19歳・山田南、自転車競技歴わずか3年目でアジア大会へ「考え...の画像はこちら >>
 9月19日(土)に開幕する「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」に、競技を始めてわずか3年目の新星が挑む。それが自転車競技の山田南(千葉・130期)だ。
今年3月に日本競輪選手養成所を卒業した弱冠19歳の彼女は、この春にナショナルチームに参加し、国内外のレースで結果を残してきた。自身を取り巻く環境が目まぐるしく変化するなかで迎えるこのアジア大会で、彼女はどんな目標を立てているのか。直接話を聞いた。

【急激な変化を経験した半年間】

――2026年3月に日本競輪選手養成所を卒業後、ナショナルチームでの活動、ガールズケイリンでのデビューと慌ただしく状況が変化しています。この状況をどう感じていますか。

 考えられないくらい目まぐるしい日々を過ごしています。この環境の変化に最初は本当についていけなくて、メンタル的に結構きつい部分もありましたが、(ナショナルチームの)先輩たちも優しく教えてくださっているので、いい練習が積めているのかなと思っています。

――まずはナショナルチームでの活動ですが、この春にチームに参加して、当初はどんな思いがありましたか。

 養成所を卒業する前日くらいにナショナルチームに入ることを打診されて、「えっ?」みたいな感じでした。こんな私がナショナルチームの方々と同じ環境下で練習できるのは、おこがましいなと思ったりしていました。

――4月には香港でのワールドカップでチームスプリントに出場しました。どんな思いで走りましたか。

 香港の時は、ほとんど練習できていなかったので、チームのふたりについていけず、ひとりで3周した感じになってしまいました(※予選敗退)。

だから成果が得られたというよりは、ジェイソン(・ニブレット)コーチが私に経験を積ませてくれたと思っていますので、そこは本当に感謝の気持ちです。ただ、期待にちゃんと応えられなかったので、悔しさはありました。

――香港で感じた課題はどんなことですか。

 まずは筋力的な部分、そして技術的な部分。もう全体的に本当に足りていないなと感じました。

――5月にはジャパントラックカップ、6月には全日本選手権トラックと立て続けにレースがありました。6月の全日本トラックのケイリンとスプリントで4位になりましたが、手ごたえはありましたか。

 スプリントに出場するのが初めてだったので、佐藤水菜さん(神奈川・114期)に教えてもらいつつ、対戦しながら学ぶみたいな感じでした。4位という結果でしたが、ナショナルチームの方々が上位を占めていましたので、そこに食い込めるようにならなきゃいけないなと感じました。先輩方と比べると、自分はタイムがまだまだなので、ハロン(200m)で10秒台にはもっていきたいなと思っています。そこから技術や戦い方を学んで、上位に食い込んでいけるようになりたいです。

19歳・山田南、自転車競技歴わずか3年目でアジア大会へ「考えられないくらい目まぐるしい日々」
将来を嘱望される山田 photo by Hiroshi Gunki
――その間にガールズケイリンでも走っています。
切り替えはスムーズにいっていますか。

 そこは本当に難しいです。競技のケイリンとガールズケイリンを走って感じたのは、ギアも違っていて、まったく別物だということです。すごく苦戦しました。

――そんな状況でも、7月末のガールズケイリン(伊東競輪場での開催)で、3日間1着の完全優勝を果たしました。素晴らしい結果ですね。

(笑顔)

【記憶に残る出会い】

――そもそも高校までの9年間、陸上競技をやられていました。高校2年の時には、JOCジュニアオリンピックカップの三段跳びで4位になっています。その先、陸上を続けていこうという思いはありましたか。

 陸上は好きだったので、将来的にも続けていこうと少しは考えましたが、陸上をこのまま続けていても生計を立てていけるのか不安もありましたし、兄(山田駿斗/千葉・123期)が競輪選手だったので、憧れもあってガールズケイリンの道に進みました。

 それから当時、父に太田りゆ選手(埼玉・112期)のインスタを見せてもらったんですが、すごくかっこいい筋肉と美しい容姿に憧れを抱きました。高校3年の夏に、トラックサイクリングキャンプに参加したんですが、その時に(サプライズで)激励に訪れた太田りゆ選手にお会いできました。パリオリンピックの直後で、ジャパンのジャージを着ていて......。

