この記事をまとめると
■かつてはモータースポーツでの鍛錬によりクルマは高性能化を果たした■現在のモータースポーツで求められる技術と市販量産車で求められる技術は一致しない
■モータースポーツへの参戦は技術の見極めや人材の育成にはいまなお有効だ
自動車メーカーはモータースポーツの場で技術力を競い磨いた
未知の技術開発への挑戦は、失敗を覚悟のうえでの試行錯誤となる。その鍛錬の場として、モータースポーツ参戦の意義がある。
かつて、50年ほど前は、技術の最先端を競うモータースポーツがクルマを高性能化へ邁進させた。
しかし今日では、必ずしもモータースポーツで求められる技術と、市販量産車で求められる技術とが一致しない場合がある。あるいは同じ方向へ最終的に向うとしても、挑戦すべき時期がずれることがある。
たとえば、ハイブリッドの応用は、市販量産車のほうが早かった。のちに、F1でモーター/発電機によるエネルギー回収が行われ、ル・マン24時間のようなスポーツプロトタイプカーによる耐久レースでHVの参戦がはじまった。
あるいは、フォーミュラEは、電気自動車(EV)が発売されたあとになって競技として生まれた。つまり、モータースポーツが必ずしも最先端ではないということが起きているのである。
いまなおモータースポーツは企業の強靭化に有効だ
それでも、自動車メーカーがモータースポーツへ参戦する意味は、成功か失敗かわからなくても、まずは限界まで技術を追い込み、見極めるのにもっとも成果をあげやすいからだ。
事前にコンピュータシミュレーションで可能性は探れても、実際に物が出来上がって使ってみると、不具合が見つかることがある。市販量産車ではあまり大きな差として見えにくいときもあり、あとになってリコールにつながる懸念があるかもしれない。しかし、モータースポーツであれば、その週末の競技で相手との勝敗が明確に定まる。順位はもとより、到達時間の遅れによって技術の未熟さが明らかになる。
また、プロフェッショナルなドライバーたちから評価を聞くことができる。それによって解決すべき課題が明確になってくる。もちろん、センサーを使ったコンピュータによる解析も行われるが、人間の感性は今日においてもセンサーやコンピュータを上まわっており、人間の意見はなお偉大なのだ。
技術そのものは、モータースポーツ界と量産市販車とで活躍すべき時期が異なっても、究極の限界を追い求めるうえで、モータースポーツでの検証が役立つ。
もうひとつは、技術者の成長を短期間に期待できることだ。最善と考え改良した技術が、その週末に勝ち負けとなって明らかにされる。翌週あるいは翌月には再び次の競技が行われるので、短期間に対策を講じなければならない。負けを悔しがっている時間はないのだ。短期間に原因を究明し、改良し、競技場へマシンを送り出さなければならない。短期集中による思考や作業が、人を成長させる。
市販車の開発は少なくとも3~4年がかかり、それでも量産・市販へ道筋をつけるうえで余裕があるわけではないが、試行錯誤の余裕はある。そこにモータースポーツで鍛えられた人材が加われば、効率や中身の濃さはもっと高まるだろう。
モータースポーツの実戦は、現物の目新しさや機能だけでなく、一見、目に見えにくいような企業の強靭化につながる人材育成にも役立つのである。

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