学生三大駅伝の初戦、第38回出雲駅伝(10月12日)は、早稲田大が各区間で力を発揮して優勝を飾った。上位進出を狙った創価大は、3区のスティーブン・ムチーニ、6区の小池莉希というダブルエースがともに失速し、9位に終わった。

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【3区で崩れた勝負プラン】

 まさかの9位――。榎木和貴監督の表情には落胆の色がにじんでいた。

 前々回は4位、前回は3位。さらにその上を目指して臨んだ今回は、エントリー10名の5000m平均タイムが13分47秒59という充実したメンバーがそろった。

 高校時代に5000mで13分台を記録した村上遵世(1年)は、7月に10000mで28分59秒56をマーク。菅野元太(1年)も9月の日本インカレ5000mで日本人トップの2位に入った。さらに、同月のアディゼロ5Kでは、4年生のスティーブン・ムチーニ、小池莉希、織橋巧がそろって好走。チーム内では「出雲、勝つぞ」という機運が高まっていた。

「正直、早稲田大、中央大は違うレベルにいますが、過去最高のメンバーをそろえることができたので非常に楽しみです」

 戦前、榎木監督の表情には自信があふれていた。

 1区はルーキーの菅野が担い、区間8位、トップの駒澤大と16秒差で襷をつないだ。2区は織橋が調子のよさを見せて快走し、区間2位でトップの早大に3秒差まで迫った。2区までの展開は榎木監督の狙い通りだった。3区のムチーニで、一気に勝負を仕掛ける態勢が整った。

 だが、ムチーニはトラックで見せるスピードを発揮できなかった。スタート後まもなく顔をゆがめ、ペースが上がらない。日本大のシャドラック・キップケメイ(4年)の追い上げにも反応できず、区間6位。中継所ではトップの日大から30秒差、2位の早大から21秒差、4位の中大から18秒差となった。ここで早大や中大に差をつけるという戦略が、ガタガタと音を立てて崩れていった。

「1区の菅野、2区の織橋まではすごくいい流れでつないでくれました。そこから3区のムチーニに期待していたのですが......。今回は前回のような暑さはなかったですし、特に問題もなかったと思うんですが、"駅伝をしている感"がなかった。マイペースで走って、キップケメイ君に追いつかれた時も淡々と走っていた。そこで対抗心をむき出しにして戦うぐらいの気持ちが欲しかったですね。結果的に、この3区で押し上げきれず、先手を取れなかったことが、勝敗の分かれ目になったと思います」

 トラックで強いムチーニだが、駅伝では3年時から本来の実力を発揮できていない。昨年度は出雲3区、全日本大学駅伝3区、箱根駅伝2区でいずれも区間5位。

10000mで27分34秒32、ハーフマラソンで1時間00分38秒という持ちタイムを考えれば、区間賞争いを期待されて当然だろう。だが、その実力に見合うほどのインパクトは残せていない。

 今回も早大、中大をはじめ、この区間で負けてはいけないライバル校に軒並み差を広げられた。その結果、創価大は以降の区間で苦しい展開を強いられ、4区の村上、5区の山口翔輝(3年)も厳しいレースを余儀なくされた。

「村上は区間6番、山口も区間6番ですからね。特に、山口は昨年と同じ区間を走って、タイムは上がりましたが、順位を落としています。やっぱり区間3番ぐらい、あと10秒ぐらい縮めて走ってくれないと、上にはいけないですね」

 山口は8月末に北海道マラソンに出場しており、夏のフルマラソンの影響が懸念された。そこから出雲までは1カ月半しかなく、体の奥に残る疲労を完全に解消するのは難しいからだ。昨年の18分09秒から今回は17分49秒へとタイムを縮めたが、彼の力を考えれば、区間賞を獲得した山口竣平(早大・3年)の17分35秒に近いタイムで走ってもおかしくなかった。チーム順位も徐々に下がり、アンカーのエース小池には6位で襷が渡った。

【アンカー小池に起きた異変】

 その小池について、榎木監督は、いつものようにリミッターを外した快走を期待していた。2.4km地点では、トップ争いから遅れた4位の日大に21秒差まで迫り、チームを5位に押し上げた。榎木監督も「ここからできるだけ上に行ってほしい」と思っていた。

