【大学駅伝】國學院大、出雲駅伝3連覇ならずも「大会新2位」の...の画像はこちら >>

大学駅伝シーズンの開幕戦となる出雲駅伝は10月12日、島根県出雲市内で開催され、早稲田大学が16年ぶり3度目の優勝を飾った。大会3連覇を狙った國學院大学は後半から追い上げ、大会新記録となる2時間06分54秒の好タイムで6区間45.1kmを駆け抜けたが、独走する名門の背中には届かなかった。

走った選手、戦略を立てた監督は、2位という結果をどのように受け止めたのか。6区を任された髙石樹と3区・辻原輝の声を中心に振り返る。

【「さすがに強かった」】

 今季の早稲田大が強いのはわかっていた。それでも、約1分差の完敗は想定外である。國學院大の前田康弘監督は開口一番、苦笑いを浮かべながら優勝チームを称えた。

「(早稲田大は)強かったですね。先頭を走られてしまうと、たぶん、どのチームもどうしようもなかったのかなと」

 区間配置のミスはなかった。本来は3区・辻原輝、4区・野中恒亨という4年生コンビのタスキリレーで勢いに乗り、アンカー勝負に持ち込む目論見だった。無論、計算どおりにすべて進むわけではない。誤差を考慮しても、勝負できるはずだったのだ。展開は決して悪くなかった。指揮官は、もどかしさを口にする。

「大会新を出したし、うちはほぼ完璧だったんです。

ただ、少し想定外もありました。そこで早稲田さんは4区、5区と区間新の区間賞ですからね。そうなると、なかなか厳しい」

 多少なりとも歯車が狂ったところでライバルに突き放された。エース区間の最終区を託されたキーマンの2年生・髙石樹がフィニッシュすると、すでにエンジ色の集団は歓喜の輪をつくっていた。髙石は優勝に沸く早稲田ファンや関係者の人だかりの脇をすり抜けながら、何度もつぶやいていた。

「くそー、悔しい。さすがに強かった。やっぱ、工藤(慎作)さん、強いわ」

 負けるつもりは、いっさいなかった。今夏は10000mの自己ベストを27分台に乗せ、夏合宿でも調子はすこぶるよかった。自信があったのだ。

 タスキを受けた時点で早稲田大との差は38秒。中継所のスタートラインでイメージしていたのは、逆転優勝だけ。

アンカーには思い入れもあった。選手寮の入り口には、額縁に入った新聞の一面記事が飾られている。OBの平林清澄(現ロジスティード)と上原琉翔(現富士通)が、それぞれ両手を広げて、出雲ドーム前のゴールへ飛び込んでいく優勝時の写真に自分の姿を何度重ねたことか。

「僕もいつか走る。平林さん、上原さんを超えていきたいって」

 2年目で初めて挑んだ出雲路の6区。お祭り感覚で駅伝の雰囲気を楽しみ、難コースも苦にしないタフガイが、予想以上に苦しんだ。無理を承知で突っ込んで、一気に順位を4位から2位に浮上させたが、後半にそのツケを払わされた。向かい風に手を焼き、思うようにペースが上がらなかったという。先頭の背中は遠いまま、区間3位でフィニッシュ。これではとても満足できない。箱根駅伝の5区でもライバルとなる「山の名探偵」の走りは大きな刺激となった。

「ここから全日本大学駅伝、箱根駅伝と続くので、リベンジします」

 鼻っ柱が強い國學院の"土佐っ子"には、『自分ルール』がある。

一度負けた相手に二度負けることは絶対に許されない――。負けられないリストにすでに名前があるのは、高知工高時代に全国高校駅伝の1区で争った早稲田大の鈴木琉胤(八千代松蔭出身)だ。「W」との個人的な因縁は、さらに深まったようだ。

【「少し欲が出てしまいました」】

 重要区間で自らの走りを悔いたのは、3区の辻原も同じ。前を追うためにハイペースで入ったのが、間違いのもとだった。わずか1kmほどで先頭集団に追いついたものの、そこからのレース運びに苦戦した。レース後は落ち着いた表情で淡々と敗因を分析していた。

「自分の状態がよかっただけに、少し欲が出てしまいました。悪いときの走り方になっていたなって。僕の強みはイーブンペースで押していくところなのに、突っ込んでしまった。過信して集団で勝負しようと思ったのが、いけなかったと思います」

 充実の夏合宿を過ごし、練習でもこれまでにないほどの手応えがあったという。前年度の4区に続き、連続区間賞を狙っていたことも包み隠さずに明かした。

3区の先頭集団で争った主な面子は下級生ばかり。実力者たちとはいえ、負けたくない思いも強かった。

「やっぱり4年生ですし、プライドもありました。周りに惑わされて、自分らしい走りができなかった。そこが、かなり悔しいです。『何してんだよ、俺』って、思います」

 高校時代からエリートランナーとして名を馳せてきた早稲田大の鈴木、中央大の三宅悠斗(洛南出身)、順天堂大の井上朋哉(洛南出身)はいずれも2年生。辻原は気持ちが入りすぎていたのかもしれない。前田監督に「世間の評価をひっくり返してこい」と背中を押され、闘志に火がついていた。SNSのネガティブな声に対し、見返したい思いも少なからずあった。

「言い訳に聞こえてしまいますが、本来はもっと走れるはずでした。もっといけると思っていました。自分を押し通すために、自分らしいことができなかった。

前田さんに大学トップクラスの選手たちに勝つところを見せたくて。僕は高校時代に弱かったので、そういう欲も出てしまった」

 いつもどおりに淡々とラップを刻んでいれば、もう少し順位を上げられたかもしれない。もっと粘れたかもしれない。考えれば考えるほど、中継所から勢いよく飛び出した1kmに行き着いてしまう。万全のコンディションで臨めなかった野中とともに反省は尽きない。

「正直、僕と野中のふたりは振るわなかったです。主力の4年生がもっとよい走りを見せないと、箱根駅伝の総合優勝は絶対にできない。逆に言えば、それでも2位を取れたのはチームの底力がついてきたということ。ふたりでもう話したんで。一緒に頑張っていきたいです」

 辻原は距離が伸びれば伸びるほど力を発揮するタイプ。1年時は箱根駅伝の4区で区間4位、2年時は7区で区間2位、3年時は再び4区で区間4位と実績を残してきた。最後の締めくくりは大きなインパクトを与えて、卒業することを誓っている。

「(11月1日の)全日本では自信を持って、自分らしい走りをします。箱根に向けて、そこを徹底していきます」

 雨降って地固まるか――。閉会式後、前田監督、野中キャプテンを中心とする円陣からは「負けたままで終わらない」という力強い声が聞こえてきた。

杉園昌之●取材・文 text by Masayuki Sugizono

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