太ももを触らせてもらったんですが、本当にすごいなと思いました。その時にポストカードももらいました。

19歳・山田南、自転車競技歴わずか3年目でアジア大会へ「考えられないくらい目まぐるしい日々」
太田りゆからポストカードを受け取り感激する山田。この記憶が忘れられないという photo by Torao Kishiku
――自転車に乗り始めたのはいつ頃からですか。

 高校3年の夏までは陸上をやっていたので、自転車には月に1~2回、競輪場に行って練習させていただきました。ただ最初は立ちこぎするのも本当に怖くて、兄に、「立ちこぎもできないと選手になれないぞ」と結構厳しい指導を受けていました。

――自転車を始めてからわずか3年目で世界の舞台で戦えるようになっています。この劇的なストーリーをどう感じていますか。

 自転車競技で戦えるようになりたいと思い描いていて、「ナショナルチームに入りたい」と周りには言っていましたが、兄からは「そんな簡単に入れないぞ」と言われていました。だから自分でも無理なのかなと......。でもまさか数年で入れるとは思っていませんでした。今では兄も「よかったじゃん」って言ってくれています。こうしてナショナルチームに入ることができて、今はすごく感慨深いんですが、まだ自分は弱いので、戦っていけるようにならなきゃいけないなと思っています。

――競技を変えて短期間でジャンプアップするのは努力の賜物でもあると思います。ご自身では自分をどのような性格だと思っていますか。

 私自身ではよくわかりませんが、周りからは「負けず嫌いだね」とよく言われます。レースでは、自分が挑戦者の立場であっても、「負けないぞ」という気持ちで挑むことはすごく大切だと思っています。気持ちで負けたらダメだと思っているので。

――座右の銘はありますか。

 中学時代の先生に教えてもらった言葉なんですが、「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」という言葉です。これはマラソン選手の高橋尚子さんがよく言っていた言葉で、私もこの気持ちで根をしっかりと伸ばしていって、花を咲かせたいです。

19歳・山田南、自転車競技歴わずか3年目でアジア大会へ「考えられないくらい目まぐるしい日々」
真摯に競技に打ち込む山田。先輩選手たちに積極的に質問をし、「理解したうえで、走るようにしている」という photo by Hiroshi Gunki

【アジア大会では笑顔を届けたい】

――そしていよいよアジア大会が迫っています。自転車競技は9月29日~10月2日の期間、静岡県の伊豆ベロドロームでの開催となります。(9月8日時点で)チームスプリントとケイリンに出場を予定されているということですが、今はどんな心境でしょうか。

 日本開催なのでワクワクする気持ちもありますが、やっぱり緊張もしています。まだチームスプリントで何走(何番手)になるかわかりませんが、チームとしてしっかり走りきりたいと思っています。ケイリンはまだ経験が浅いので、走っていくなかで学んだことを生かしながら、いい結果を残せたらと思っています。

 自国で開催される大会に出場できることはめったにないことだと思いますので、この経験を無駄にせず、走れることに感謝して、応援してくださるみなさんに笑顔を届けられたらと思っています。

――上位進出を狙っていると思いますが、どんな目標を立てていますか。

 チームスプリントでは予選を突破して決勝を走りたいと思っています。ケイリンに出場できれば、全力を出し切るレースをしたいですね。

――自転車競技における将来の目標を教えてください。

 まだ始めたばかりなので具体的なイメージはできていないんですが、(佐藤)水菜さんというケイリンの世界チャンピオンがチームにいるので、私も世界でメダルを獲れるような強い選手になりたいという思いもあります。ゆくゆくはロサンゼルスオリンピックにも絡んでいきたいです。


【Profile】
山田南(やまだ・みなみ)
2006年12月27日生まれ、東京都出身。小学3年から陸上競技を始め、高校2年時にJOCジュニアオリンピックカップの三段跳びで4位となる。

兄で競輪選手の山田駿斗の影響でガールズケイリンを目指し、高校卒業後に日本競輪選手養成所に入所。記録会でゴールデンキャップを獲得するなど好結果を残し、卒業記念レース2着、在所成績3位で卒業する。2026年5月にデビューし、7月の伊東競輪開催で完全優勝を果たす。3月よりナショナルチームにも加入し、4月のワールドカップ第2戦でチームスプリントの一員として出場。6月の全日本選手権トラックでケイリン、スプリントとも4位入賞を果たした。

text by Sportiva

編集部おすすめ