文字どおり「青天の霹靂」だった。5月9日のプレミアリーグ第36節、初夏の陽が差し込むアメックス・スタジアムで、三笘薫を襲ったケガの不運。
ホームにウォルヴァーハンプトン(ウルヴズ)を迎えたブライトンは、すでに降格が決まっているリーグ最下位を相手に、プレミアリーグでは珍しい楽勝を収めた(3-0)。開始38秒で奪った先制点には、三笘もアシストのアシストで絡んでいた。
ところが、後半10分過ぎのピッチ上には、手で顔を覆って横たわる日本代表MFの姿が。三笘は、左サイドを駆け上がりながらロングパスを右肩でトラップした直後、減速して左手で太ももの付け根付近を押さえ、右手を挙げてベンチに交代の合図を送って倒れ込んだ。13分、自力で起き上がりはしたものの、左足を引きずるようにトンネルへと消えた。
試合後、快勝における唯一のマイナス要素について尋ねられたファビアン・ヒュルツェラー監督は、「軽傷とは思えなかったが、私は前向きなタイプ。検査結果を待ちたい」と述べた。「ハムストリングのケガのように見えましたが?」と訊いてみると、「間違いなさそうだが、検査結果を待とうじゃないか」との返答だった。
7位で第36節を終えたブライトンは、欧州3大会のなかでも、今季はプレミア上位5チームが切符を手にするチャンピオンズリーグ(CL)への初出場がかなう可能性を残している。同節終了時点で5位のアストン・ヴィラとは6ポイント差。並べば、「10」対「4」で上回る得失点差がものを言う。先決となるのは残る2戦で2勝すること。17日の次節は15位のリーズ戦。三笘が左足首のケガで2カ月間戦列を離れていた今季前半戦で勝利(3-0)している下位戦だ。敵は復帰1年目でのプレミア残留が決まり、もはや具体的な目標を持たないとも言える。しかし最終節マンチェスター・ユナイテッド戦は、最大目標のCL復帰を決めている強豪との一戦。敗れた前回の対戦(2-4)は欠場中だった三笘の力を借りたいところだ。
【「練習では入らないんですけど......」】
当人も、「可能性がある限りチャレンジしないと」と、CL出場枠争いへの意気込みを語っていた。これは、前回のホームゲームにあたる4月21日のチェルシー戦(3-0)後のことである。「今日のような試合ができれば、自信を持ってできれば全然、勝つ確率は高い」と言っていた三笘自身、調子と自信が上向いていると理解できる一戦だった。
最たる例が、ボックス内でのリフティングからボレーを放った後半17分のシュートシーン。拾ったクリアボールを浮かせて敵をかわすと、落ちてきたボールをティーアップして右足で合わせた。ボールは惜しくも枠を外れたが、ドリブルだけではなく、タッチのうまさでも知られる名手が魅せた一場面だった。
三笘は、右足ボレーで先制点のきっかけも作っていた。相手GKロベルト・サンチェスに反応鋭く弾き出されてしまったものの、逆サイドからのクロスを予期してするすると自らのニアポストへと動き、正確に捉えていた。
その3日前の、利き足ではない左足でボレーを叩き込んだトッテナム戦(2-2)でのゴールに質問が及ぶと、「練習では入らないんですけど、試合で入った感じです」と言って日本人記者たちを笑わせてくれたあたりも、心身両面での復調ぶりを思わせた。
その左足ボレーを、「何度観ても飽きない。月間最優秀は当然よね」と言っていたのは、いつも、記者席のあるスタンド上階への通用口にいる女性スタッフだった。ウルヴズ戦の試合前のお喋りだったのだが、三笘の一撃は、BBCテレビ『マッチ・オブ・ザ・デー』で4月のベストゴールに選ばれていた。
「今日も楽しみ!」と微笑む彼女に、「また後ほど」と言って席に着くと、三笘は、前半早々から期待を裏切らないプレーを見せてくれた。ドリブルで中央を上がり、ボディチェックを受けてバランスを崩しながらも、オーバーラップした左ウイングバック、マキシム・デ・カイペルに優しいパスを送って先制アシストにつなげている。そのあとも、完璧なファーストタッチにはホームの観衆から拍手や感嘆の声が起こり、ボックス内で素早くシュートに持ち込んだり、クリアボールからミドルを狙うなど、自らも積極的に狙っていた。
【他国への「圧」はワールドクラス級】
しかし、残酷にも負傷交代という結末が待ち受けていた。
約1カ月後にワールドカップを戦い始める日本代表にとっては、より大きな打撃だろう。スーパーサブ的な活躍でインパクトを残した前回大会から4年、今夏の三笘にはエース級の活躍が期待されていた。
森保ジャパンはいい意味で"替えが利く"、ハイレベルな戦力が揃うチームに仕上がってきた感がある。ただし、三笘はその唯一の例外に最も近い存在である。戦術が浸透し、組織として円滑に機能するチームではあるが、優勝の大目標を掲げてワールドカップ決勝トーナメントを勝ち上がる過程では、独力で違いを生める「個」の威力が必要になる時が訪れると思われる。
英国のラジオ『トークスポーツ』のイアン・エイブラハムズ実況担当から、「正直、日本はどこまで行けると思う?」と訊かれたのは、5月7日のセルハースト・パークでのこと。クリスタル・パレスが、カンファレンスリーグ決勝進出を決める試合前だったのだが、"ムース"の愛称で知られる彼の口からは、「ミトマやカマダがいるのはわかっているけど」と、当日のスタメンに名を連ねていた鎌田大地よりも先に、三笘の名が挙がった。
純プレミア級の評価を得ている日本人フットボーラーのなかでも、3月末のウェンブリー・スタジアムで、テストマッチとはいえ、イングランドから勝敗を分ける1点を奪ったことにより、三笘の印象はより強烈になっているのだろう。
ウェンブリーでの代表戦後に話をしたヘンリー・ウィンター記者も「とにかくミトマは気に入っている」と言い、総じて出来のよかった日本勢のなかでも、3-4-2-1システムのシャドー役で先発した、ブライトンの左ウインガーを別格視していた。イングランドでバロンドールの投票権を持つ重鎮記者のお眼鏡にも適う三笘が、ワールドカップに出場する他国に与える「圧」は、ワールドクラス級とさえ言えるのではないか。大舞台での本領発揮に向け、コンディションも整ってきたはずだった。
前出のセルハースト・パークでの会話で、筆者は「初のベスト8入りは現実味があると思っている」と答えた。もしもその翌々日に三笘のハムストリングが悲鳴を上げたアメックス・スタジアムで同じ質問を受けていたとしたら......。
だが、ここで周囲が弱気になってはいけない。
そして、三笘の出場の有無にかかわらず、日本にとって8大会連続となる今夏の北中米大会が、チームとしての「進化」と「真価」を示すべきワールドカップであることにも変わりはないのだ。

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