、最も重要視されている前哨戦を快勝した――となれば、本番のヴィクトリアマイルでも断然の人気になることは間違いない。

【競馬予想】ヴィクトリアマイル、二冠牝馬エンブロイダリーは本...の画像はこちら >>
 だが、古馬牝馬の頂上決戦となるヴィクトリアマイルにおいて、エンブロイダリーは本当に「テッパン」と言える存在なのだろうか。関西の競馬専門紙記者はこんな見解を示す。

「前走の阪神牝馬Sは、いろいろなことに恵まれたレースでしたね。頭数がそこまで多くなく(10頭立て)、ハナに立ったあとも他馬に絡まれることなく、スローな流れに持ち込むことができました。エンブロイダリーにとって、"勝ってください"というレースでした。

 しかしながら、最後はクビ差まで迫られた。あのレースを見て、次のヴィクトリアマイルは決して"ラクではない"と思いました」

 この阪神牝馬Sにおけるクビ差辛勝の理由について、専門紙記者はエンブロイダリーの距離適性にあると見ている。桜花賞馬ゆえ、マイルは当然守備範囲だが、本質はもう少し長いところ、2000m前後の距離にあると捉えているからだ。

 それを示すのが、昨秋の秋華賞。同レースでエンブロイダリーは、向正面で進出して逃げるエリカエクスプレスの直後につけた。直線に入ってからエリカエクスプレスが突き放しにかかるが、残り200mを切ってからエンブロイダリーが一完歩ごとに差をつめて、ゴール直前できっちりと捕らえた。

「このレースこそ、エンブロイダリーのベストパフォーマンス」と専門紙記者。つまり、同馬の適性は2000m前後の距離にあって、「マイル戦は少し短い」と言う。それが、阪神牝馬Sにおける辛勝の要因であり、「そもそものポテンシャルの高さでカバーした」勝利にすぎないと考えている。

 しかも、今度は同じマイル戦でも舞台が替わる。阪神コースとは求められるものが異なるため、専門紙記者は「(ヴィクトリアマイルを勝つのは)"ラクではない"」と言っているのだ。

「エンブロイダリーのストロングポイントは、まずいい脚を長く使えること。

要するに、スピードの持続力がある、ということです。次に、並んだら抜かせない勝負根性としぶとさ。阪神牝馬Sでは、その長所が存分に生かされたと思います。

 ですが、ヴィクトリアマイルの舞台は東京。同じマイル戦でも阪神コースとは求められるものが違って、いい脚を長く使えることや、しぶとさなどはそこまで強みにはなりません。最も要求されるのは、阪神とは正反対とも言える"軽さ"。言い換えれば、マイラー特有のスピードとキレです。

 ポイントとなるのは、スパッとキレる脚が使えるかどうか。レースの走破時計と上がりタイムが極端に速くなった場合、本質的にはマイラーとは言えないエンブロイダリーがそれに対応できるかどうか、不安があります」

 今週末の天気も好天が予想され、時計的にはかなり速くなりそう。前週の3歳馬によるGⅠNHKマイルCの勝ち時計が1分31秒5。古馬牝馬の争いとなれば、1分30秒台の決着となっても不思議ではない。

 はたして、エンブロイダリーはそれほどの高速レースに対応できるのだろうか。

 また、エンブロイダリーはレース間隔を空けて使ったほうがいいタイプながら、今回は初めて中4週と詰まった間隔での臨戦となる。さらに、過去4頭の勝ち馬がいる阪神牝馬S組だが、勝ち馬が栄冠を手にしたことは一度もない。懸念材料は増すばかりだ。

 とはいえ、能力の高さと現在の充実ぶりは、現役牝馬トップクラス。鞍上を務めるのが、名手クリストフ・ルメール騎手というのも心強い限りだ。

 昨年、3歳牝馬の頂点に立ったエンブロイダリーは、現役牝馬の女王の座に就くことができるのか。決戦まで、まもなくである。

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