「日本全国いじめはずっとなくならない」教育長の発言にいじめ被害少女は絶望…事件から5年「勝手に涙が出てきたりしてしまうことはまだ多いです」≪白岡市・いじめ重大事態≫
「日本全国いじめはずっとなくならない」教育長の発言にいじめ被害少女は絶望…事件から5年「勝手に涙が出てきたりしてしまうことはまだ多いです」≪白岡市・いじめ重大事態≫

小学6年生の時に、机を土足で踏まれる、筆箱を蹴られる、『死ね』といった暴言を受けるなどのいじめを受けたA子さん。すぐにいじめ重大事態と認定されたA子さんの事案だったが、その後に待ち受けていたのは、学校や市の不適切な対応、そして教育長の信じがたい発言だった。

加害者は通常登校、被害者は別室へ…逆転した学校対応

「いじめ発覚後にお話した時、市の教育長は『被害者である本人を一番に考えますよ』とおっしゃってくれていました。

しかしその後の学校や教育委員会の対応は思っていたものとは、全く違うものだったのです」(母親)

A子さんの母は当時の学校と教育委員会の対応をそう振り返る。

いじめ発覚後、学校側は加害者側、被害者側の保護者の話し合いの場を設定。そこで謝罪が行なわれた。その後、加害児童とA子さんの面会の場も、オンライン上で設定された。

しかしそれは加害児童側からのA子さんへの謝罪ではなく、当人同士が互いに謝罪しあうことを目的にした面会だったという。

「その時は、私もすごい病んでいたので、『私も悪かったのかな』って思っちゃって。先生たちにすごい説得されて、半ば無理やり謝罪させられた形でした。

いじめてきた子たちも一応は謝罪してくれましたが、『悪いとは思っていない』という態度で、形だけに感じました」

その後、学校側はA子さんと加害児童が顔を合わせないように、それぞれを別室登校にすることで対応。

「学校に行けなくてもいい」という覚悟を持っていじめを告白したA子さんも、学校から「来てほしい、もう大丈夫だよ」と説得されたことで、勇気を出して登校することにした。

しかし……。

「ある日、学校に行くと加害児童が別室登校の場所ではないところにいて、鉢合わせてしまったんです。『会うことはない』と聞いていたからパニックになってしまいました」

A子さんの母親が語る。

「加害児童の保護者の方が、学校側に別室登校についてクレームを入れたようです。結局、加害児童は普通登校を再開し、娘だけが別室に追いやられました。

卒業式でも加害児童が壇上で証書を受け取る一方で、娘は父兄席で泣きながら参加し、後から一人、別室で証書を受け取りました」

卒業後の進路についてA子さんは当初、同級生たちの多くが通う予定の中学校への進学を望んでいた。

しかし、いじめ発覚後の加害児童の態度や、加害児童が周囲に広めた『いじめられる側に原因があった』といった悪評に苦しめられ、同じ市内の別の中学校へ進学先を変更することを余儀なくされたという。

「頑張って馴染もうとしたんですが、夏休み明け頃から『金銭問題を起こしたから別の中学に行ったんだ』みたいな、事実とは違う噂が流れるようになって。

小学校の友達から聞いた話によると、加害者側は中学になってからも私の悪口や、嘘の噂を流して、『あれはあっちが悪かった』と言いふらしていたそうです」

「期待は見事に裏切られました」

いわれのない風評被害で居心地が悪くなったA子さんは23年6月、中学2年生で県外の中学に転校。

ちょうど同じ頃、一連の事案についての第三者委員会による調査報告書が提出され、いじめの事実が認定。

「学校は加害者側保護者とも十分にコミュニケーションをとりながらなすべき指導・監督を行うよう指示する必要がある」と指摘された。

「教育長は報告書の完成とともに、『加害児童への指導についての方針』を提出すると約束してくれていました。

加害児童に適切な指導が入れば、いじめ発覚後から続く悪口やウソの噂も止まり、娘がずっと望んでいた、もともと通う予定だった中学への転校ももしかしたら叶うのではないか。

そう信じていたのですが、期待は見事に裏切られました」(母親)

