この記事をまとめると
■フォーミュラ・ドリフト・ジャパン第6戦にWRC王者のカッレ・ロバンペラが参戦した■ロバンペラ選手は順調に予選を勝ち進むも決勝で痛恨のスピンを喫し準優勝となった
■ロバンペラ選手はラリー競技で磨いた技術で芸術的なドリフトを披露してくれた
WRC王者がフォーミュラ・ドリフト・ジャパンに再降臨
フォーミュラ・ドリフト・ジャパン第6戦が10月6日~8日、岡山国際サーキットを舞台に開催。その一戦でもっとも注目を集めた存在が、カッレ・ロバンペラだと言えるだろう。
ご存じのとおり、ロバンペラは2022年のWRCチャンピオンで、2023年もトヨタGAZOOレーシングWRTのワークスドライバーとして、GRヤリスRally1ハイブリッドを武器に計3勝をマーク(第11戦終了時点)。
2023年のドリフト・マスターズ・ヨーロッパ選手権にGRスープラで参戦するほか、フォーミュラ・ドリフト・ジャパンにも参戦しており、第2戦のエビス大会ではGRカローラを武器に初出場で初優勝を獲得。さらにロバンペラは同シリーズの最終戦の岡山大会にもGRカローラで参戦しており、10月6日の練習走行から圧巻の走りを披露していた。

その勢いは7日の予選でも衰えることはなく、ロバンペラは迫力あるドリフトを披露。95点を獲得し、2位で8日の決勝へ駒を進めている。
さらに、8日の決勝は曇天となるなか、TOP32でロバンペラは日産シルビアを駆る水谷大地と一騎討ちを展開。この対決を制したロバンペラはTOP16で日産フェアレディZを駆る末永直登とのバトルを制し、貫禄の走りでTOP8へ進出していた。

このように順調な戦いぶりを見せていたロバンペラだったが、雨に祟られ、ウエットコンディションとなったTOP8で苦戦を強いられていた。レクサスIS500のケン・グシとの一騎打ちとなるなか、チェイス(後追い)で走行したロバンペラが痛恨のスピン。とはいえ、ポジションを入れ替えた第2ヒートでは追走のケン・グシもスピンを喫したことで、ワンモアによる仕切り直しとなったのである。

ライバルのミスに救われたロバンペラは再対決でケン・グシを下してTOP4へ進出。
優勝は逃すも並じゃない技術力の高さを披露したロバンペラ
さらにTOP4ではウエットコンディションを攻略しており、BMW M3を駆る山下広一との一騎討ちを制してファイナルへ進出した。

ファイナルの対戦相手はトヨタ・チェイサーを駆るKANTA。最初の走行はKANTAがリード(先行)、ロバンペラがチェイス(後追い)で行われたのだが、ここでロバンペラが痛恨のスピン。一方、ポジションを入れ替えた2回目の走行では、アグレッシブな走りを披露するリードのロバンペラにチェイスのKANTAが完璧な追走を披露。そのパフォーマンスはロバンペラに「ウエットコンディションでミスをしたことは残念だった。それにKANTA選手のドライビングが素晴らしかった」と言わしめる状態で、KANTAが岡山大会を制し、2023年のチャンピオンに輝いた。

このようにロバンペラにとって2度目のフォーミュラ・ドリフト・ジャパンとなった第6戦の岡山大会は悔しいリザルトとなったが、それでも数多くのファンがWRCチャンピオンの走りに魅了されたに違いない。ターマックのほか、グラベル、スノー&アイスと、どんな路面でもベストタイムを叩き出してきただけに、ドリフト競技でもそのコントロールは世界レベルで関係者も絶賛していた。

まず、フォーミュラ・ドリフト・ジャパンのほか、D1グランプリでも活躍するドリフトのスペシャリスト、日比野哲也は「あまり乗っていないマシンで、そんなに練習もできない環境のなか、あれだけ精度の高いドライビングを見せていますからね。しかも、本人にしてみれば、まだ余力を残している状況だと思いますから、絶対に破綻することはない。普通のドライバーはすぐに限界まで攻めて失敗するんですけど、そこはプロフェッショナルなドライバーだな……と感じますね」とのこと。

さらにロバンペラがドライビングしたGRカローラの開発およびメンテナンスを担うキャロッセのチーフメカニック、渡部貴志も「圧倒的にコントロールのレベルが高いですね」としたうえで、「フォーミュラ・ドリフト・ジャパンに参戦して4年目になるんですけど、ロバンペラ選手はほかのドリフトドライバーと乗り方が違うのか、セッティングの方向性も違いますね。ほかのドライバーはステアリングの切れ角を欲しがるんですけど、ロバンペラ選手は、そこは重視していない。

ラリードライバーのなかでも、フィランド出身のドライバーはアクセル全開率が高い印象があるが、ロバンペラはドリフト競技でもそれ実践しているようで、ラリー競技で磨かれた独自のアプローチでドリフト競技を攻略し、芸術的なドライビングを披露しているのである。