武田一浩が語る村上宗隆とホワイトソックスの快進撃 後編

(前編:村上宗隆には「100点をつけてもいい」と武田一浩が評価する理由 打率は2割そこそこでも貢献度大>>)

 前年まで3年連続でシーズン100敗以上を喫していたシカゴ・ホワイトソックス。しかし今季は一転、新加入の村上宗隆の活躍や若手選手たちの台頭もあり、2位のクリーブランド・ガーディアンズに3ゲーム差(現地時間9月1日時点。

以下同)をつけ、ア・リーグ中地区首位を走っている。

 なぜ、ここまで勝てるチームになったのか。また、残りの試合をどう戦えば地区優勝に届くのかを武田一浩氏に聞いた。

【MLB】武田一浩から見たホワイトソックスは「伸びしろがある...の画像はこちら >>

【同年代のプロスペクトがもたらした勢い】

――ここまで勝てるチームになることを予想していましたか?

武田一浩(以下:武田) まったく予想していませんでしたし、また100敗するんじゃないかと思っていました。アンソニー・ケイ(元横浜DeNAベイスターズ)を獲得したりと、できる範囲で補強はしているんだなとは思っていましたけどね。

 何よりも、プロスペクトが一斉に台頭してきたのが大きいです。チェース・マイドロス(25歳)やサム・アントナッチ(23歳)は打率.270くらい打っていますし、ミゲル・バルガス(26歳)やコルソン・モンゴメリー(24歳)は村上と競い合うようにホームランを打っています(3人とも29本)。ランダル・グリチュク(35歳)らベテランも復活してけっこう頑張っていますから、そりゃあチームは乗っていきますよ。打ち勝っている印象が強いですね。

――村上選手は26歳ですが、プロスペクトたちと年齢が近いことも、ともに乗っていく要因になったでしょうか?

武田 試合に出て活躍しているメンバーが、みんな同じくらいの年齢ですからね。今年から活躍している選手が多い上に、新加入の村上もホームランをよく打つので、怖いもの知らずな感じで戦えているんじゃないですか。

 シーズン最下位が続いたチームが、ドラフトでいい選手を獲って(メジャーのドラフトは下位チームが有利になるため)、その選手たちが23~25歳くらいで活躍し出してチームが強くなることは"メジャーあるある"です。ちょうどその時期が、村上の入団と重なりましたよね。

 逆に言えば、だからこそホワイトソックスは村上を獲ったんじゃないかと思いますし、村上もそこに魅力を感じたんじゃないかと。少し前に、ホワイトソックスにも在籍していた井口資仁(野球日本代表トップチームの監督)と話す機会があったのですが、彼も「プロスペクトが出てきて、それがいい方向へ向かっている」と言っていました。

【ピッチャー陣の現状と課題】

――ピッチャー陣はいかがでしょうか?

武田 チーム防御率(4.16)はあまりよくないです。打ち勝つ若いチームなので、勢いに乗っている時はいいのですが、負け出すと止まらなくなることもあるので注意しなければいけません。ケイとデービス・マーティンがチームトップの9勝を挙げていますが、エースと呼べるピッチャーがいません。そういうピッチャーがいれば連敗を止めてくれたりするんですけどね。

 とにかく連敗をしないことです。8月は5、6連敗といった大きな連敗はしていませんが、たとえば2カード連続でスイープされる、ということは絶対に避けなければいけません。それがなければ、おそらくこのままいけるんじゃないかなと。ただ、2位につけているのが毎年優勝争いをしているガーディアンズですからね。左手有鉤骨(ゆうこうこつ)を骨折して離脱していたホセ・ラミレスが復帰して打っていますし、要注意です。彼はいつもいい場面で打つ印象があるので。

――先発ピッチャーのやり繰りも重要になる時期になりますね。

武田 そうですが、これまでと大きくは変えないんじゃないですか。変に代えてしまうとあまりよくないと思います。今の形でここまで勝ってきているわけですし。ウィル・ベナブル監督がどう考えるかですね。

――継投についてはいかがですか?

武田 今のアメリカの野球は継投が大事ですからね。どのチームの監督にとっても一番難しい課題だと思いますが、それをどこまでできるかでしょう。昨年は出るピッチャーがみんな打たれて、打線も打てない試合が続いていましたが、今年は少し打たれても、打ち勝つことができます。

 とはいえ、今年も継投がうまく回っている印象はあまりないですし、ピッチャー陣が頑張っているようには見えません。エース格のピッチャーがいないなかで、みんなで力を合わせて......という感じです。結局、打線が打てなくなると厳しくなるでしょう。

【地区優勝が経験できれば非常に大きい】

――今の強さは本物なのか。それとも、勢いの部分が大きいでしょうか?

武田 強い、とはまだ言えないと思いますが、勝つことは自信になります。

来年以降も伸びしろがあるんじゃないですか。特に地区優勝が経験できれば、非常に大きいと思います。今までそれほど勝った経験がない、若い選手たちが多いですしね。

――2位とのゲーム差が少ないなかで、厳しい戦いが続きそうですね。

武田 ゲーム差はすぐに縮まりますからね。セーフティーリードは5、6ゲーム差くらいですし、3ゲーム差はあってないようなもの。繰り返しになりますが、とにかく大きな連敗をしないことです。

――ホワイトソックスのキーマンを挙げるとすれば?

武田 やっぱり村上でしょう。最近は調子が落ちていますが、2番を任されていますし、チームも期待していると思うんです。ホームランが1本出れば、それをきっかけにまた打ち始めるかもしれません。残り試合で7、8本くらい打てれば、チームは地区優勝に近づきます。1番を任されることが多いアントナッチは出塁率が高いですし、足もある。

村上が復調すれば相手にとって嫌な1、2番になります。

 プロスペクトが出てきて、ベテランが支え、村上のようなホームランを打てる選手も加わった。その形でここまできているわけですから、最後まで打線がどこまで打てるかにかかっていると思います。残り試合は単に今年の順位を決めるだけではなく、若手を中心に生まれ変わったチームが、新しい時代を築いていけるかどうかにも関わってきますね。

【プロフィール】

武田一浩(たけだ・かずひろ)

1965年6月22日、東京都生まれ。明大中野高を経て明治大に進み、六大学通算20勝8敗という成績で、1987年にドラフト1位で日本ハムに入団。1991年に18セーブを挙げて最優秀救援投手に輝く。その後、先発に転向して1993年には10勝をマーク。1995年オフにトレードでダイエーに移籍。1998年に13勝で最多勝のタイトルを獲得した。同オフにFA宣言をして中日に移籍し、1999年のリーグ優勝に貢献。2002年には巨人に移り、史上3人目となる全球団からの勝利を達成した。

同年限りで現役を引退。2006年の第1回WBCで投手コーチを務めた。そのほか、プロ野球、メジャーリーグ中継で解説を務めるなど幅広く活躍している。現役時代の通算成績は341試合、89勝99敗31セーブ、1008奪三振、防御率3.92。

浜田哲男●取材・文 text by Tetsuo Hamada

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