ところが、その後、失速。5位集団からも遅れ、順位を落としていった。

「責任を感じています。反省しています」

 レース後、小池は神妙な面持ちでそう語り、レース中の異変をこう振り返った。

「最初の入りは、めちゃくちゃ順調というか、このままいけば2位までは見えるなって思っていたんです。でも、出雲大社に来た時ぐらいに『あれ、なんか今日はおかしい』って思ってラップを見たら、(1kmあたり)3分かかっていたんです。『ちょっと待って、この動きで3分かかるのはマジでおかしい』と思っていたら、後ろから駒澤、順天堂、帝京のグループが来て、何の反応もできなかった」

 出雲に向けてはポイント練習を外さずにこなし、アディゼロ5Kでも好走。順調な仕上がりだった。ただ、寮の相部屋の仲間がインフルエンザに罹患し、自身も1週間ほど前に体に違和感を覚えた。

「それでも今回は自分が走らないといけない責任をめちゃくちゃ感じていたので、出たんですが、最初だけでした。後半は『何これ? 何が起きたんだ?』って感じで、気がついたらレースが終わっていました。今までの駅伝で一番ひどい出来です。

『4年生にもなって何をやってんだ』って。言葉が出てこないです。今日はもう"強気な小池"を出せません。準備不足も含めて反省しています」

 小池の走りについて、榎木監督はこう話した。

「小池は、体調不良があって、それが尾を引いたのかなと。それに加えてオーバーペースで入ったので、冷静に駅伝ができず、精彩を欠いてしまいました。ただ、それは小池だけの責任ではなく、3区から駅伝が後手後手になってしまったツケが最後に出たのかなと思います。やはり、いい流れをどこかの区間でしっかりつくらないといけなかったですね」

 小池は区間10位、チームは9位。上位進出を狙っていた創価大にとって、厳しい結果となった。それでも、小池は自身とチームの今後を悲観してはいない。

「自分が3つ順位を落とすなど、自分とスティーブン(・ムチーニ)があまりにも不甲斐ない走りをしてしまった。そこをしっかりと軌道修正していくことができれば、全日本では目標の順位までたどり着くと思います。

今回、菅野と織橋がいい流れをつくってくれましたし、全日本に向けて切り替えていきたいです」

 いつも強気で、明るく楽しそうに話す小池だが、さすがに責任を感じていたようだ。その口からは何度も「反省」という言葉が漏れ、最後まで笑顔が戻ることはなかった。だが、創価大が勝つために、小池の力は不可欠だ。

「全日本では『小池が戻ってきた』と言わせます!」

 その声に覚悟が感じられた。きっとド派手な走りをしてくれるだろう。

【全日本で期待したいダブルエースの復調】

 ムチーニと小池のダブルエースが失速する誤算もあり、創価大は出雲で思い描いた駅伝ができなかった。全日本までは3週間。どのように立て直し、調整していくのだろうか。榎木監督はこう語る。

「まずは出雲に出た主力のコンディションを整えていくことですね。(全8区間の)全日本は人数がふたり増えるので、チームの競争力を高めながら主力の走りの精度をもうちょっと高めていかないといけません。全日本は8位までにシード権が与えられるので、出雲と同じ9位だとシードを落としてしまいます。

そういう危機感を持ちながら臨んでいかないといけないと思っています」

 全日本では、出雲制覇の早大、さらに中大、國學院大、順天堂大、駒大、青山学院大ら強豪校に加え、地区選考会を突破してきたチームと競うことになる。

「早大には、最後までやりきる強さがありました。また、國學院大は2位に順位を上げてさすがだなと思いました。次は中大や青学大も上がってくるでしょう。9位が自分たちの現実ですが、『次は』という気持ちもあるので、もう一度戦えるチームにして全日本に臨みたいです」

 創価大は今、強豪校の一角に加われるかどうかの瀬戸際にいる。早大は全員が勝利に貪欲で、100%の力を発揮して優勝した。その域に達しなければ、頂点は見えてこない。ダブルエースの復調に加え、8区間を切れ目なくつなぐ総合力を示せるか。

 11月1日の全日本は、箱根に向けて創価大の真価が問われる一戦となる。

(了)

佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

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