この記事をまとめると
■著名なドライバーの名を冠したクルマがたまに限定車などで登場する■名前を冠しているだけのモデルもあれば実際にセッティングを監修している場合もある
■日本のスポーツカーにも有名レーシングドライバーの名前を冠したモデルが存在した
レーシングドライバーの名が付いたクルマは稀少
メルセデス・ベンツ、フェラーリ、ポルシェ、ロールスロイス、フォード、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ……と、創業者の名前を冠した自動車メーカーは珍しくないが、レーシングドライバーの名前から命名されたクルマは意外に少ない。
そのうちのいくつかをここで紹介しておこう。
フェラーリ456M GTシューマッハ エディション
スクーデリア フェラーリで2000年から2004年まで5年連続ワールドチャンピオンに輝いた、皇帝ミハエル・シューマッハ。まさにフェラーリの黄金時代を築きあげたシューマッハ。
それが2004年に発売されたフェラーリ 456M GTビコローレ スカリエッティ(シューマッハ エディションはニックネーム)。
※写真はノーマルのフェラーリ456
ベースはフェラーリ456Mで、エンジンはNA5.5リッターのV12気筒(442馬力/550Nm)。基本的にスペシャルな部分は内外装で、ボディは「グリジオ ヌヴォラーリ」と「カンナ ディ フュージレ」(より濃いグレー)のツートン。インテリアはライトグレーで、運転席と助手席のヘッドレストにはエンボス加工の「MS」のロゴが入っている。

2+2モデルでベースの456Mを含め、人気車とはいえなかったが、フェラーリ最後のリトラクタブルヘッドライトの量産車でもある。新車時の国内価格は、2824.5万円だった。
GMA T.50sニキ・ラウダ
F1ではブラバムとマクラーレンで5台のチャンピオンマシンを設計し、ロードカーではマクラーレンF1も手がけた希代のレーシングカーデザイナー、ゴードン・マレーが立ち上げたブランド、「ゴードン・マレー・オートモーティブ」の市販スーパーカー第1号がT.50。そのT.50のサーキット仕様車が「T.50sニキ・ラウダ」。

3度のワールドチャンピオンになったニキ・ラウダは、ブラバム時代にマレーのデザインしたBT46をドライブ。ファンカーと言われたBT46Bで優勝している。そのラウダにちなんだT.50sニキ・ラウダは、BT46Bのアイコンだったグラウンドエフェクト・ファンを継承。シャシーとボディパネルはすべてカーボンファイバー製で、マクラーレンF1と同じく3シーター。
マクラーレン・セナ
マクラーレン・セナは、マクラーレンオートモーティブが2018年に送り出した、「アルティメット シリーズ」の1台。サーキット走行を重視したマクラーレン初のロードカーで、カーボンファイバー製のモノコックを採用。エンジンは4リッター V型8気筒DOHC ツインターボで800馬力。パワーウエイトレシオはなんと1.49kg/ps! 最高速度は340km/h、0→100km/h加速は2.8秒、0→200km/h加速は6.8秒が公称値。

本格的な空力マシンでもあり、ダウンフォースはレースモード使用時、250km/hで最大800kgに達するほど。車名の「セナ」は、1988年、1990年、1991年にマクラーレンホンダでワールドチャンピオンになったアイルトン・セナに由来する。世界限定500台。
アルピーヌ A110R フェルナンド・アロンソ
今年2023年のF1で、フェラーリ、メルセデスを差し置いて、アストンマーチンで開幕戦から2戦連続して表彰台に乗り、台風の目になっている現役最年長(41歳)のフェルナンド・アロンソ。キャリア20年を超え、2回のワールドチャンピオンに輝いているF1界のレジェンドだ。
そんな彼が2021年と2022年にドライブしたアルピーヌから、去年全世界32台の限定モデルとして発表されたのが「A110 R フェルナンド・アロンソ」。

世界のミッドシップスポーツのなかでもハンドリングの完成度の高さで高く評価されているA110のR(ラディカル・過激な)バージョンを、アロンソ自身が母国スペインのバルセロナサーキットを走り込んでセットアップ。専用のエンブレムやヘッドレストにサインロゴが入ったバケットシートなどが装着されている。
国産車にもレーサーをオマージュしたモデルが存在
三菱ランサーエボリューションⅥ トミ・マキネン・エディション
国産車では、ランエボ6.5とも呼ばれるランサーエボリューションのTME(トミ・マキネン・エディション)が知られている。トミ・マキネンはWRC初の4連覇(1996~1999年)を成し遂げた名ラリードライバー。その名を冠したTMEはエボⅥをベースに、ターマックに特化した特別仕様に仕立ててきた。

その特徴が1番現れているのが空力面。ランエボシリーズの特徴だったフォグランプを廃止して、ダウンフォースとクーリング性能を重視したフロントバンパーを採用。足まわりも、エボⅥに対しフロントサスのロールセンターを引き上げ、車高を10mm落とすことでターマックを意識。

イメージカラーはパッションレッドで、ホイールもWRCワークスマシンと同デザインの真っ白なエンケイ製だった。ラリーカーでは、このTMEのほか、トヨタ・セリカGT-Four RC(ST185)の輸出仕様のカルロス・サインツ リミテッド エディションやスバル・インプレッサWRX(GC8)のシリーズ マクレー(英国限定特別仕様車)といったモデルもあった。
三菱 NAKAYA TUNE FTO
最後は三菱FTO。2リッターV6エンジンを積んだFFスポーツクーペで、1998年と1999年には、実質ワークス体制で全日本GT選手権にも出場していた(最上位は2位)。そのGT選手権でFTOをドライブしていた中谷明彦がセットアップした、「NAKAYA TUNE FTO」というモデルがあったのをご存じだろうか?

※写真は通常のFTO
オーリンズのダンパーにローダウンスプリング、デュアルスポーツマフラーに、専用ブレーキパッド(フロントのみ)、カーボンリップスポイラーに、「NAKAYA TUNE」ロゴ入りステッカーというのが主な内容。
総額45万円分のオプションが、15万円プラスで購入できるお得な仕様だった。
「その見事なコーナリング姿勢から、僕のセットアップ思想を感じ取って欲しい(by中谷明彦)」。