教育委員会は「加害児童への指導についての方針」を出すことはなく、加害児童が通う学校での指導も行わなかった。

そして、その理由について「(A子さん)本人に直接話を聞き、要望を明らかにしないと指導できない」と主張し続けたという。

「娘はいじめ発覚後に適応障害と診断されています。

中学に入ってからも毎晩のように悪夢にうなされ、時に自傷行為に走るなど精神的に不安定な状態で、面会は難しいとずっと伝えていました。

しかし、中学の卒業間近になって娘は『教育長がそう言うなら、自分で話したい』と。これが自分の意見を言う、最後の機会と思ったのでしょう」(母親)

こうして24年3月29日、A子さんの通う中学校で、教育長との面会が行なわれた。

A子さんは今も加害児童からの悪口が続いており指導してほしいと願っていること、進学予定だった中学校へ戻りたいと願っていたことを切々と語った。

「私だけ時間が止まっているような、そんな気持ちです」

しかし、教育長はそんなA子さんの訴えに対し、「日本全国いじめはずっとなくならない」と発言。この言葉にショックを受けたA子さんは号泣し、過呼吸に陥った。

当時の心境を、A子さんが振り返る。

「悪口を言われて辛いと話しても、『(加害者の)会話はコントロールできない』とか、『向こうがあなたを悪いと思っているとしたら、どうしたらいい?』と言われてしまって、加害児童に指導しようという気持ちは全くないように思えました。

そのうえ、『いじめはなくならない』と言われてしまって……気づいたら大泣きしていました」

母親もこう語る。

「確かに、いじめをなくすことは難しいでしょう。しかしそれがいかに正論でも、いじめに苦しみ、助けを求める子どもに言うべき言葉ではないはずです」

教育長の一連の対応を不適切と感じたA子さんの保護者は、24年7月に行われた「市長と語る会」の場で、藤井栄一郎市長にこれについて直訴。

だが、教育長の不適切な発言が録音に残っていることを伝えると、市長は「それはダメだよ! 教育長の人権はどうなるの?」と怒鳴り声を上げ公開を阻止したという。

こうした対応を受け、保護者は、24年9月、市に対し再調査と謝罪を求めた調停申し立てを行なったが、いずれも拒否され、不成立に終わっている。

今年2月、A子さんの保護者はA子さんと教育長の面会時の音声をSNS上で公開。瞬く間に拡散し、波紋を呼んでいる。

音声を公開した理由を、保護者はこう語る。

「いじめ認定後の対応が不適切だったために、いじめられた被害者が報われない。こうした実態を訴えることで、少しでも社会を変えていけたらと願っています。それが本人の笑顔を取り戻すことにもつながるのかなと思ってます」

白岡市の教育委員会指導課に、報告書提出後の一連の教育長の対応について尋ねたところ、「市としては当該報告書の内容に基づき、必要な対応を行っております。なお、個別の児童・生徒に関する具体的な指導・支援の内容については 、 児童および関係者のプライバシー保護の観点から、回答を差し控えさせていただきます」と回答。

A子さんとの面会については、「2024年3月29日、被害生徒の保護者及び当該中学校長同席のもと、面会を行いました」と認めたが、そこでの教育長の発言とSNS上に公開された音声については、「インターネット上で流布している音声データや動画等につきましては、その作成経緯や編集の有無等が不明であるため、当市として個別にコメントすることは差し控えさせていただきます」とした。

また、A子さんと保護者が再調査を求めていることについて見解を求めると、「いじめ防止対策推進法に基づく地方公共団体の長による調査(いわゆる再調査)を行うかについては、これまで市長部局として、関係各所へのヒアリング等を行い判断しております」との回答だった。

A子さんは現在高校2年生。事件から約4年が経ち、少しずつ前を向いているが、傷が癒えたわけではない。

今も適応障害の治療のため、2か月に1回、病院に通っている。

「夜とかにいじめのことを思い出して辛くなったり、勝手に涙が出てきたりしてしまうことはまだ多いです。

もし、いじめがなかったら、今も小学校の友達と遊んでいるのかなとか、考えてしまうこともあります。みんなと離れ離れになってしまって、私だけ時間が止まっているような、そんな気持ちです」

保護者は引き続き、市に対し、再調査と謝罪を求めていくつもりだという。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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