セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(35)
連日熱戦の続く北中米ワールドカップ。サッカー日本代表は危なげない戦いぶりで、グループステージを1勝2分けの2位で通過した。
【本当の力が試されるのはこれから】
決勝トーナメントに向けて、気持ちを引き締めることができたと思えば悪くない。
グループステージ3戦目のスウェーデン戦、日本は1-1の引き分けでグループ2位通過を決めた。負けても3位通過が濃厚だったので、精神的な余裕はあったはず。ただ、試合内容は本当に危なかった。終盤は一方的に攻め込まれた。よく引き分けに持ち込んだなという印象だ。
両国に力の差はほとんどないと思う。でも、この試合ではスウェーデンのほうが勝利への意識が強く、自分たちの強みを押し出してきた。高さで上回る彼らは、日本のプレスを回避するためにロングボールを蹴ってきた。その狙いは当然、日本の選手たちもわかっているのだけど、手を焼いた。特にトップのヴィクトル・ギェケレシュは、うまさはないものの、しっかりとボールをキープして攻撃の軸になっていたね。さすがだよ。
一方の日本は、先制点は見事だった。スピードを生かしてゴールを決めた前田大然はもちろん、アシストをした堂安律の動きもすばらしかった。ただ、同点に追いつかれてからは疲れも見え、また、森保一監督の采配も効果的ではなかった。攻撃よりも守備を優先したからこそDFの渡辺剛や長友佑都を投入したのだろうけど、流れを変えられず、さらに押し込まれた。好セーブを何度も見せたGK鈴木彩艶がいなければ負けていただろう。
グループステージ3試合を振り返ると、初戦は強いオランダに追いついて引き分け(2-2)、2戦目は内紛状態でボロボロのチュニジアに圧勝(4-0)、そして、3戦目はスウェーデン相手に守って守って引き分け。結局、グループで一番弱いチュニジアに勝っただけで、強い相手には勝てなかった。
今回から出場国が32から48に増え、グループステージでは大味な試合が増えた。波乱は少なく、リオネル・メッシもクリスティアーノ・ロナウドも弱い相手に得点を荒稼ぎしている。また、グループ3位でも決勝トーナメントに進めるようになった。日本のグループ2位という成績には一定の評価をすべきだけど、騒ぐほどではない。
むしろ、スウェーデン戦後に日本の選手やスタッフたちが喜んでいる姿を観て、強豪国とはまだ差があるなと感じた。
【階段は一歩ずつ上るもの】
ただ、最初にも言ったけど、決勝トーナメントに向けて、スウェーデン戦はいいクスリになった。オランダに引き分けて、チュニジアに快勝して、選手もファンもこれでいけると思った部分があったかもしれない。メディアも「優勝だ」と煽るしね。
チームを引き締める意味で、ここでスウェーデンに引き分けたのは悪くないよ。もう一度、自分たちはチャレンジャーであることを意識してくれればいい。
あらためて、このチームが目指すのは優勝じゃないと思う。過去最高のベスト8を達成できれば万々歳だ。僕は今年、森保監督と食事をした時にこう伝えている。「優勝できたら、それに越したことはない。でも、ベスト8もとても名誉なことだよ」とね。
ちなみにその時、僕は森保監督に日光東照宮のお守りをふたつ渡した。前回のカタール大会前にも同じものをふたつ渡したのだけど、ドイツ、スペインに勝って2勝してくれた。験を担いで今回もふたつ渡したけど、ひとつでも多く勝ってくれるといい。期待したいね。
階段は一段ずつ上るもの。一番上ばかり見ていると、足を踏み外してしまう。だから足元を見て、一段ずつ着実に上るべき。森保監督も選手たちも、目の前の試合に集中して上を目指してほしい。
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