東証改革がM&Aを後押ししている。東証改革によって、企業は第一義的に成長に向けた投資を求められることとなった。
4年目を迎えた東証の「資本コストや株価を意識した経営」
まずは「資本コストや株価を意識した経営」に対して東証が23年3月に要請した内容についてまとめておこう。
東証は、単に損益計算書(P/L)上の売上や利益水準を意識するだけでなく、貸借対照表(B/S)を意識した経営の実践を求めている。具体的には、資本コストや資本収益性を十分に意識して、持続的成長につながる投資や事業ポートフォリオの見直し等の取り組みを推進することで、経営資源の適切な配分を実現することを期待する、と述べている。
また、現状分析、計画策定・開示、取り組みの実行という一連の対応の中で、資本コスト(WACC〔加重平均資本コスト〕、株主資本コスト)、資本収益性(ROIC〔投下資本利益率〕、ROE〔自己資本利益率〕)、市場評価(株価・株式時価総額、PBR〔株価純資産倍率〕、PER〔株価収益率〕)を踏まえてそれらを改善するための方針、目標を策定し、実際に取り組むことを求めている。ここで留意すべきなのは、自社株買いや増配のみといった対応や一過性の対応ではなく、継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な取り組みが期待されていることである。
「資本コストや株価を意識した経営」とは、形式的な対応にとどまるものではなく、企業戦略の根幹に関わる取り組みが求められる内容だといえる。
4月7日の市場区分フォローアップ会議で示された現状評価
フォローアップ会議でまず示されたのは、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応状況に関する開示の進展だ。26年2月末現在、東証プライム企業の92%、スタンダード企業の50%がコーポレート・ガバナンス報告書において対応状況の開示を行っている(「検討中」を除く)。23年12月末段階ではそれぞれ40%、12%であったから、開示はかなり進展したといえる。
また、PBRやROEも改善している。22年7月段階でプライム企業の50%、スタンダード企業の64%がPBR1倍割れとなっていたが、26年3月にはそれぞれ27%、49%にまで減少した。
一方で、海外企業に比べるとPBRやROEは依然として低水準であり、成長期待の高い企業群が少ないことも指摘されている。
日本企業が抱える課題
では、現時点において日本企業が抱える本質的な課題はなにか。フォローアップ会議では、株主還元などの着手しやすい取り組みが進展する一方で、投資家からの期待が高い「事業ポートフォリオ・経営資源配分の見直し」や「自社の最適B/Sの検討」といった取り組み状況は低水準にとどまっていることが指摘されている。
このことは、日本企業の多くにおいて取り組みが表層的な対応にとどまっており、事業の根幹に関わる本質的な改革には至っていないことを示している。
また、安全性に対する企業と投資家の認識ギャップについても見逃せない。自己資本や手元資金について、多くの企業は自社の水準が適正だと考えているのに対し、投資家の大半は「余裕のある水準」だと捉えているのだ。この結果からは、企業は自社の安全性をより重視しているのに対し、投資家は手元資金を成長投資へ積極的に振り向けるなど、よりアグレッシブな経営戦略を求めているという、それぞれの姿勢の違いが垣間見える。
未開示企業の状況が示唆すること
また、フォローアップ会議では対応について未開示の企業の状況についても言及された。
プライム上場で未開示の企業においては、PBR1倍以上かつROE8%以上の割合が59%と開示済企業における割合(50%)より高く、事業環境や財務状況等を踏まえて「あえて」開示していない企業が比較的多いと指摘している。
一方、スタンダード企業では、リソース・ノウハウの不足や経営者の理解が不十分であることから、開示に踏み出せていない企業が多いのではないかとされている。
こうした状況からは、開示していない(できていない)企業に対しては、その理由に応じたアプローチが必要であることが示唆されている。
今後の対応ポイント
最後に、今後対応が求められるポイントについて指摘しておきたい。
株主還元に代表されるような着手しやすい取り組みにとどまっている企業に対しては、成長投資や事業ポートフォリオの見直し、最適B/Sの検討といった、企業戦略の根幹に関わる本質的な取り組みが求められる。
また、フォローアップ会議の資料では、資本配分(キャピタル・アロケーション)の検討にあたって、まず稼ぐ力を高めるための「成長投資」を検討し、その上で「手元資金の適正水準」を踏まえて余裕があれば「株主還元」に振り向けるべきだという方針が示されている。これは、資本配分を考える際の優先順位は「成長投資>適正資金確保>株主還元」であるとの明確なメッセージだ。東証は、成長投資が持つリスクを回避しがちな企業に対して、これまで以上に積極的な姿勢を求めているといえる。
加えて、最適B/S構築に向けた取り組みも重要だ。企業価値を生み出す上で「持つべき資産を持っているか」「余剰な現預金や政策保有株式などの不要な資産を持っていないか」「運転資本は効率的か」といった視点でのチェックが求められる。また、B/Sには表れない人的資本や知的財産といった無形資産への必要な投資も欠かせない。
そして、こうした点について取締役会では実効的な議論や監督を行わなければならない。そのためには、経営の執行を担う取締役だけではなく、社外取締役の積極的な関与や、事務局の機能強化が必要となる。
今回のフォローアップ会議におけるメッセージをまとめると、「開示や株主還元は進んだ。次に求められるのは稼ぐ力を高める経営だ」ということになる。これらの取り組みに真摯に向き合った企業とそうでない企業との間で、業績や市場評価の二極化が進行する可能性もある。
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