2026年ワールドカップを戦う26人のメンバーが以下のように発表された。

GK
早川友基(鹿島アントラーズ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、鈴木彩艶(パルマ)

DF
長友佑都FC東京)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、渡辺剛(フェイエノールト)、板倉滉(アヤックス)、冨安健洋(アヤックス)、伊藤洋輝(バイエルン)、菅原由勢(ブレーメン)、瀬古歩夢(ル・アーヴル)、鈴木淳之介(コペンハーゲン)

MF/FW
遠藤航(リバプール)、伊東純也(ヘンク)、鎌田大地(クリスタル・パレス)、前田大然(セルティック)、小川航基(NEC)、田中碧(リーズ)、上田綺世(フェイエノールト)、堂安律(フランクフルト)、佐野海舟(マインツ)、中村敬斗(スタッド・ランス)、鈴木唯人(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)、塩貝健人(ヴォルフスブルク)、後藤啓介(シント・トロイデン)

サッカー日本代表はこの26人でトーナメントを戦えるのか コン...の画像はこちら >>
 前回カタール大会から導入された登録メンバー26人枠&交代枠5人制。
23人枠、3人交代制で行なわれたそれまでの20年間(1998年フランス大会~2018年ロシア大会)と比較すると、サッカー競技の本質に影響を与える大変革に見えた。選手交代2人の時代を知る者にとってはとりわけだ。

 26人枠&5人交代制に戦術的交代や布陣変更を絡めれば、開始直後と終了間際で別のチームになったかのように大変身できる。ワールドカップのような短期集中トーナメントでは特に効力を発揮する。そのために不可欠になるのが選手個々の多機能性だ。その数が多ければ多いほど選択肢は増える。監督はアイデアを発揮しやすくなる。26人のなかでGKを除くフィールドプレーヤー23人が何ポジションをカバーできるか。その数がアイデアの源になる。

【ウイングができないCF】

 初めて3人交代制で行なわれた1998年フランス大会。優勝したのはフランスだったが、欧州の各メディアから最も先進的なサッカーをしたと称賛されたチームはフース・ヒディンク率いるオランダだった。戦術的交代を学ぶうえで、教科書とすべきサッカーである。

 そこで最も多機能性を発揮し、脚光を浴びた選手がフィリップ・コクーだった。

最終ラインから最前線まで4-2-3-1上の4つのポジションを次々に移動する姿は、当時のサッカーにおいては斬新かつ衝撃的だった。

 フランス大会といえば、日本がワールドカップに初出場した大会だ。それから28年。戦術的交代は当たり前の戦術として浸透した。選手の多機能性も可能な限り追求されている。

 昨季、ワールドカップの組み替え戦と言われるチャンピオンズリーグ(CL)を制し、今季も決勝進出を果たしているパリ・サンジェルマンに至っては、前線は右も左も真ん中も、どこでもこなすアタッカーで占められている。代表的な選手は昨季のバロンドール受賞者、ウスマン・デンベレ(フランス)だが、いまの日本代表のサッカーにその手の魅力は存在しない。

 ウイング兼ストライカーは、発表された26人のなかにはいない。ウイングはウイングしかできない。センターフォワード(CF)候補は真ん中しかできない。例外はせいぜい前田に限られる。この非多機能性に、日本サッカーの問題を見る気がする。

選手に問題があるのか、育成に問題があるのか。

 CF候補の上田、小川、後藤、塩貝。後者のふたりはボーダーラインの選手だったに違いない。三笘薫が外れていなければ、どちらかは選ばれなかった可能性が高い。とはいえ20歳と21歳の若手だ。化ける可能性は秘めている。そこに賭けたくなる気持ちはわかる。しかし、この時代における今日的なプレーヤーには見えない。

 身長191cmの後藤は高さが売りだ。足元もその割にうまい。そこは認めるが、相手を縦に抜き去るドリブル、フェイントはない。よって、サイドに出た時に芸がなくなる。

一方、180cmの塩貝はスピードと力強さを武器にするが、サイドで相手のサイドバックをかわす技巧がない。ポジションの適性がサイドにないことが明らかである。

【選手の多機能性から目を背けてきた】

 最近、頭角を現した若手であるにもかかわらず、非多機能的だ。今日的とは言い難いプレーをする。それが関係者の間で日本サッカーの課題として取り沙汰されないことも問題だ。   

 森保一監督もそのひとり。8年間、代表監督の椅子に座りながら、選手を所属クラブと異なるポジションで起用した試しはほとんどない。短期集中トーナメントにおける戦術的交代の重要性を理解していないと考えるほうが自然か。

 長友、遠藤、板倉、冨安、鈴木唯人と、選ばれた26人のなかには、コンディションの不確かな選手も含まれている。26人は実際には23人分ぐらいである可能性がある。そのうえ多機能性の高い選手がいないとなれば、それは決勝トーナメントを勝ち抜く体力がないことを意味するも同然だ。優勝が聞いて呆れる。

4試合が精一杯。これまでの代表と何ら変わらない。26人の顔ぶれを見て、「今回は違う。行けそうだ!」という高揚した気分にはまったくならないのである。

 26人の顔ぶれを見て人数的に心配になるのが守備的MFだ。遠藤、田中、佐野。この3人に鎌田を加えても4人だ。一方、過剰に見えるのがCBだ。谷口、板倉、渡辺、冨安、伊藤、瀬古、鈴木と7人もいる(長友も復帰後の代表では左CBでしかプレーしていない)。3バックなので多少増えるのはやむを得ないとしても、バランス的に重すぎる。

 森保監督の"色"をここに見る気がする。後ろで守る守備的サッカーを好む指導者であることが透けて見える。

伊藤と鈴木は何とかウイングバックもこなせそうだが、あくまでも「何とか」だ。冨安も含めて4バックのSBのほうが適している。

 板倉、冨安、伊藤は元MFでもある。なぜこれまで、その可能性を追求しようとしなかったのか。逆に遠藤は、所属のリバプールでは幾度もCBとしてプレーしている。最終メンバーから外れた守田英正にしても、川崎フロンターレでは右SBとしてプレーした経験がある。

 各選手が備える多機能性に、森保監督はなぜ目を背けてきたのか。1998年のオランダのような、戦術的な交代が鮮やかに決まったいいサッカーを見たことがないからではないか。ワールドカップやユーロ、CLのそれぞれの最終盤を戦うチームが、そこまでどんなやりくりをしながら勝ち上がってきたか。それを知らずしてトーナメントは勝ち上がれない。

 せいぜい4試合で終わりそうな26人に見えて仕方がない。何より描いている絵に貧しさを覚える。

その26人が30人以上に見えるサッカー。アイデア満載のサッカーでなければ優勝は夢の夢だ。優勝を口にする前に、やるべきこと、学ぶべきことは山のようにある。もっと夢を抱ける26人を選んでほしかった。

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