地方大会で見つけた「来年の主役候補」逸材探索の旅(前編)

「この夏も 2年をおもに 見てました」 詠み人知らず

 それが、私の「夏」である。そうなったのは、もう20年以上も前のことで、私のなかでは今やすっかり「夏の風物詩」のようになっている。

 高校野球の夏は、3年生にとって言うまでもなく最後の大会だ。そのプレーは「大人」のように練度が高く、舌を巻くほどうまい。3年間という長い時間をかけて体に刷り込んできた技量には、まったく頭が下がる思いだ。

 一方で、2年生の夏のプレーはフレッシュだ。技術的には「これから勉強!」という未完成な部分を残しながら、目いっぱい、思いきりよく、向かってくる白球と大胆に渡り合っている。

 夏が終われば、早いチームでは翌日から「新チーム」が始動する。夏時点でのスキルと、秋以降の伸びしろを同時に感じられる。そこが2年生の何よりの魅力で、夏の私はどうしても彼らに引っ張られてしまう。今年は、首都圏を中心に、群馬、長野、静岡と見てきた──。

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【メジャーも注目する帝京のスラッガー】

 まずは、東京から見てみよう。

目代龍之介(帝京/外野手/187センチ・96キロ/右投右打)

 東京を代表する右のスラッガーだ。雄大な体躯を持ちながら、50メートルを6秒フラットで走る。青森県の根城中時代は陸上部に所属し、100メートル走では11秒8を記録し、砲丸投げでは青森県1位になるなど、県内トップクラスを誇った、高い身体能力と運動神経の持ち主だ。

投手として最速150キロを計測する強肩も魅力だ。すでにメジャーのスカウトも注目しており、もし許されるなら、今年のドラフトでも喜んで上位指名する球団がありそうな「超」のつく逸材だ。

小寺蓮人(修徳/外野手/182センチ・80キロ/右投右打)

 こちらも高校通算20本塁打以上を誇る右の大砲。快打が左方向へ偏る傾向はあるが、タイミングを外されたカーブを中堅後方まで運べる「とっさ力」もある。いずれはヒットゾーンも広がっていくだろう。一塁までの駆け抜けは「4秒18」。右打者なら4秒3を切れば俊足と言われるなか、この夏、走れる魅力も確かめた。

鈴木陸央(日大鶴ケ丘/内野手/181センチ・86キロ/右投右打)

 アメリカ人の父を持ち、とにかくガタイがすごく、「日鶴のジャッジ」の異名を持つ。今夏の西東京大会初戦では、2回に左中間へ適時二塁打を放ち、メジャーのスカウトが見守る前でチームの勝利に貢献した。試合前は遊撃でシートノックを受けたが、試合では「DH」で出場。中学まで外野手だっただけに、内野手としての捕球技術にさらに磨きをかけ、高校からのプロ入りを目指す。

渡辺壮祐(駒場学園/投手/191センチ・88キロ/右投右打)

 キャッチボールでは投手として肩をつくっていたが、試合では「5番・DH」で起用された。

緩いカーブを目いっぱい引きつけ、鋭くサッと振り抜いたピッチャー返しの猛烈なライナー。投手の好捕に阻まれたものの、見る者の目を引いた。次の打席でもしっかり捉え、バックスクリーン手前まで運んだ。聞けば、昨秋も今春も公式戦でとんでもない大アーチを飛ばしているとか。こういう選手は、やっぱり現場に出かけてみなくちゃわからない。

友悠人(世田谷学園/投手/182センチ・81キロ/右投右打)

 優勝候補の日大三を相手に先発し、4イニングを4安打1失点。3回のピンチでは、プロ注目の大砲・田中諒(3年)を内角の速球でどん詰まりの遊ゴロに打ち取った。その熱投には、思わず「お見事!」と、小さく声を漏らしてしまったものだ。カットボールにカーブを交えながら、打席の相手が強敵であればあるほど、猛烈な腕の振りで闘いを挑んでいくファイティングスピリット。それ自体が、何よりの伸びしろであり、将来性だろう。

高橋友朔(関東第一/投手/181センチ・85キロ/右投右打)

