この記事をまとめると
■軽自動車にはいわゆる「ストロングハイブリッド」と呼ばれるシステムはない



■一方で軽のEVは過去に発売していてこの先も登場が予定されている



■筆者は軽自動車には本格的なハイブリッドが必要なくEV化していくべきだと考えている



ハイブリッドは価格もシステムもエンジン車に上乗せ

2022年に、日産自動車と三菱自動車工業から、軽自動車の電気自動車(EV)が発売される。



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軽EVは、なにもこれが初めてではなく、そもそも2009年に三菱自が世界で初めて量産市販したEVは、軽のi‐MiEVだった。しかし、今日なおEVの課題の一つとされるリチウムイオンバッテリーの原価が高いため、ガソリンエンジン車i(アイ)の改造車両として量産されたi‐MiEVでさえ、当初の販売価格は460万円近く、補助金を活用しても約320万円となり、ガソリンエンジン車の高価格帯と比べても2.5倍近い金額にのぼった。



日本はHV大国なのにナゼ? 軽自動車に「本格ハイブリッド車」が存在しない理由



一方、スズキが先鞭をつけたマイルドハイブリッドであれば、車載バッテリー量は少なくて済む。そのうえで、エンジンが燃費でもっとも苦手とする発進や追い越し加速などでモーター駆動の補助が得られ、燃費改善が叶う。



日本はHV大国なのにナゼ? 軽自動車に「本格ハイブリッド車」が存在しない理由



しかし本格的ハイブリッド車(HV)となると、バッテリー車載量をより増やさなければならず、ガソリンエンジン車との価格差が広がる懸念がある。それでいて、ガソリン車と同様に、エンジン、変速機、燃料タンク、排気触媒などを必要とし、装備面でもガソリン車で当たり前と考えられる内容を標準で設けなければならない。つまり、原価が単純に上乗せとなり、価格競争力がさがるだけでなく、今後EVに的を絞った専用開発されてくる軽EVとの商品性で見劣りする可能性も考えられる。



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軽自動車は一気にEVへ進むほうが道が拓ける!

EVは、リチウムイオンバッテリーの原価は高い一方で、専用開発することにより、たとえば空調をエンジン車のまま利用するのではなく、暖房ではシートヒーターやハンドルヒーターを標準化することで、空調機器の性能を補うことができる可能性がある。たとえばトヨタのbZ4Xは、足もとの暖房に輻射熱を利用するようだ。



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冷房でも、室内の天井にサーキュレーターを装備することにより、室内の空気を積極的に循環させることによって空調機器を最大に稼働させなくても適切な快適温度が得られるかもしれない。アジアで販売される廉価な専用車では、原価の掛る空調を装備できなくても、サーキュレーターを活用する例がある。



また、スマートフォンとの連携で、充電中にあらかじめ冷暖房を作動させ、初期の急速冷暖房性能が必要なくなる可能性もある。これにより、車載バッテリーの電力消費を抑えられる。



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単に一つの部品の機能向上や効率化だけでなく、総合的なエネルギー管理を導入することにより、エンジン車では当たり前と考えられてきた部品の性能や原価が覆されるかもしれない。

そこに、部品メーカーの新たな事業も生まれる可能性がある。



しかし、エンジンも使うHVでは、そこまで大胆な発想の転換は難しい。そして原価低減も、エンジン車で取り組んできた枠組みから抜け出すことが難しい。つまりHVとは、あくまでエンジン車の延長でしかない。1997年にHVを世界で最初に市販したトヨタも、25年近くを経てなおすべての新車をHVとすることに躊躇がある。



日本はHV大国なのにナゼ? 軽自動車に「本格ハイブリッド車」が存在しない理由



軽自動車こそ、一気にEVへ進む方が道は拓けるのではないか。そこが、いま100年に一度の大変革といわれるゆえんでもある。

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