 2年生なのに、投手に必要な「勝てる要素」がもうでき上がっている。テイクバックの大きさと縦軌道の腕の振り、そのバランスが絶妙だ。

安心して見ていられる投球フォームから、7、8分の力感でストライク先行。それでも、コンスタントに140キロ前半をキープできる秘めたパワーがある。持ち球のカーブ、縦のスライダーにフォークもしっかり試し、ストレートはかすらせもしない。夏の甲子園ではわずか1イニングの登板に終わったが、まだまだ見たい投手のひとりだ。

柴崎壮佑(関東第一/捕手/174センチ・80キロ/右投左打)

 どう見ても捕手にしか見えない、どっしりした腰回り。それとは対照的に、足首はキュッと引き締まっている。強靱なバネを想起させる、メリハリの利いた下半身のシルエットだ。三塁前に打球を殺したセーフティーバントから、ゴムまりのように弾んで一塁へ突進。3秒87で駆け抜けた。左打者なら3秒9を切れば俊足と言われる。健脚も大きな魅力だ。

吉澤奏佑(東海大菅生/内野手/170センチ・72キロ/右投右打)

 夏のショートは、みんなうまい。

フィールディングで光った2年生遊撃手は何人もいたが、ひとりに絞るのであれば、この選手だろう。一見平凡に見える打球処理も、難しい打球へのスーパーフィールディングも、同じように丁寧に、涼しい顔でやってのける。その姿は、高校の先輩である田中幹也(亜細亜大−中日)を彷彿とさせる。

佐原丈慈(安田学園/投手/178センチ・85キロ/右投右打)

 昨夏の東東京大会では、1年生ながら「1番・遊撃」で出場していた。1年生とは思えない強肩と、インパクトの瞬発力に優れたバッティング。この夏、必ず見に行こうと思っていた2年生のひとりだったが、私が見に行く予定だった試合のひとつ前で安田学園が敗退してしまった。今秋こそ、真っ先に見たい選手のひとりだ。

【打倒・横浜を誓う桐光学園、慶應の左打者】

 続いて神奈川だ。夏の甲子園で4強入りした横浜には、川上慧、田島陽翔の内野手コンビ、150キロ左腕の小林鉄三郎ら、世代のなかでも突出した選手がいる。ただ、彼らは甲子園でも大いに注目を浴びたことだし、ここではあえて外させてもらう。

周東希虎(桐光学園/内野手/173センチ・83キロ/右投左打)

 内角の厳しいコースに来た140キロ前後の速球を芯で捉えて引っ張り、あっという間にライトフェンスまで持っていってしまう。バットコントロールとパワーは、高校生レベルをはるかに超えている。

今夏の鎌倉学園戦では、左腕のクロスファイアを左翼ポール下のフェンスに直撃させた。あんな打ち方をされたら、サウスポーはお手上げだろう。

湯本琢心(慶應義塾/外野手兼投手/179センチ・78キロ/右投左打)

 懐を深くつくり、「さあ、どこでも来い!」とばかりにバットを構えた姿には、「剣豪」のような隙のなさがある。マウンドで向き合った者が、「どこへ投げてもやられる」と投げる前からひるんでしまいそうな怖さだ。雄大な放物線が右翼スタンドの上空で見えなくなったこともある。タイミングが合えばどこまで飛ばすのかと思うほどの長距離砲だが、一方でバットを操るハンドリングも実に器用。器用すぎて、ファウルにしたい当たりまでフェアになってしまうのが、なんとももったいない。

 そして千葉には、プロの血統を持つ選手がいた。

石塚太惺(八千代松陰/内野手/173センチ・73キロ/右投右打)

 2024年ドラフト1位で花咲徳栄(埼玉)から巨人に入団した石塚裕惺の弟だ。兄はクリーンアップが似合う大型遊撃手だったが、弟は八千代松陰の先輩である長岡秀樹のようなタイプ。これだけ安心して見ていられるフィールディングを展開できる2年生遊撃手も、なかなかいないだろう。オーバースイングを打席の途中で修正しながら快打につなげる打撃センスも光る。

あとは、インパクトの瞬発力か。

 2年生だけで、これだけの注目選手がいる。レベルの高さをあらためて実感しながら、私は次なる目的地へと向かった。

つづく>>

安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe

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